例年この時期は晴天が続くものだが、今年に限ってはこのところ雨が多い、肌寒い日ばかりだ。雲が低く垂れこめて、日中だというのに室内では照明が必要なほど薄暗い。
にもかかわらず、ウエストミンスターはメイ首相の後任をきめる保守党党首選の立候補の届け出が開始されたことで熱気に包まれている。当初出馬意向を示していたのは１１名だが、最低8名の推薦議員を確保できなければ退却しなければならず（すでに1名が脱落）、本日中に6名に絞られる見込みだ。
梅雨入り直前の羽田を発ったのが６日。１２時間の飛行が歳とともにますます辛くなってきているように感じられる。来週の２つの会合に出席するためにロンドン行きを決めたのが先月中旬。特に準備をするというほどのものではないので、普段通りに過ごしていたらあっという間に旅行開始となってしまった。５月２０日から、英国への入国カードが廃止され、日本人は自動ゲートでの顔認証による入国審査となり、今回は待ち時間も全くなくすんなりと入国できた。
ほぼ半年ぶりのロンドンは、着いた６日の夕刻こそ暖かな陽が降り注いでいたもののその後は強風と雨と晴れ間が目まぐるしく入れ替わる、肌寒い日が続いている。今日８日は女王の公式の誕生日祝賀行事、Trooping the Colours。参加している兵士たちの鮮やかな軍服にはまだら模様に日が射したり曇ったりと忙しなく、また、バッキンガム宮殿の上空を９機の空軍戦闘機が３色の飛行機雲をたなびかせて飛び去った後、強い風でそれももすぐにかき消されてしまった。この行事に出席していたメイ首相は、保守党党首辞任手続きを終えた後のせいか、吹っ切れたような晴れやかな表情を浮かべていたのが印象的(ただし後任の保守党党首が選出されるまでは首相の座にとどまるが）。
公式行事中、女王は矍鑠としていたが、年ごとにその背は丸みを帯び、そして体は小さくなっているように見えたのは錯覚だろうか。近衛騎兵連隊庭での公式行事がすべて終わった後、ひとり黄金色のきらびやかな馬車に揺られて宮殿に戻るその姿にはBrexitに揺れる老帝国の君主の哀愁が漂っているように思えてならなかった。
