数年ぶりの寒波が日本列島を覆っているようだ。寒い。今日着いた札幌は日中の最高気温が氷点下6度、ただしこれは明るい陽の差した時の気温で、乾いた風によって体感温度は多分氷点下10度以下になったと思う。夕方になって陽が沈んでからはから急速に気温が下がってきた。歩道には雪が積もっていてそれが凍っているから滑りやすい。歩行者は足元を確認しながら、慎重に歩を進めていた。
さすがに大晦日と言うことで交通量はそう多くはない。自分は勤務した場所と言うことでは東京とロンドン、ニューヨークしかないが、その中ではニューヨークが一番寒かった。ひと冬に何⽇か最高気温が氷点下16度くらい、最低気温は氷点下30度まで下がることがある。こういった時に高層ビルの立ち並ぶマンハッタンを歩くと風が文字通り肌を刺すようで、大袈裟でなく命の危険があるように思われた。札幌と同じく東西南北に碁盤の目になっているマンハッタンの街並みでは通りに沿って風が通りやすい。それにビルには冷たい風を凌げる身を隠すようなくぼみのようなものはない。多分凍死する人もいるのではないかと思うが、凍えて泣きそうになっている自分の横を大股で歩いてゆくのがニューヨーカーだ。多分、彼等の多くがそうであるが、大柄で良く太った人ならどうにか生きながらえることが出来るのだろう。こういった寒い日には、ニューヨークの名物ともいえる、道路から噴き上げる蒸気をそこかしこに見ることが出来る。この白い蒸気、ニューヨークは昔から地域暖房がすすんでいるが、配管の老朽化のため(管を傷めないため)蒸気を逃がさないといけないからだそうだ。
こういった寒さは嫌いではないが、どういう訳か、しばらく冷気の中にいるとそのうちいつも頭痛がしてくる。それでも新雪がつもった時など、あのどこか、まるで日本刀のような金属的な感じのする雪の匂いは感覚が研ぎ澄まされるようで昔から好きだ。
この時期、日本からロンドンに飛ぶ飛行機は、日本海を抜けるとシベリアの氷原の上をいつまでも飛んでゆくことになる。高度1万メートルから見下ろすシベリアの大地は白く固く凍っているのだろう。そこには、人を寄せ付けないような厳しさがある。道路のようなものは見えてもには人の営みの片鱗を見出すことは出来ない。ひょっとすると凍土の下には、太古からマンモスでも眠っているのではないか・・・