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札幌時計台ギャラリーの閉鎖と絵画の凋落

2016年12月08日 00時59分00秒 | つれづれ日録
 すでにお伝えしたとおり、道内の美術シーンを牽引してきた札幌時計台ギャラリーが半世紀の歴史に幕を閉じる。
(参考:■札幌時計台、たぴお、大同の各ギャラリーがない札幌アートシーンとはどんな世界なんだろう。 2016年2月24日アップ)

 今週(12月5~10日)は佐藤武さんの個展と北海道版画協会展が開かれている。
 来週が大谷高・中の展覧会で、最終週が子どもの絵画教室展なので、こう言ってはなんだが、ラストスパートに入ったと言ってさしつかえないだろう。
(この段落の誤変換、直しました)

 時計台ギャラリーが閉まることについては、上記の記事、とくに3章と4章で述べておいたので、できれば読んでください。

 北海道新聞2016年12月7日夕刊で、時計台ギャラリーのオーナー荒巻義雄さん(SF作家)と、42回もの個展を開いてきた画家の伏木田光夫さんが対談している。
 そこで、伏木田さんが重要な指摘をしている。

東京は個展と画商が連携しているが、北海道は美術市場があまり成立しなかった。だから純粋に芸術の発表の場になり、見る方もそれを求めていた。

 それに対し、荒巻さんが「顧客にこびたような商売用の「売り絵」を描くとバカにされてたね」と応じている。
 実際、時計台ギャラリーで荒巻さんは、サムホールや10号ぐらいの絵ばかりの個展に対しては、評価は辛かった。その一方、団体公募展で発表した100号クラスの絵だけを2、3年分並べる個展もあまり好きではないらしく、大作から小品までバランス良く展示された会場を好んだ。

 上記の紙面には、美術評論家として長く同ギャラリーでの展覧会を見て来た吉田豪介さんの談話も出ていて「絵描きにとって憧れの場所」という見出しがついている。



 さて。
 以上のことからあきらかになるのは、同ギャラリーが(おそらく無意識のうちに)、展示物として想定しているのが、もっぱら絵画であるということではないだろうか。

 筆者も、ぜんぜん関係のない人から「ヤナイくん、絵を見るのが好きなんだって」と言われることがたまにある(とくに、年上の人が多い)。
 業界以外の人にとって、美術(アート)と絵はイコールなのである。

 確かにかつては、絵画(とくに洋画)が美術界で首座の地位を占めていた。
 いまも道展や全道展、新道展などでは、絵画(油彩)部門の展示数が最も多い。

 だがもちろん、美術は絵画だけではない。
 貸しギャラリーを利用するのは、彫刻、書道、写真、インスタレーション、工芸などいろいろな分野があるのは、いうまでもないだろう。
 時計台ギャラリーでは、絵画展が大きな割合を占めている。
 これは、書道については昔からスカイホールが強みを発揮しており、また写真に関しては、市内に複数の専門ギャラリーが存在するという事情もあるだろう。
 その上、時計台ギャラリーでは、搬出・搬入を、最終日の土曜午後5時からの1時間で済ませるのが通例になっているという(実際には、それよりも長引くことも少なくなかったようだが)。かように慌ただしい搬入作業では、インスタレーションなどの設置は難しい。
 また、時計台ギャラリーは、新しいギャラリーに比べると天井があまり高くない。150号の絵画の展示には支障がないが、近年の大型インスタレーションには対応しきれていない。45年前の設計なので、やむをえないのだが。

 ご存じの通り、絵画の首座は現在、前衛側と裾野側の双方から脅かされている。

 国際芸術祭など現代アートの最前線では、ワークショップやリサーチ型展示、映像、鑑賞者参加型などの発表が増え、一般的な絵画はごく少数派となってしまった。
 もちろん絵画が制作されていないわけではない。しかし、絵画の主舞台はビエンナーレなどではなく、商業画廊やアートフェアなどに移り、その結果、100号大の作品などは、団体公募展などに出すのでもない限り、日の目を見なくなってしまった。

 その一方で、日曜画家も減っている。
 趣味で美術制作に携わる女性や若者の多くは、油絵ではなく、「ものづくり」と呼ばれる、アクセサリーやイラストレーションなどに取り組む傾向が目立っている。
 こういう人は時計台ギャラリーを借りないし、絵を見に来ることもない。

 時計台ギャラリーの稼働率が低下した背景には、このような美術界の状況が影を落としているものと考えられるのだ。

(この項続く) 


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