ある日の夜、繁華街を撮影していると、不思議な感覚に襲われた。独自の猥雑さと騒音や人のざわめきが聞こえるにもかかわらず、静寂な光と暗闇が見えたのだ。それは、自分が向こう側に足を踏み入れることでもあった。
(会場のキャプションより)
幼いころは、夜というだけで、なんだかわくわくしたものだ。
とりわけ、夜の街には、子どものころは知らなかった独特の空気が流れているように感じられた。
東京の大森で映画を見た後、大井町まで歩いたり-なんてことをしたのも、その夜の空気を感じ取りたかったからかもしれない。
それは、歓楽街のにぎやかさとか、そういう具体的な感覚ではない、もっと漠然としたものだ。
濱田さんの写真は、忘れかけていた「夜の街へのわくわくする思い」を呼び覚ましてくれたように思う。
これもローライフレックスで撮影されたのだろうか、正方形のカラー写真20枚は、夜のにぎやかさというよりも、ある種の静けさを感じさせる。
並ぶペットボトルと猫、きらきらと光る舗道、オープンカフェのテーブルの足もとに近い路上に並んだ青と黄色の風船、鳥かごのカラス、巨大な鳥人が描かれたビルの壁…。
森山大道の新宿シリーズが、ざらざらとした触感で世界を秒速で切り取っていく視線の痕跡だとしたら、濱田さんの一連の写真は、人通りの少なくなった街角を、息を潜めて見守っているような、ひそやかな感覚があるように思うのだ。
2010年3月16日(火)~28日(日)9:00~6:00(最終日~4:00) 日曜休み
ウエスト・フォー(中央区大通西4、カメラの光映堂本店 地図B)
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■PHOTOGRAPH EXHIBITION MOVE 3 part1 (2010年2月)
■濱田トモミ写真展 滅びるように出逢いたい (2009年5月)
□Photograph Exhibition Guide Hokkaidoの関係ページ
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