「伝統工芸新作展」から、昨年改題した、恒例の展覧会。
正会員・準会員・研究会員・一般という階梯を有する公募展。だが審査には国立美術館の学芸員らも加わっており、正会員でも落選することはめずらしくない。
図録には毎年、鑑審査結果表が載っており、それによると今回は、陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形、諸工芸の7部門あわせて679点が出品され、397点が入選となっている。
例年の傾向だが、とりわけ陶芸は厳しい審査になっており、正会員ですらおよそ3分の1にあたる31点が落選しているし、一般にいたっては入選38、落選110という厳選ぶりだ。
主催は日本工芸会東日本支部なので、出品しているのは北海道、東北、関東甲信越の作家たち。たまには京都や金沢の人々のも見たい気がする。だいたい、有名な窯場はほとんど西日本にあるわけだし。
ことしは、道内からの入選は9点。入賞はいない。
・陶芸
練上摺文壺 尾形香三夫(石狩管内新篠津村、正会員)
黄瓷組皿 大野耕太郎(滝川市江部乙町、正会員)
山並文扁壺 中村裕(札幌市南区、準会員)
野葡萄文六角壺 西村和(札幌市南区、準会員)
白磁水氷文鉢 北川智浩(江別市)
緋色長角皿 菊地勝太郎(胆振管内洞爺湖町)
・染織
友禅訪問着「秋彩」 塩澤啓成(恵庭市、正会員)
刺繍名古屋帯「礼文うすゆき草」 野口幸子(札幌市南区)
・木竹工
神代楢凍文小箱 村木昭彦(札幌市中央区、準会員)
北国の風土を生かした有線七宝の佳品をつくる函館の正会員長谷川房代さんの作品がなかったのが、残念。
尾形さんの練り込みの技はあいかわらずすごい。
西村さんは、ふだんの展覧会ではカジュアルなうつわを出品するが、この種の展覧会では、気の遠くなりそうな、精緻な幾何学模様の壺などを出す。さらに野葡萄の線刻を加え、モダンさにみがきがかかっている。
村木さんは古い木を素材にしているのだと思うが、ただ木目を生かしているだけではなく、まるでガラス窓が凍ったときの模様のように、木の表面が放射状に見えるように、巧みに木を組み合わせているのに驚かされる。
道外勢では、三好かがり「彩切貝短冊箱『寂』」が目を引いた。
植物や虫といった意匠が多いなかで、照明もまばゆいビル群と、あかりが水に反射している現代的な風景を、無理なく漆箱にまとめている。
螺鈿をこういうふうに使うのかと、新鮮な驚きがあった。
また、入賞者の大半が戦後生まれになったことも記しておきたい。
特に、色貝飾箱「彼岸花」で山種美術館賞を受けた松崎森平さんは1981年生まれ。
伝統工芸が若い世代にも着実に受けつがれていることは喜ばしいと思う。
2009年5月5日(火)-10日(日)
三越札幌店10階催事場(中央区南1西3)
■第48回
■第47回伝統工芸新作展
■2004年
■日本工芸会東日本支部第42回 伝統工芸新作展(2002年)
4月21日(火)-26日(日) 日本橋三越本店新館7階ギャラリー
5月12日(火)-17日(日) 三越新潟店7階
5月21日(木)-26日(火) 川徳百貨店7階(盛岡)
6月2日(火)-7日(日) 三越仙台店7階
正会員・準会員・研究会員・一般という階梯を有する公募展。だが審査には国立美術館の学芸員らも加わっており、正会員でも落選することはめずらしくない。
図録には毎年、鑑審査結果表が載っており、それによると今回は、陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形、諸工芸の7部門あわせて679点が出品され、397点が入選となっている。
例年の傾向だが、とりわけ陶芸は厳しい審査になっており、正会員ですらおよそ3分の1にあたる31点が落選しているし、一般にいたっては入選38、落選110という厳選ぶりだ。
主催は日本工芸会東日本支部なので、出品しているのは北海道、東北、関東甲信越の作家たち。たまには京都や金沢の人々のも見たい気がする。だいたい、有名な窯場はほとんど西日本にあるわけだし。
ことしは、道内からの入選は9点。入賞はいない。
・陶芸
練上摺文壺 尾形香三夫(石狩管内新篠津村、正会員)
黄瓷組皿 大野耕太郎(滝川市江部乙町、正会員)
山並文扁壺 中村裕(札幌市南区、準会員)
野葡萄文六角壺 西村和(札幌市南区、準会員)
白磁水氷文鉢 北川智浩(江別市)
緋色長角皿 菊地勝太郎(胆振管内洞爺湖町)
・染織
友禅訪問着「秋彩」 塩澤啓成(恵庭市、正会員)
刺繍名古屋帯「礼文うすゆき草」 野口幸子(札幌市南区)
・木竹工
神代楢凍文小箱 村木昭彦(札幌市中央区、準会員)
北国の風土を生かした有線七宝の佳品をつくる函館の正会員長谷川房代さんの作品がなかったのが、残念。
尾形さんの練り込みの技はあいかわらずすごい。
西村さんは、ふだんの展覧会ではカジュアルなうつわを出品するが、この種の展覧会では、気の遠くなりそうな、精緻な幾何学模様の壺などを出す。さらに野葡萄の線刻を加え、モダンさにみがきがかかっている。
村木さんは古い木を素材にしているのだと思うが、ただ木目を生かしているだけではなく、まるでガラス窓が凍ったときの模様のように、木の表面が放射状に見えるように、巧みに木を組み合わせているのに驚かされる。
道外勢では、三好かがり「彩切貝短冊箱『寂』」が目を引いた。
植物や虫といった意匠が多いなかで、照明もまばゆいビル群と、あかりが水に反射している現代的な風景を、無理なく漆箱にまとめている。
螺鈿をこういうふうに使うのかと、新鮮な驚きがあった。
また、入賞者の大半が戦後生まれになったことも記しておきたい。
特に、色貝飾箱「彼岸花」で山種美術館賞を受けた松崎森平さんは1981年生まれ。
伝統工芸が若い世代にも着実に受けつがれていることは喜ばしいと思う。
2009年5月5日(火)-10日(日)
三越札幌店10階催事場(中央区南1西3)
■第48回
■第47回伝統工芸新作展
■2004年
■日本工芸会東日本支部第42回 伝統工芸新作展(2002年)
4月21日(火)-26日(日) 日本橋三越本店新館7階ギャラリー
5月12日(火)-17日(日) 三越新潟店7階
5月21日(木)-26日(火) 川徳百貨店7階(盛岡)
6月2日(火)-7日(日) 三越仙台店7階
ヤナイさんの気になるビル群の漆箱は中が二段重になっており、1段目は透かし彫りになっておりましたよ。
手が届く範囲のものは関係者にお願いすると細部も見ることが出来るので、利用しない手はない(笑
今年も鑑査経験者や芸大教授が落選するなど非情な審査。
大御所の場合は、それなりの作品でも力を100%出し切っていないと判断されると落ちるそうです。
伝統工芸の響きとはイメージが違って、しがらみなく評価を受けられるので、若手も多いし重鎮も手が抜けない仕組みなんですね。
緊張するけど、公募展ってこうあって欲しいのでがんばっちゃうのかもしれません。
へー!
そのへんは、見ているだけではわからないですもんねー。
さすが出品者の強み。
>今年も鑑査経験者や芸大教授が落選するなど非情な審査。
それはすごいですね。
ほかの美術展ではきいたことがありません。
外部の、国立美術館学芸員などが審査に加わっているのも、緊張感を与えているのでしょうね。
今回はmomomamaさんのかいせつを聞けなかったので、来年は三越の情報に気をつけることにします。