これまで出張や旅行などで月に平均2回程度は飛行機に乗っていると思うが、ヘリコプターに乗ったのは20年ほど前、北海にあるノルウエーの石油会社の海上掘削リグを見学したときのことだ。飛行機とは異なり頭上にプロペラを回転させるための猛烈なエンジン音、そのために乗客(?)は全員ヘッドフォンを装着する。離陸となると、一瞬後ろに引き戻され、そのまま前のめりになってから前に向かって進みだした。
ベルゲンというノルウエー西岸にある古くからの港町のヘリポートから小一時間、見事なフィヨルドを見ながら風の強い北海にポツンと浮かぶリグまで飛行した。おぼろげな記憶だが、ノルウエーの神話に出てくるトロルの名を冠した作業所だったと思う。ヘリコプターから見下ろすとリグのてっぺんに心細いくらい小さなヘリポートが。数日前にヘリコプターが着陸に失敗して海中に転落したという話を聞いていたので不安が募ったが、どうにか無事着陸。その後階段だらけの大きな工場のような掘削リグをひとわたり見物した。ここの作業員は3か月交代、この間、禁煙(当然火気厳禁)、禁酒(作業員同士のトラブル回避)なので相当なストレスを感じるのだろうと思われた。厳しい職場環境であるがそれだけに待遇(給料)は破格。陸に戻れる日を指折り数えているような感じがひしひしと伝わってきた。たったの数時間のことなのに、同じ航路で陸上に戻った時にはほっとしたのだから、その時の経験がいかに非日常的なものだったかということだ。
今日、AFP日本語版の記事にノルウエイでヘリコプターが海上に墜落したと。状況から推察すると自分が乗ったヘリコプターと同じもののようだ。まだこの時期は北海の気候は厳しいのだろう。単に他人事とは思えず、ふた昔前のことを思い出してしまった。こうしていまでも命を懸けて働いている人がいる。