最近ちょっとスケッチに凝っていて、休みのたびに自転車で出かけては人や物をスケッチ している。多摩川の河原から少年野球の子供の絵を描いてみたり、お寺の境内を眺めては 鉛筆で素描してみたりと対象はいろいろだ。巷には、そうしたスケッチを始めたばかりの 人のためのノウハウ本があふれていて、私も何冊か買って試してみた。自分の気持ちに しっくり来る本もあれば、なんかいまひとつピンとこないものもある。
さてその中で、ちょっと面白い本に出会った。「脳の右側で描け」(Betty Edwards著)と いう本だ。2400円もするちょっと高めの本だったので、買うときに少し躊躇したのだ が、なかなか面白い本だ。この本によると、絵をかけない人というのは、脳の左側が常識 にとらわれて絵を描いてしまうので、目の前のありのままの姿をかけないことが一番の問 題だと指摘する。そして、その左脳の呪縛から解き放たれるために、左脳が嫌がるような 「面倒くさいこと」や「意味の無いこと」を意識的にやるのが効果的なのだという。例えば、 写真をさかさまにして模写をするとしよう。普通の上下が正しい写真には、車やビルなど の「意味のあるもの」が描かれているから、それらを左脳は容易に理解して、
「それは車ね!」 「こっちはビルですね!」
という具合に、どんどんシンボル化したイメージをステレオタイプ的に描いていってしま うのだという。ところが、写真がひっくり返った瞬間に、左脳にとっては、そこに写って いるものは「面倒くさい」「意味の無い」線の集まりとしてしか認識されないゴミとなってし まう。結果、左脳は、
「こんな意味の無い物を描くなんてナンセスだ!」
ということでストライキに入ってしまうらしい。こうなると仕方が無いので我らが右脳が 登場してスケッチの仕事を続けることができるようになる。右脳は直感的で非言語的なの で、そこにある構造がどんな意味を持っているかなど、知ったことではない。とにかく目 に前にある形を写し取っていくだけである。それこそが、著者が目指す絵を描くというプ ロセスなのだ。
左脳にストライキをやってもらうもう一つの方法として紹介されているのが、背景に注目 するというやり方だ。例えばイスを斜め上から見るとき、実際の4本の足の見え方は、結 構複雑な構図になっているはずである。しかし、我々の左脳は、「イスというのは同じ長 さの細い4本の足が、正方形の位置に並んでいる。」という先入観を捨て去ることができ ず、出来上がったスケッチは実際の見え方とは異なったものになってしまいがちだ。こう いう時に使える方法が背景に注目することだという。つまり、前景(注意の対象)には、 モノとして意味がついているが、背景は前景をくりぬいた後のゴミであるので、それ自身 には意味がない。意味が無い物を描くこと左脳が拒否するという先ほどの習性を利用し て、そこにあるがままを右脳が描いてくれるという作戦だ。これも結構うまく行く。
長々とスケッチのことを書いてきたが、こういう方法論ってもしかするとスケッチだけの 話ではないような気がし始めた。例えば、ある市場のマーケット調査をしようとしたとし よう。注目している製品や消費行動などにマーケッターは注目する。当たり前である。で も、そこには調査をする人の左脳的なイメージが強く焼きついてしまっている。ずっとそ の商品を売ろうと思って、いろいろ考えてきたのだから当然だろう。でも、それはもしか すると左脳が描いたスケッチと同じようなものなのかもしれないではないだろうか。本当 の市場の動向ではなく、こうあるべきという左脳の作り出したイメージを書き出すだけに なりはしないだろうか。そんな時に背景に注目してみるのも一手かもしれない。自分たち が見ていない市場を注視してみるのである。自分たちに関係ない市場に注目することな ど、無駄以外の何物でもないはずである。その無駄であるという認識こそが、正しいマー ケティングのためには重要だとしたらどうだろう。プラントを売ろうと思って、食品市場 を調査する、あるいは医薬品市場を調査する。こんなことをやったら頭がどうかしたのか といわれそうだけど、右脳式スケッチと同じ理屈なら、それが正しいマーケティングへの 近道になっているはずだ。ちょっと仕事と関係ないことを調べてみたくなってきたなあ。
さてその中で、ちょっと面白い本に出会った。「脳の右側で描け」(Betty Edwards著)と いう本だ。2400円もするちょっと高めの本だったので、買うときに少し躊躇したのだ が、なかなか面白い本だ。この本によると、絵をかけない人というのは、脳の左側が常識 にとらわれて絵を描いてしまうので、目の前のありのままの姿をかけないことが一番の問 題だと指摘する。そして、その左脳の呪縛から解き放たれるために、左脳が嫌がるような 「面倒くさいこと」や「意味の無いこと」を意識的にやるのが効果的なのだという。例えば、 写真をさかさまにして模写をするとしよう。普通の上下が正しい写真には、車やビルなど の「意味のあるもの」が描かれているから、それらを左脳は容易に理解して、
「それは車ね!」 「こっちはビルですね!」
という具合に、どんどんシンボル化したイメージをステレオタイプ的に描いていってしま うのだという。ところが、写真がひっくり返った瞬間に、左脳にとっては、そこに写って いるものは「面倒くさい」「意味の無い」線の集まりとしてしか認識されないゴミとなってし まう。結果、左脳は、
「こんな意味の無い物を描くなんてナンセスだ!」
ということでストライキに入ってしまうらしい。こうなると仕方が無いので我らが右脳が 登場してスケッチの仕事を続けることができるようになる。右脳は直感的で非言語的なの で、そこにある構造がどんな意味を持っているかなど、知ったことではない。とにかく目 に前にある形を写し取っていくだけである。それこそが、著者が目指す絵を描くというプ ロセスなのだ。
左脳にストライキをやってもらうもう一つの方法として紹介されているのが、背景に注目 するというやり方だ。例えばイスを斜め上から見るとき、実際の4本の足の見え方は、結 構複雑な構図になっているはずである。しかし、我々の左脳は、「イスというのは同じ長 さの細い4本の足が、正方形の位置に並んでいる。」という先入観を捨て去ることができ ず、出来上がったスケッチは実際の見え方とは異なったものになってしまいがちだ。こう いう時に使える方法が背景に注目することだという。つまり、前景(注意の対象)には、 モノとして意味がついているが、背景は前景をくりぬいた後のゴミであるので、それ自身 には意味がない。意味が無い物を描くこと左脳が拒否するという先ほどの習性を利用し て、そこにあるがままを右脳が描いてくれるという作戦だ。これも結構うまく行く。
長々とスケッチのことを書いてきたが、こういう方法論ってもしかするとスケッチだけの 話ではないような気がし始めた。例えば、ある市場のマーケット調査をしようとしたとし よう。注目している製品や消費行動などにマーケッターは注目する。当たり前である。で も、そこには調査をする人の左脳的なイメージが強く焼きついてしまっている。ずっとそ の商品を売ろうと思って、いろいろ考えてきたのだから当然だろう。でも、それはもしか すると左脳が描いたスケッチと同じようなものなのかもしれないではないだろうか。本当 の市場の動向ではなく、こうあるべきという左脳の作り出したイメージを書き出すだけに なりはしないだろうか。そんな時に背景に注目してみるのも一手かもしれない。自分たち が見ていない市場を注視してみるのである。自分たちに関係ない市場に注目することな ど、無駄以外の何物でもないはずである。その無駄であるという認識こそが、正しいマー ケティングのためには重要だとしたらどうだろう。プラントを売ろうと思って、食品市場 を調査する、あるいは医薬品市場を調査する。こんなことをやったら頭がどうかしたのか といわれそうだけど、右脳式スケッチと同じ理屈なら、それが正しいマーケティングへの 近道になっているはずだ。ちょっと仕事と関係ないことを調べてみたくなってきたなあ。