回顧と展望

思いついたことや趣味の写真などを備忘録風に

ファン・クライバーン逝去

2013年02月28日 08時54分56秒 | 日記

4年前、盲目かつ初めてのアジア出身のピアニストとして辻井伸行が金賞を受賞した国際音楽祭を創設したファン・クライバーンが死去した。東西冷戦の真っただ中、対立するアメリカ人がモスクワで、第一回チャイコフスキー国際コンクールで優勝するとは、何とも歴史のいたずらのようなものを感じる。

スプートニクの打ち上げにより宇宙開発競争においてソ連に後れを取ったアメリカが、音楽によってかろうじてそのプライドを保ったということ、そしてあのフルシチョフが、国籍に関係なく、最高のピアニストに第一回のチャイコフスキー国際コンクール優勝者の栄誉を与えることを指示した(もし、最高のピアニストがクライバーンなら、優勝は彼に与えるべきだ、と)。毀誉褒貶の著しいフルシチョフがそのような政治決断をしたというのであれば、往時の政治家の度量を感じる。人気絶頂のところで母親の介護のために以降演奏ツアーをやめたとはいえ、ロックスターもしのぐ国民的人気を博したクライバーンはアメリカ人にとっては忘れられないピアニストだろう(そして、最初のチャイコフスキー国際コンクールの優勝者としてロシア人にとっても)。ブッシュ前大統領が2003年にアメリカ最高位の勲章を授与したこともうなずける。

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イタリア 終わりの始まり

2013年02月27日 17時27分37秒 | 日記

塩野七生女史の「ローマ人の物語」から借用してしまったが、今回のイタリア総選挙の結果はまさにイタリアに破滅的な結果をもたらすという意味での「終わりの始まり」といえるだろう。ローマ帝国が大衆迎合の「パンとサーカス」の政治で滅亡した時と同様、今回も、ベルルスコーニの「パン(裏付けのない減税)」とコメデイアングリロの「サーカス(扇情的な国家批判)」が過半数の投票を獲得した。歴史の教えるところ、この後には独裁者の登場しかない。

このことと比較すると、消費税の増税を受け入れて政権交代をもたらした日本の有権者のほうが、破滅への自制心がより効いていたと言えるだろう。「維新の会」といういかがわしい政党にも冷静な目を向けた日本の有権者であればコメデイアンに投票するよりはまだまし、と思ったに違いない。もっとも、ほんの少し前、ある地方自治体では、まさにコメデイアンを知事に選んだ例はあるが・・・そして、その地方自治体が「維新の会」の拠点であるというのも暗示的。

アベノミクスも人工植毛の艶福家と狂犬のようなコメデイアンに翻弄されるかも知れない。

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ファーストレディとオスカー賞

2013年02月26日 14時05分55秒 | 日記

ミシェル・オバマがオスカー賞の授与者として、現職の大統領あるいはファーストレディとしては初めて、(軍服姿の青年数人を背景に)ホワイトハウスから中継映像で参加したことに賛否両論がでている。これを企画したやり手プロデュ―サーHarvey Weinsteinが大統領選挙時にオバマ陣営に多額の寄付を目的としたパーテイを主催した人物で、当然その時から今回のミシェルの出演は約束されていたのだろう。ファーストレデイのTV出演が簡単に決まるはずもない。今回の企画を非難する人々は、ミシェルのせいで影が薄くなった参加者の僻みからきているものと思われるが、表面的には、こういった映画文化と政治の距離感、などと屁理屈をこねている。政治がショーであり、また、映画界も政治に寄生する同じ穴のムジナだけに、このような非難は笑止千万。それにしても、映画が反体制的、などとはだれが言ったのだろう。また、映画産業に政治の誤りを正してくれなど、誰も頼んではいない。軍産複合体制の産には映画産業も当然含まれる。ただ、今回はミシェルがファーストレデイだったから声がかかったのも事実。ローラ・ブッシュや、ましてやアン・ロムニーだったら視聴者はTVのスイッチを切っていただろう。

今回オスカーで旋風を巻き起こした最優秀作品賞の「Argo」はイランでの米国大使館人質事件が題材で、映画界そのものも映画の中に登場するが、おりしもイランの核開発をめぐるEUなどとの協議がカザフスタンのアルマトイで開催され、EU側が何らかの妥協策を携えてきたという時期と重なり興味深い。また、イスラエルによる空爆も、EUほか西側諸国との交渉決裂から時間をおかずに実施される可能性もあり、その時の米国による世論対策として、「Argo」の果たす役割は大きいのだろう。

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韓国新大統領就任

2013年02月25日 17時45分36秒 | 日記

朴新大統領の父親である朴正煕氏が軍事クーデターで全権を掌握した時のことは今でも比較的よく覚えている。国家非常事態宣言、戒厳令布告やクーデター、そしてお決まりの軍事評議会などという尋常ではない重い響き、そして要人の暗殺といった、子ども心にはとてつもない想像を掻き立てる大きな文字が新聞に踊っていた。1960年代は東西冷戦の真っただ中で、そこかしこに東西両陣営の傀儡政権が誕生していた、まさに軍事クーデターと首脳暗殺の時代だった。文字通り、政治家はいつ命を落としても不思議ではなかった。

現代では、テロ集団による暗殺こそ継続しているが、一夜にしてクーデターによって国家がひっくり返るという例はあまりない。東欧の民主化やアラブの春など、真綿で首を絞めるような政権交代が主流になってきている。それだけに、どこに国家権力が存在するのか、見えずらくなったともいえる。朝起きてみたら世の中が変わっていた、というような劇的な政治事件はインターネット全盛のこの時代にそぐわないのかもしれない。また、政治家も、命を張っているという事の実感を持てなくなってきているのではないか。

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 日本外交について

2013年02月24日 18時02分34秒 | 日記

日米首脳会談で、日本の民主党政権下で破綻した日米関係を回復することで合意したという。民主党政権時代に激化した中国および韓国との領土問題への対処のため、日米同盟強化が喫緊の課題という認識が生まれてきたのだろう。日本の民主党政権はほぼオバマ政権第一期と重なっているから、オバマ大統領からみれば、日本の政権交代による日本外交の変化を身をもって実感できる立場にある。自民党政権になって、果たして日米関係は本当に修復されるのか。

日本ではよく「強固な官僚制」ということが言われるが、もし、自民党への政権交代により、本当に日本外交が変わるのであれば、外務官僚というのは所詮、政権の言いなりになる便利な存在という事になる(もちろんそれはそれでよいこと)。そうだとすれば、日本の外務官僚ほど節操のない人種はいない。いや、節操などという言葉はもともと官僚には縁のない言葉だった。たとえば、西田国連大使の口が耳まで裂けたような悪相などはその典型かも。

同じ官僚がささえる日本外交が、民主党政権下とどう違ってくるのかに注目したい。民間企業のような他社との競争や失業の恐怖をもたない官僚が、政権交代で本当に違った仕事ができるのか、不安ではある。おりしも中国は王毅氏を次期外相に指名した。完璧な(多くの日本の官僚よりも優れた)日本語を話す王氏は、日本にとっても本当に手強い交渉相手となる。また、王氏の人気は特に在日中国人の中で極めて高い。それだけ、情報のアンテナの精度が高いという事だ。

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