少年カメラ・クラブ

子供心を失わない大人であり続けたいと思います。

プルキニエ効果

2012-12-24 17:25:28 | その他
この聞き慣れない効果のことを知っている人はそれほど多くないかもしれない。プルキニエ効果というのは、人間の知覚に関する。特に視覚に関する効果である。通常の明るさのもとでは人間の眼というのは、だいたい緑色の波長の光に対して最高の感度を有する。しかし、周囲が暗くなってくると、光に対する感度が青い方に(波長が短い方向)シフトする、これがプルキニエ効果だ。もっとわかりやすく言うと、明るいところでは、赤っぽい色の方が目立って見えた物が、暗いところへいくと青っぽい色の方がよく見えるということになる。日本の救急車は赤いサイレンを回しているが、海外の救急車の色が青っぽかったりするのは、この効果を考慮したものと言う話もある。

さて、明るいところで赤いものと青いものを並べてみたとしよう。この時赤い方がちょっと明るいように見えたとする。ここで、だんだん周りを暗くしていくと、次第に青い色の方が明るいように見えてくるかもしれない。それは上に書いたプルキニエ効果により人の感覚が周囲の明るさによって変化したことによる。実際には赤と青の色の明るさは少しも変わってはいない。

でも、その時あなたは、そう思うだろうか?多分違うだろう。知覚したとおりに赤の色がだんだん暗くなって逆に青が明るくなったと思うに違いない。当たり前だ。そう見えるんだから。いくら他の人をたくさん連れてきて、同じ現象を見せても答えは変わらないに違いない。人間にはみんなプルキニエ効果を生むような受容器官が埋め込まれている。

こういうことって、視覚だけの事ではないのだろうと思う。政治や社会現象などにおいても、同じようなことは多分良く起こっているのではないだろうか。目の前に起こっていることが、果たして“事実”なのか、それとも受け取り側の“バイアス”のせいなのか?それはちょっとやそっとでは区別はつかない。アンケートなんかとっても、その結果の吟味は微妙だ。少なくともそれが“事実”ではないと思った方が無難だろう。

もともとのプルキニエ現象を発見したプルキニエ博士は、どうやってこの生理学上の発見をしたのだろか。19世紀の科学者だから、今のような高度な光学センサーなどあるはずもない。私は、多分、目の前にある明るさに関する事実を否定することから始まったのだと思う。明るさが違って見えるようになることは事実ではなく、知覚の何らかの傾向によるものだと仮説を立てたところから答えは見つかったのではないだろうか。

目の前にあることを否定してみる。そこから見えてくることもあるような気がする。