
(承前)
今展の出品者には忙しい作家が多いと、以前のエントリにも書きましたが、澁谷俊彦さんも目を見張る精力的な仕事ぶりです。
プラスワン展の直前にギャラリーエッセで個展を開いていたはずですが、このエントリをアップしている現在も、茶廊法邑でまた個展を開催中です。
白い板を組み合わせ、床面から少し浮かせて設置したこのシリーズは、今年から取り組んでいるもの。
「北海道立体表現展」の札幌芸術の森美術館会場でも発表していました。
ブログ「散歩日記 X」でSHさんが述べていたとおり、作品のキモは、床にぼんやりと反射して見える光でしょう。
白い板の裏側に蛍光色が塗られ、それが床面に映って、あたかも色の光を発しているように見えるのです。
ダン・フレンヴィンや宮島達男のように自ら発光するインスタレーションを制作する人はいますが、「反射光が主役という作品はこれまでないのでは」と澁谷さん。
「LEDが仕込んであるのでは」
と言う人もあるほどです。

今回は「コンペイトウとメトロポリス」というテーマで、たしかにパッと見ると、都市計画の模型のようにも見えます。

あちこちに潜ませているコンペイトウ。
澁谷さんは、当初はゼリービーンズを思いついたそうですが、暑いとすぐに溶けてしまう。
もちろん、遊び心なんですが、作品をインタラクティブ(双方向的)なものにするための仕掛けでもあります。
今回は20個ほど散らしたとのこと。
「色合いが自分の塗った色と全て合致している。保護色みたいなものです。一般のお客さんと作品をつなぐ担い手として参加してもらいました」

円盤の下に隠れている黄色いコンペイトウが見えますか?
「白い支持体なので、これを雪の上でやったらおもしろいのでは-と、シミュレーションしているところ。また、人の動きや風の作用で、色の着いた壁が動くのは? というのも考えています」
と澁谷さん。今年は、思いつきを口にして動くことにしているそうです。
ところで、以下は筆者の考察ですが、インタラクティブというのは単なる思いつきではありません。元来は、澁谷さんが平面の作者であることと深い関係があるのではないかと思います。
絵画は平面ではありながら、透視図法などのワザによって奥行きという名のまぼろしを現出させてきました。
キュビスム後のめまぐるしい絵画の発展に伴い、透視図法的な奥行きは旗色が悪くなり、別の奥行きのあり方を探すのが現代絵画のひとつの課題になりました(「絵画の場合」や、道教大油彩研究室「油展」は、その問題意識がかなりのウエイトを占めていると思われます)。
そこで澁谷さんは考えたはずです。
「出っ張ったり引っ込んだり、というのを、平面上の前進色・後退色などの作用ではなく、現実にやってみたらどうなるんだろう」
その結果が、「森の雫」シリーズだと思うのです。
黒い四角柱を林立させ、その断面(頂上部)に小さな絵(抽象画)を描いたこのシリーズは、鑑賞者が前進したり後退したりして作品との距離を自ら決める一般的な絵画ではなく、あらかじめ画面と鑑賞者の距離が作者によって決められてしまっています。低い柱は遠く、高い柱は迫って見えます。
今回も、コンペイトウを道具に使ったのは、これを探すという行為を鑑賞者にさせることで、作品と鑑賞者の距離をさまざまに変えるという意味合いが込められているのではないでしょうか。
いわば、ちょっと強引な遠近法、というわけです。
考えてみれば、伝統的な彫刻や立体で、色彩そのものがテーマになることは、意外にもほとんどありません。
その意味でも、澁谷さんの立体作品は、絵画という出発地点の問題意識を強く引きずっているといえるのではないでしょうか。
2010年9月11日(土)~26日(日)10:00am~5:00pm(入館は4:30まで)、月曜休み(月曜が祝日の場合は翌火曜休み)
本郷新記念札幌彫刻美術館本館(札幌市中央区宮の森4の12)
入場無料
□澁谷俊彦さんのサイトhttp://toshihikoshibuya.com/
■PLUS 1 +柴橋伴夫企画 空間の触知へ-連鎖の試み 藤本和彦 澁谷俊彦(2009年8月)
■澁谷俊彦展-森の雫09- 茶室DEアート (2009年7月)
■澁谷俊彦個展-青い雫09-
■澁谷俊彦展 森の雫(2008年3月) ■つづき
■渋谷俊彦個展(07年11月)
■絵画の場合展(07年1月)
■渋谷俊彦展-瞑想の森-(06年9-10月)
■絵画の場合2005
■絵画の場合2004
■渋谷俊彦展-大地の記憶(04年)
■渋谷俊彦展-森の鼓動(03年)
■渋谷俊彦展(02年)
■二人展「交差する座標軸」(02年、画像なし)
今展の出品者には忙しい作家が多いと、以前のエントリにも書きましたが、澁谷俊彦さんも目を見張る精力的な仕事ぶりです。
プラスワン展の直前にギャラリーエッセで個展を開いていたはずですが、このエントリをアップしている現在も、茶廊法邑でまた個展を開催中です。
白い板を組み合わせ、床面から少し浮かせて設置したこのシリーズは、今年から取り組んでいるもの。
「北海道立体表現展」の札幌芸術の森美術館会場でも発表していました。
ブログ「散歩日記 X」でSHさんが述べていたとおり、作品のキモは、床にぼんやりと反射して見える光でしょう。
白い板の裏側に蛍光色が塗られ、それが床面に映って、あたかも色の光を発しているように見えるのです。
ダン・フレンヴィンや宮島達男のように自ら発光するインスタレーションを制作する人はいますが、「反射光が主役という作品はこれまでないのでは」と澁谷さん。
「LEDが仕込んであるのでは」
と言う人もあるほどです。

今回は「コンペイトウとメトロポリス」というテーマで、たしかにパッと見ると、都市計画の模型のようにも見えます。

あちこちに潜ませているコンペイトウ。
澁谷さんは、当初はゼリービーンズを思いついたそうですが、暑いとすぐに溶けてしまう。
もちろん、遊び心なんですが、作品をインタラクティブ(双方向的)なものにするための仕掛けでもあります。
今回は20個ほど散らしたとのこと。
「色合いが自分の塗った色と全て合致している。保護色みたいなものです。一般のお客さんと作品をつなぐ担い手として参加してもらいました」

円盤の下に隠れている黄色いコンペイトウが見えますか?
「白い支持体なので、これを雪の上でやったらおもしろいのでは-と、シミュレーションしているところ。また、人の動きや風の作用で、色の着いた壁が動くのは? というのも考えています」
と澁谷さん。今年は、思いつきを口にして動くことにしているそうです。
ところで、以下は筆者の考察ですが、インタラクティブというのは単なる思いつきではありません。元来は、澁谷さんが平面の作者であることと深い関係があるのではないかと思います。
絵画は平面ではありながら、透視図法などのワザによって奥行きという名のまぼろしを現出させてきました。
キュビスム後のめまぐるしい絵画の発展に伴い、透視図法的な奥行きは旗色が悪くなり、別の奥行きのあり方を探すのが現代絵画のひとつの課題になりました(「絵画の場合」や、道教大油彩研究室「油展」は、その問題意識がかなりのウエイトを占めていると思われます)。
そこで澁谷さんは考えたはずです。
「出っ張ったり引っ込んだり、というのを、平面上の前進色・後退色などの作用ではなく、現実にやってみたらどうなるんだろう」
その結果が、「森の雫」シリーズだと思うのです。
黒い四角柱を林立させ、その断面(頂上部)に小さな絵(抽象画)を描いたこのシリーズは、鑑賞者が前進したり後退したりして作品との距離を自ら決める一般的な絵画ではなく、あらかじめ画面と鑑賞者の距離が作者によって決められてしまっています。低い柱は遠く、高い柱は迫って見えます。
今回も、コンペイトウを道具に使ったのは、これを探すという行為を鑑賞者にさせることで、作品と鑑賞者の距離をさまざまに変えるという意味合いが込められているのではないでしょうか。
いわば、ちょっと強引な遠近法、というわけです。
考えてみれば、伝統的な彫刻や立体で、色彩そのものがテーマになることは、意外にもほとんどありません。
その意味でも、澁谷さんの立体作品は、絵画という出発地点の問題意識を強く引きずっているといえるのではないでしょうか。
2010年9月11日(土)~26日(日)10:00am~5:00pm(入館は4:30まで)、月曜休み(月曜が祝日の場合は翌火曜休み)
本郷新記念札幌彫刻美術館本館(札幌市中央区宮の森4の12)
入場無料
□澁谷俊彦さんのサイトhttp://toshihikoshibuya.com/
■PLUS 1 +柴橋伴夫企画 空間の触知へ-連鎖の試み 藤本和彦 澁谷俊彦(2009年8月)
■澁谷俊彦展-森の雫09- 茶室DEアート (2009年7月)
■澁谷俊彦個展-青い雫09-
■澁谷俊彦展 森の雫(2008年3月) ■つづき
■渋谷俊彦個展(07年11月)
■絵画の場合展(07年1月)
■渋谷俊彦展-瞑想の森-(06年9-10月)
■絵画の場合2005
■絵画の場合2004
■渋谷俊彦展-大地の記憶(04年)
■渋谷俊彦展-森の鼓動(03年)
■渋谷俊彦展(02年)
■二人展「交差する座標軸」(02年、画像なし)
ほんとにうれしいです。
やはりNikon F40は名機なんですかね。
スペックだけ見てると、ぜんぜんたいしたことない(画素数だけなら最近のケータイに負ける)んですが、きれいに写るので、手放せません。
やはり写真があると、伝わり方が段違いなので、恐縮するばかりです。
ほんとうは、このようなたいそうな題名のブログをやっている以上、知らない人でも撮影させていただくことが必要なのですが、仕事以外のシチュエーションだと、知らない人に話しかけるのが苦手で…。面目ないです。