こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

2016年08月01日 01時25分57秒 | 文芸
Y養蜂場のミツバチ文庫プレゼント企画に応募していたら、当選の案内が来た。母校T小学校の図書室へ全9冊の本が寄贈される。
これで2度目だ。
 何度でもいい。同じ企画があれば進んで応募する。後輩たちに本をできるだけ多く読んでほしいと願うからだ。本を読まなくなった社会風潮にすこしでも抵抗したい。
 かくいう私は、小学校図書室の本と出会えたおかげで、まさにつぶれるところを救われたのである。
 友達も先生とも常に距離を置いた小学生。それがわたし。人見知りが激しすぎて、人と話すのがほとんどできない性格。いつも教室の片隅にポツーンとひとりぼっちだった。体育の授業で、緊張のあまり、何もできずに棒立ちとなる、ますます孤独な世界に閉じこもるようになった。
 そのまま同じ状況が続いていれば、登校拒否とか、ひどければ自殺も考えられた。
 ある日。トイレに行った帰りに、図書室の前を通りかかった。戸が半分開けっ放しなので、ちらっと横目で窺った。頭にキーン!と何かがひらめいた。所狭しと並ぶ本が呼んだ。
偶然誰もいなかった。本棚に手を伸ばした。
 座ってページを開く。扉絵が頬笑んだ。ページを繰る。誰も邪魔しない。本は私を無条件で迎え入れてくれた。
 その日から、授業以外の時間は図書室に私の姿はあった。手当たり次第に本を読んだ。驚き、感動、観劇、怒り、喜び……本の世界はハラハラドキドキの連続だった。
 読書は私の状況を変えた。国語の時間に本を読まされたとき、自分でも驚くほど上手に読めた。先生に生まれて初めて褒められた。友達の私に対する態度が一変する。
 図書室の本を根こそぎ読んだ気がする。それが、いまのわたしの人格形成に重要な役回りを担ってくれたのは確かだった。
 本は普通の生活が送れなかったわたしを、普通どころか、もっと高い位置まで引き上げてくれたのだ。
 本の価値を身をもって知ったからこそ、母校に学ぶ小さな後輩たちに、いろんな本を提供したいと思う。ささやかな思いを、彼らに届くことを念じながら。
  
コメント
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