回顧と展望

思いついたことや趣味の写真などを備忘録風に

「ノートル=ダム・ド・パリ」を読んで

2016年12月28日 19時39分50秒 | 日記

今年5月、岩波文庫からユゴーの「ノートル=ダム・ド・パリ」(辻昶、松下和則訳)の改版が出版されたのでアマゾンで購入した。読みかけの本がいくつかあったのでしばらく書棚に置いていたが、今月に入って読み始めて今日読了。主要な登場人物がそれぞれに壮絶な死に方をするというのは、ユゴーらしいといえばその通りだ。

原作を離れて映画やミュージカル、あるいは子供向けにストーリーが変えられるというのはよくあるケースだが、この長編小説も善人と悪人とが入れ替わったり、まったく異なった結末、すなわちハッピー・エンドになったりしているものが多くある。しかし、この劇的な展開はどのような亜流のストーリーも超えることができない。それどころか、原作の品位を貶めているともいえる。原作者のストーリーを勝手に変更するというのは実質的に剽窃あるいは盗作とさえ言えるだろう。

中世の化身のようなノートル=ダム寺院に向けられるユゴーの憧れに満ちた眼差しは、レ・ミゼラブルにあるパリの地下水道に対する偏執なまでの詳細な描写と通じるものがある。執筆中に7月革命に遭遇するなど、成立過程のフランスの歴史にも興味がつきない。一方で、聖職者による性犯罪が多発している昨今の現状を見れば、ここで描かれている司教補佐の身勝手な肉欲の深さはきわめて今日的でもある。

エスメラルダの愚かな純情が最後の最後に彼女の死を招くし、フロロの理不尽極まりない偏狭な嫉妬が自身とエスメラルダの破滅を招く。そんな中でカジモドの一途で献身的な愛情だけが救いだ。カジモドは白骨となってエスメラルダへの愛が成就し、それが引き離されるときにはこなごなに砕け散ってしまったというこの小説の最後はいかにも切ない。

人間の業の深さを徹底的に追求しているこの長編小説は河出書房での初出が66年前だか、改版を重ねて古さをまったく感じさせない秀逸な翻訳のおかげで一気に読み切ることができる。

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ロシアの果てしない陰謀?

2016年12月14日 18時55分44秒 | 日記

米CIAは11月の大統領選挙にロシアがサイバー攻撃によってトランプ勝利に影響を与えようとしたとしているが、英国インデペンデント紙によれば英国労働党議員ベン・ブラッドショーは、英国のEU離脱交渉をめぐる国民投票の際にも、EUと英国の分断・弱体化を図るためにロシアからサイバーがなされた蓋然性が極めて高いと発言している。その手法は、サイバー攻撃によって入手した情報を、肩入れする一方に有利になるようウイーキー・リークス等に提供するというもの。既にフランス大統領選挙についても、極右のル・ペン党首を支援し、EUおよびフランス世論の分断を画策しているだろう、というのが件の議員の意見だ。さらに、欧州に押し寄せているアフリカからの難民の背後にも西側を混乱させるロシアの影があるという。

アレッポをめぐってアサドを支援し、軍事的勝利を手に入れつつあるロシア・プーチンだが、サイバー空間でも勝利を手にしつつある、というのが彼の主張。

いずれも確たる証拠はなく、できすぎた話のようにも思えるが、実はこういうことが言われることそのことがロシアの陰謀なのかもしれない。明日からの首脳会談、安倍首相にとって実に手ごわい相手だ。

ロンドン、オランダ公園京都庭園のクジャク。

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英国のいま

2016年12月13日 15時18分06秒 | 日記

EUを離脱するという国民投票の結果を受けてポンドが急落したのはつい半年ほど前だが、11月初めを底にしてポンドの相場はじりじりと回復してきている。たしかにポンド安のため消費者物価がいくらか上昇したものの、実体経済にはさほど悪影響は出ていない。ポンド安で殺到する外国人観光客と不動産に対する海外からの旺盛な投資によって一部の企業では好調さを維持しているくらいだ。ロンドンの街を歩いていても不況の影は見当たらない。

EUとの離脱交渉はまだ始まっていないし、EUとの人的な交流にも変わったところはない。嵐の前の静けさというのか、あるいは、国民投票時の英国独立論のような夢物語は骨抜きになっていくのか。それ以上に、もし、次のフランス大統領選挙でル・ペンが勝ったりしたらEUそのものが崩壊し、その結果として英国の「EU離脱」そのものが消し飛んでしまう、といったことも無くはない。急ぐ理由はない、ということだろう。

狡猾な英国はどのようにしぶとく生き残っていくのか。

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