今年の正月、40年来の友人から突然電話があり、こちらから送った年賀状に対して、奥様が病気療養中ながら一時帰宅している、意識はあるが重篤、との連絡があった。病名ははっきり言わなかったものの、日本人であれば二人に一人はかかる、という表現から推測すると癌だったと思われる。それが今日、彼からメールがあり、先週、奥様が亡くなられたと。故人の遺志により家族葬をすでに終わっているという。
お互いの家からの中間点ということで吉祥寺で何度も食事をした。彼はロシア語が堪能で、在モスクワ日本大使館勤務のほか、ロンドンや東欧・ロシアでの勤務が長かった。今は某国立大学で特任講師を務めている。ロンドンでは一緒に仕事をしたし、出張では彼の赴任していたモスクワ、プラハ、ハバロフスクの自宅やレストランで歓待を受けた。そこにはいつも奥様がご一緒で、実に仲睦まじかった。二人のお嬢さんはいずれも結婚し一人は渉外弁護士として海外に、もう一人は大企業の国際部門に勤務されており、孫も一人いるという、幸福を絵にかいたような老後を迎えたばかりだった。数年前になるがイギリスの年金について質問を受け、申請手順を連絡したことがある。その後、本人と奥様が受給できることになり、これで孫のいるロンドンへの旅費の足しになると言っていたのが思い出される。
それがこんなにあっけなく亡くなるとは。正月の電話以来、何度かお見舞いにいくことも考えたがそれが彼にとって、さらには奥様にとって果たして良いことなのか逡巡しているうちに今日を迎えてしまった。そっとしておくのが良いという判断に誤りがあったとは思わないが、もう一度生前に顔を見ることができたのならという後悔の念がないと言えば嘘になる。
4月には自宅近くで偲ぶ会が開かれるという。どんな慰めを言えば良いのか。