ボストンマラソン爆破事件で明けた今年のボストン市民にとって、95年ぶりにレッドソックスが本拠地フェンウエイパーク球場でワールドシリーズを制覇するという幕切れはその傷をいやしてくれるものになったに違いない。ベーブルースの呪いが解けるまでに86年かかったこの球団は、その後の10年で3回のワールドシリーズ優勝達成と、今や常勝集団と言っても良いかもしれない。2012年の壊滅的な成績から、監督と多くの選手を入れ替え、戦力一新に成功したのは、高齢化に突き進んでいるヤンキースとは対照的である。
この中で、特に記憶に残るプレイヤーとしては、やはりオルテイーズを上げないわけにはいかない。大規模な入れ替えにもかかわらず一貫してボストンの中軸にあり、そして一時期の不振にもかかわらず、レッドソックスの屋台骨であリ続けたことで、その巨漢によるのみならず、実績でも存在感抜群だ。かつては不敵な表情とムラのある打撃で厄介なタイプだったが、いまや野球選手として円熟の域に達し、ボストンファンならずとも魅かれるものが出てきた。今日の試合のように3度も敬遠策をとられても淡々と出塁してゆく姿は若手や新加入のチームメイトの範にもなるものだろう。上原の好投も、試合終了直後にオルテイーズの担ぎ上げ(?)によるところが大きいのではないか。
NYに駐在していた時期、あくまでも短く刈り上げるヘアスタイルのヤンキースと比較すると、無精ひげに長髪という、何やら汗臭く感じてボストンのプレイヤーは生理的に苦手だったが、あるいは見慣れたせいなのか、今や同じようなあごひげ集団を見ているとむしろユーモラスに見えてくるから、自分の感性はいい加減なものだと思う。