大統領権限を巡って政治的に不安定なエジプトで、今、燃料と小麦の欠乏が深刻化しつつある。IMFからの支援も条件(引き締め政策の実行ー増税および燃料への政府補助金削減)に応じないモルシ政権により宙に浮いている。それでなくてもデモ隊がカイロ中心部で気勢を上げているときに、国民に不人気な政策の実行は困難であり、モルシ政権は窮状に目をつむって時間稼ぎをしているようだ。このまま燃料不足が続くと、来月からの小麦の収穫作業にも大きな影響があり、また、外貨不足による小麦の輸入が出来なくなることとあいまって、食糧不足による反政府運動が活発化しかねない。すでに、ガソリンは末端には行き届かなくなっているし、輸送途中の略奪や横流しが横行している。また、エジプト産の小麦は品質が低く、輸入小麦との調合がなされなければ食料としての品質に耐ええない。
モルシ政権はもはや、現状の危機を旧ムバラク政権の腐敗や既得権益層による仕業・負の遺産、という言い訳を続けることは許されないだろう。外貨準備高は急減していて、外貨が枯渇するのも時間の問題だ。もはや事態は一刻の猶予を許されないものと言わざるを得ない。安倍政権による対中包囲網の結成も結構だが、アフリカへの日本の存在感を向上させるために、今、日本がエジプトに何ができるのか、アフリカ戦略の一環として至急検討されなければならない。