普通の食事だと、まず味噌汁を一口すすってから食事が開始されるものだが、定食屋などのハンバーグ定食についてくる味噌汁の場合は、何も期待しないただの味噌汁である。
ここで言う期待とは、もしかしたらいい煮干しを使っているのではないか、とか具が凝っているんじゃないか、という期待。
期待しない味噌汁というのは、そのへんにいくらでもある、ただの味噌汁。
その味について何か評価を加えようとしないで飲む味噌汁。
何も期待しない味噌汁は後回しにして、まずハンバーグの端っこを崩してゴハンを一口ということになる。
ハンバーグでゴハンを一口食べてから味噌汁のお椀を見る。
そうすると味噌汁の表面に、具らしきものが何ひとつ浮いていない。
味噌汁に期待していないものの、大抵の人はここで不安になる。
もしかしたら、と思う。
具なしか、と疑う。
大急ぎで箸で味噌汁をかき回してみる。
すると下の方に沈んでいたワカメの一片が、大儀そうにゆっくりと浮上してくる。
ここで大抵の人は安心する。
ペラペラの小さな一片だが、いてくれさえすればそれでいい。
もともと期待してない味噌汁であるから、大量のワカメがワッといっぺんに浮上してくれなくていい。
ハンバーグ定食のゴハンを食べる合間合間に、何も期待しないでふと自然に手が出てズズーと飲む味噌汁。
一か月遅れの週刊誌のページをめくってまたズズーと飲む味噌汁。
飲んだあと、うまかったでもなく、まずかったでもなく、ごく自然にノドを通っていく味噌汁。
そういうわけなので、期待しない味噌汁の具は、ペラペラした安物のワカメでなければならない。
昼飯を出雲空港ホテルの隣「縁福」にて
天ぷら定食950円
底の方にはワカメが、表面には油揚げが浮いていたが、やっぱり期待しない味噌汁でした。