ラーメン屋でも定食屋でも、何でもいいけどそういうたぐいの店に入って座る。
そうすると箸立てが目に入る。
そして調味料セットが目に入る
こじんまりとした台みたいなものの上に載せられている。
台の面積はせいぜいハガキ大なのに、そこには各種容器が押し込められているワケだから、どうしても「ひしめき合っている」という感じになる。
醤油は刺身代表、ソースはフライ系、七味唐辛子はうどん蕎麦系、酢とラー油は餃子というふうに、固い地盤によって支持されている。
いわば調味料、及び香辛料のエリート集団である。
塩や胡椒はどうか。
塩と胡椒は調味料、香辛料の王者である。
塩と胡椒なくして料理は成立せず、とのお墨付きがいずこからともなく出てくる。
それほどの実力者たちなのに、ひとたびテーブルの小島の上に並んだとたん、その存在感が薄くなる。
胡椒はラーメンのとき、香りづけにふりかけるだけ。
ふとラー油の容器が目に入った。
ラー油のビンは常にうす汚れていて貧しげだが、もしひとたび餃子を注文してラー油が無かったとしたら…
ラー油のはかり知れない実力、強力な存在感、その有難みが胸に迫るのであった。
しかしどの店のラー油も、店の人にかまってもらえないのか、油でヌルヌルギタギタしている。