
道内最大の書道の公募展。
規模が大きいため、会期を三つに分割して、毎年開かれています。
全国では、毎日書道展系、読売書法会系などと分かれている人たちが、同一の団体でやっているのは、見る側にとってはありがたいことです。
公募は、漢字多字数、漢字少字数、かな、近代詩文、墨象、篆刻・刻字の6部にわかれ、前衛書の部門がないのは残念ですが…。
筆者のようなしろうとが見に行っておもしろいのは、第1弾で開催される「招待・会員作品」の部です。「水準が高いので、あたりまえだ」と思う向きもあるかもしれませんが、その要因以外に、作品のバリエーションが非常に豊かだと感じられるためです。
逆に言えば、公募作品の部や会友作品の部は
「これは個性的だ」
と思わせる作品が非常に少ないというのが、率直な感想です。
公募作品で、ときに他とかけはなれた作があっても、一般の入選どまりで、特選や秀作には、バランスの良い作が選ばれている傾向が強いように思います。
もとより書道は、現代美術などに比べると、新奇性をたっとぶ傾向が薄く、先達に倣う気風が強い分野といえそうです。
各自の個性を発揮するのは、基礎をみっちりやって、しかるのちで十分―という感覚が強いのかもしれません。
個人的に今年いちばん目を引いたのが、かな書で、正方形の紙を用いた会員が何人かいたことでした。大川壽美子さん、水野松雪さん、下村美穂さんです。佐々木公江さんも紙は正方形ではありませんが、紙の下方に余白をもたせて、正方形の部分に文字を排列しています。
しかも大川さんや下村さんは、連綿ではなく、ひとつひとつの文字を独立させて書いています。従来とは異なるかな書を―という試行がそこにはあるように思います。また、一般には、文字列はまっすぐに並べることが美しいとされることが多いですが、水野さんは水が流れるように文字列をカーブさせて書いているのが目を引きます。
北海道書道展のかな作品は、2尺×8尺という大きさの紙を縦長にして書いたものが大半です。手紙の巻紙などに書かれることが本来の姿なのでしょうが、展覧会で発表するという形式をとる以上、大きな縦長の紙に短歌1、2首というのが定番になるのはある程度、必然的でしょう。
かなに比べると、近代詩文は差異を打ち出しやすいのではないかと、しろうと考えで思いがちですが、実際には先例に倣った作が非常に多いです。
激しさ、強さを打ちだそうとうすると、近代詩文の出発点にあったはずの「可読性」という特徴が失われるというジレンマもかかえているように見受けられました。
そうなると、けっきょく漢字がいろいろ楽しめるということになります。個人的な感想ですが…。
三上雅倫さんは、抽象画のような造形美と古拙の味わいが合体したような、興味深い作でした。
松永律子さん、三上山骨さん、平田鳥閑さんなども造形性を存分に発揮しています。
青木空豁さんは余白の美を生かしています。
須田廣充さんは、左右で見事な対比になっています。
全体をとおしてみると、一時期流行した良寛ふうの線は少なくなり、金文や象形文字に取り組む人も減ってきているような印象を抱きました。
田中卒甫さんは、憲法第二章戦争の放棄第九条という作品です。
筆者は、これを題材にした書作品は初めて見ました(陶芸なら見たことがある)。憲法をないがしろにする政治が行われている昨今だけに、目を引きました。
以上、きわめて雑ぱくな感想ですが、まとめてみました。
・招待・会員作品 2016年4月27日(水)~5月1日(日)午前10時~午後6時(最終日~午後5時)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)
・公募作品 5月4日(水)~8日(日)午前10時~午後6時(最終日~午後5時)
札幌市民ギャラリー
・会友作品 5月6日(金)~10日(火)午前10時~午後6時(最終日~午後5時)
札幌パークホテル(中央区南10西5)地下
過去記事へのリンク
■第56回北海道書道展=招待・会員 (2015)
■北のかがやき2009 北海道書道展第50回記念展 (2009)
■第48回
■第47回
■第45回
■第44回
■第43回
規模が大きいため、会期を三つに分割して、毎年開かれています。
全国では、毎日書道展系、読売書法会系などと分かれている人たちが、同一の団体でやっているのは、見る側にとってはありがたいことです。
公募は、漢字多字数、漢字少字数、かな、近代詩文、墨象、篆刻・刻字の6部にわかれ、前衛書の部門がないのは残念ですが…。
筆者のようなしろうとが見に行っておもしろいのは、第1弾で開催される「招待・会員作品」の部です。「水準が高いので、あたりまえだ」と思う向きもあるかもしれませんが、その要因以外に、作品のバリエーションが非常に豊かだと感じられるためです。
逆に言えば、公募作品の部や会友作品の部は
「これは個性的だ」
と思わせる作品が非常に少ないというのが、率直な感想です。
公募作品で、ときに他とかけはなれた作があっても、一般の入選どまりで、特選や秀作には、バランスの良い作が選ばれている傾向が強いように思います。
もとより書道は、現代美術などに比べると、新奇性をたっとぶ傾向が薄く、先達に倣う気風が強い分野といえそうです。
各自の個性を発揮するのは、基礎をみっちりやって、しかるのちで十分―という感覚が強いのかもしれません。
個人的に今年いちばん目を引いたのが、かな書で、正方形の紙を用いた会員が何人かいたことでした。大川壽美子さん、水野松雪さん、下村美穂さんです。佐々木公江さんも紙は正方形ではありませんが、紙の下方に余白をもたせて、正方形の部分に文字を排列しています。
しかも大川さんや下村さんは、連綿ではなく、ひとつひとつの文字を独立させて書いています。従来とは異なるかな書を―という試行がそこにはあるように思います。また、一般には、文字列はまっすぐに並べることが美しいとされることが多いですが、水野さんは水が流れるように文字列をカーブさせて書いているのが目を引きます。
北海道書道展のかな作品は、2尺×8尺という大きさの紙を縦長にして書いたものが大半です。手紙の巻紙などに書かれることが本来の姿なのでしょうが、展覧会で発表するという形式をとる以上、大きな縦長の紙に短歌1、2首というのが定番になるのはある程度、必然的でしょう。
かなに比べると、近代詩文は差異を打ち出しやすいのではないかと、しろうと考えで思いがちですが、実際には先例に倣った作が非常に多いです。
激しさ、強さを打ちだそうとうすると、近代詩文の出発点にあったはずの「可読性」という特徴が失われるというジレンマもかかえているように見受けられました。
そうなると、けっきょく漢字がいろいろ楽しめるということになります。個人的な感想ですが…。
三上雅倫さんは、抽象画のような造形美と古拙の味わいが合体したような、興味深い作でした。
松永律子さん、三上山骨さん、平田鳥閑さんなども造形性を存分に発揮しています。
青木空豁さんは余白の美を生かしています。
須田廣充さんは、左右で見事な対比になっています。
全体をとおしてみると、一時期流行した良寛ふうの線は少なくなり、金文や象形文字に取り組む人も減ってきているような印象を抱きました。
田中卒甫さんは、憲法第二章戦争の放棄第九条という作品です。
筆者は、これを題材にした書作品は初めて見ました(陶芸なら見たことがある)。憲法をないがしろにする政治が行われている昨今だけに、目を引きました。
以上、きわめて雑ぱくな感想ですが、まとめてみました。
・招待・会員作品 2016年4月27日(水)~5月1日(日)午前10時~午後6時(最終日~午後5時)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)
・公募作品 5月4日(水)~8日(日)午前10時~午後6時(最終日~午後5時)
札幌市民ギャラリー
・会友作品 5月6日(金)~10日(火)午前10時~午後6時(最終日~午後5時)
札幌パークホテル(中央区南10西5)地下
過去記事へのリンク
■第56回北海道書道展=招待・会員 (2015)
■北のかがやき2009 北海道書道展第50回記念展 (2009)
■第48回
■第47回
■第45回
■第44回
■第43回