21℃まで気温が上昇した今日の北海道、庭のエゾヤマザクラが満開に。家の前の公園を毎日散歩しているご夫婦から見事な桜の花と声をかけられた。大きくなりすぎるので庭木には向かない桜の木だが、やはり満開となると圧倒的な存在感がある。ソメイヨシノとは違って控えめなのは厳しい気候に順応するためだろう。満開の桜、今年は例年より1週間以上は早いという。同じく開花した梅の花も。この梅は今年は実をつけるだろうか。
たまたま今週発売の週刊新潮に川本三郎が「教養人のための『未読の名作』一読ガイド」でナサニエル・ウェスト、丸谷才一訳の「孤独な娘」を紹介している。「孤独な娘」は60年前、当時30歳の丸谷が訳したもので、岩波文庫からは2013年に出版された。岩波が文庫版にしようとするのだから、この文学史上の位置も自ずから判ろうというものである。
寡作かつ孤高の作家として高名なウェストの代表作であり、アメリカ文学に大きな影響を与えたこの作品は、1930年代のアメリカの知識人と庶民の内的生活を同時にとらえた秀逸な作品で、丸谷という、これまた稀有の英文学者、作家の翻訳によって日本にもたらされたものである。ユダヤ人であるウェストが描いた極限的な生きることへの問いかけと、絵画的な文体は丸谷の翻訳によっていっそう輝きを増していると言える。
したがって、この小説は川本の言うような「格差社会の先取り」「クリスチャンとして悩む」「大恐慌下の悲劇」といった皮相なものでは決してない。このように敢えて矮小化するのは、川本のこの作品の読み方が誤っているのか、あるいは評論家としての力量不足なのだろう。
週刊新潮の読者の多くの目に触れることを考えれば、この書評を座視することはできない。こんな「ガイド」でウェスト、あるいは丸谷が評価されることがあってはならない。
初夏のような今日の暖かさで庭の植物が一斉に開花、あるいは開花直前に。さくらもモクレンも明日には開花するだろう。北海道の花の季節は一挙に到来する。
今英国では保守党と労働党が国会議員選挙で大接戦を演じている。選挙では保守党も労働党も単独過半数を得ることはできず、連立を組む相手によってこれからの英国政治が大きく左右されることになる。また、昨年、僅差で独立反対派が勝利したスコットランドでは、ここを地盤とするスコットランド国民党(SNP)がこれまでの緊縮政策の転換と、トライデント型原子力潜水艦の廃棄を訴えるなど、かなり先鋭化した公約(マニュフェスト)を発表しており、なにかと今回の総選挙は話題に事欠かない。選挙結果次第では、英国の政治、外交、経済に大きな変化があるかもしれない。
今日はエリザベス女王の89歳の誕生日。英国は国家元首の誕生日で休日になることはない。やはり、丁度800年前に結ばれたマグナ・カルタ(権利章典)にあるように女王も貴族の一人、ということか。もっとも、休日ではないが、女王の誕生日にかこつけて割引をしたりする商売はあるようだ。たまたま半年ほど前にロンドンのアパートの修理を頼んだ建築業者から、今日発注すれば10%割引きという宣伝がEメールであった。曰く、今日の日を休日にする権限は自分達にはないが、値引きすることには女王も賛成してくれるだろう、と。