新しいブログがかけそうにないので、30代のころに書いた小説をコピーしました。
末娘の梨恵が通う身障児通園施設『タンポポ』が入っている総合福祉施設『市民ふれあいセンター』の恒例行事『ふれあい祭り』の日だった。
気の進まぬ妻をいつもと同じように根気よく促して家を出た。傍目にも妻の疲れははっきりとしている。梨恵は三歳。まだ足元が覚束ない。同い年の幼児と比べれば、少し劣っている。それでも誕生日を過ぎても首の座らなかったことを思えば、目を見張る成長ぶりだ。
普通の幼児でもかなり手のかかる時期である。上の五歳になる茉莉の育児と重なって、妻の負担は相当なものだ。妻に負担を強いている家事育児を出来る限り補うつもりでいるが、なかなか手が回らない。
夕方から深夜。残業をこなして早朝まで十二時間の勤務だ。帰宅すると、もうクタクタだし、とにかく眠い。気持ちとは裏腹に妻の手助けなど、そう簡単ではない。結局、自分の食事や身の回りの世話まで妻に押し付けてしまっている。
妻が茉莉の手を引き、梨恵は私が胸に抱いた。家族そろって外出する時は、必ずそうした。妻に申し訳ないという思いが、そうさせる。少しでも妻の負担を軽くしてやりたかった。どれ程の助けになるかは分からなくても、そうしなければ自分に納得できなかった。
カラッと晴れた秋の空は高い。祭り日和そのものだ。子供たちも嬉しさを隠さない。
「ええ天気やな。雨でのうてよかったわ」
「そうやね」
とりとめのない会話だが、妻の反応はそっけない。そっと盗み見る妻の顔には、やはりやつれが目立つ。見ているのが辛い。
初めて出会って以来、恋愛時代、新婚時代、長女の誕生と、妻は本当に明るくお喋りだった。梨恵の誕生も夫婦で喜び合ったものだ。 ところがしばらくして、梨恵の首がいつまでたっても座らぬのに気付いた。異常を感じてすぐ病院に走った。診断は発達障害だった。通院が続くと妻はしだいに寡黙になった。
毎日通園に車を走らせる道だ。ただしハンドルを握るのは、今日は妻ではなかった。車を飛ばすと、梨恵が奇声を上げる。喜んでいるのだ。勿論姉の茉莉も負けてはいない。
「そんなに嬉しいか?」
「嬉しいよね。茉莉も梨恵も、パパと一緒なんて滅多にないもんね」
妻の声に明るさがある。いつもの負担の拘束から少しは解放されたせいだろう。(よかった……)明るい妻を見ると顔が自然に綻ぶ。
こんな時間には珍しく何度も短い渋滞に巻き込まれた。秋祭りである。いくら天下の往来といえども、「そこのけそこのけお車が通る」は通用しない。今日ばかりは地域の氏子らが酔行しながら担ぐ祭り神輿や太鼓屋台の練り歩きに道を譲らざるを得ない。
交差点でひとしきり揺すり上げる屋台と弾む太鼓の饗宴に目を奪われる。振る舞い酒に顔を真っ赤にした男衆の掛け声が辺りを席巻する
「お父さん、凄い、凄いね」助手席の茉莉は興奮して身を前に乗り出した。目を真ん丸に見開き小鼻をいっぱいに膨らませる。娘の素朴な反応が羨ましい。フッと肩の力が抜けた。バックミラーに目を移すと、いかにも疲れた風に生気を失った顔つきの妻と、その膝に抱かれてぐったりしている梨恵の姿があった。出かかった溜息をグッと呑み込んだ。
少し離れた駐車場に車を止めると、会場に向かった。雨天なら屋内の体育館になるところだった。やはり祭りごとはスカーッと晴れ渡った秋空のもとがいい。妻だって、屋内に閉じ込められて息を詰めているより、自由な雰囲気を満喫できる園庭の方がいいに決まっている。
『ふれあい祭り』の会場は、梨恵が通う施設の園庭と隣接の駐車場を解放しての特設だった。
『市民ふれあいセンター』は身障児を専門的に保育する園と、成人身障者の通所施設。他に小児科クリニックが併設されている。県下でも有数の施設である。オープンした年に市の職員に採用されて、開設記念イベントの応援に駆り出された。「なんで、俺たちなんや……?」と同期の職員と愚痴り合ったのを思い出す。
後日、自分の娘が世話になるとは予想だにしなかった。他人事だったあの当時は総合福祉施設の必要性をツユほども考えなかった。思い出すと、いつも罪悪感に囚われる。市役所は三年勤めて退職した。一番の理由は、梨恵らの将来を考えて少しでも蓄えをしたかったからだ。民間の食品会社を選んだのは、給料の額がかなり魅力的に思えたからである。
会場は予想以上の賑わいだった。たこ焼き、焼きそば、風船釣り……ズラーッと並んだ屋台に家族が群がっている。既に施設がある地区の神輿が広場の隅に待機している。実は『ふれあい祭り』は施設が建てられた地域の秋祭りと連動している。もうすぐ四基の祭り屋台がやって来て広場で練り合わせを繰り広げる予定だ。何と言っても今日の目玉イベントなのは間違いない。
身障者の通所施設という風聞をを問題視した地域住民の一部に反対があった。官民の協力でなんとか解決して設立された『総合福祉施設ふれあい市民センター』だった。開所してからも続く地区とのぎくしゃくした関係を少しでも改善しようと始まったのが、この『ふれあい祭り』なのだ。身障者と健常者とのふれ合いを通じた地域社会への溶け込みを目指している。秋祭りとの連動が一番の早道と考えられたのだろう。その成果はかなり上がっている。
「おはようございます!やあ、来たわね、梨恵ちゃん。お・は・よ・う!今日は楽しいことがいっぱいあるよ」
目敏く駆け付けた園長先生だった。しゃがみ込んで素早く梨恵の手を取ると、笑顔と大きな身振りと表情で、ジーッと目を見つめて優しく語り掛けた。
「園長先生、いつもお世話になっています」
妻は反射的に口を開き、ペコリと頭を下げた。慌てて妻に倣った。
園長先生は車いすを手放せぬ弟と二人暮らしだと聞いている。年齢にはそぐわない頭の白さと深く刻まれた眉間のしわが、重ねてきたであろう苦労をしのばせる。彼女が園児の親のしんどさと懊悩を誰よりも理解しているのは確かだった。
「ホットケーキもあるよ。梨恵ちゃんの大好きなジュースもあるんだ。お母さんとお父さんに、これっくらいいっぱい買ってもらわなきゃあね。いい子してるんだから、梨恵ちゃんも、茉莉お姉ちゃんもね」
園長先生が胸にいっぱいの好物を抱え込む手振り身振りの表現を面白がって茉莉は笑った。梨恵はただザワザワする周囲をキョロキョロと見回し落ち着かない。
「さあ梨恵ちゃん、これくらいでいいよね。でもおなか痛くなっても知らないぞ。おいしかったら、しょうがないか」
園長先生は梨恵の両脇に手を添えるとくすぐった。妻が吹き出した。園長先生の剽軽な顔に堪らなくなったのだ。暫らく見ていない妻の笑い顔である。園長先生の底抜けの明るさは、遅まきながら梨恵にも伝わったようだ。よくよく注意していないと見逃してしまう、小さな小さな笑いが梨恵の口の端にあった。茉莉の方は可愛くはにかんで父親の尻にしがみついた。
「さあ何を食べようか?」
「茉莉はアイスクリームがいいの。早く」
茉莉は手を引っ張った。
さりげなく妻の様子を窺うと、相好を崩している。そして何度も頷いた。
梨恵の障害がはっきりした頃には、夫婦の心労はピークだった。心にゆとりは皆無といっていい。いらいらする日々に、夫婦の間に溝が生まれた。梨恵の障害を、酷いことに無理やりお互いのせいにして罵り合うようになった。それが唯一の逃げ道だった。何も考えられない梨恵を前に身勝手な感情をぶつけ合う無様な夫婦に成り下がったのだ。ノイローゼ寸前まで来た妻はついに離婚まで口にし始めた。
そんな夫婦の危機を救ったのは梨恵だった。自力で首を動かせずに横になったままの梨恵の手が宙に浮いたのは、夫婦の諍いの最中だった。まず妻が目に止めた。
「あんた、梨恵が……!」
梨恵の手はゆらゆらと揺れている。思わずその手を握り締めた。少しでも力が加わると潰れかねない。大事な大事な生命の息吹きがそこにあった。妻の手が優しく覆った。
梨恵の親は紛れもなく自分たちである。この娘を守れるのは自分たちしかいなかった。そんな単純なことを棚上げにして不毛の口喧嘩に走っている。自分たちの身勝手極まる醜い姿を梨恵は気付かせてくれたのだ。
その日から、妻も私も必要以上の会話を避けた。余分な会話は二人を傷つけるだけなのだ。梨恵と茉莉を話題にしていれば、夫婦の溝はこれ以上深くならないだろう。かなり辛い選択だったが、おかげでこれまで何とか乗り切って来れた。
テントを連ねた模擬店の屋台は盛況だった。焼きそばにおでん、フランクフルトにホットケーキ……と、施設の職員たちと利用者の協力で手描きされた画用紙の看板が吊られている。それぞれが手分けして調理と販売を担当していた。
「茉莉は何がいい?梨恵はアイスクリームか、やっぱり?」
私と妻に手を引かれた茉莉はキョロキョロしている。美味しそうな匂いと香り。ジュージューと焼かれる鉄板が奏でる音は彼女を混乱させる。
末娘の梨恵が通う身障児通園施設『タンポポ』が入っている総合福祉施設『市民ふれあいセンター』の恒例行事『ふれあい祭り』の日だった。
気の進まぬ妻をいつもと同じように根気よく促して家を出た。傍目にも妻の疲れははっきりとしている。梨恵は三歳。まだ足元が覚束ない。同い年の幼児と比べれば、少し劣っている。それでも誕生日を過ぎても首の座らなかったことを思えば、目を見張る成長ぶりだ。
普通の幼児でもかなり手のかかる時期である。上の五歳になる茉莉の育児と重なって、妻の負担は相当なものだ。妻に負担を強いている家事育児を出来る限り補うつもりでいるが、なかなか手が回らない。
夕方から深夜。残業をこなして早朝まで十二時間の勤務だ。帰宅すると、もうクタクタだし、とにかく眠い。気持ちとは裏腹に妻の手助けなど、そう簡単ではない。結局、自分の食事や身の回りの世話まで妻に押し付けてしまっている。
妻が茉莉の手を引き、梨恵は私が胸に抱いた。家族そろって外出する時は、必ずそうした。妻に申し訳ないという思いが、そうさせる。少しでも妻の負担を軽くしてやりたかった。どれ程の助けになるかは分からなくても、そうしなければ自分に納得できなかった。
カラッと晴れた秋の空は高い。祭り日和そのものだ。子供たちも嬉しさを隠さない。
「ええ天気やな。雨でのうてよかったわ」
「そうやね」
とりとめのない会話だが、妻の反応はそっけない。そっと盗み見る妻の顔には、やはりやつれが目立つ。見ているのが辛い。
初めて出会って以来、恋愛時代、新婚時代、長女の誕生と、妻は本当に明るくお喋りだった。梨恵の誕生も夫婦で喜び合ったものだ。 ところがしばらくして、梨恵の首がいつまでたっても座らぬのに気付いた。異常を感じてすぐ病院に走った。診断は発達障害だった。通院が続くと妻はしだいに寡黙になった。
毎日通園に車を走らせる道だ。ただしハンドルを握るのは、今日は妻ではなかった。車を飛ばすと、梨恵が奇声を上げる。喜んでいるのだ。勿論姉の茉莉も負けてはいない。
「そんなに嬉しいか?」
「嬉しいよね。茉莉も梨恵も、パパと一緒なんて滅多にないもんね」
妻の声に明るさがある。いつもの負担の拘束から少しは解放されたせいだろう。(よかった……)明るい妻を見ると顔が自然に綻ぶ。
こんな時間には珍しく何度も短い渋滞に巻き込まれた。秋祭りである。いくら天下の往来といえども、「そこのけそこのけお車が通る」は通用しない。今日ばかりは地域の氏子らが酔行しながら担ぐ祭り神輿や太鼓屋台の練り歩きに道を譲らざるを得ない。
交差点でひとしきり揺すり上げる屋台と弾む太鼓の饗宴に目を奪われる。振る舞い酒に顔を真っ赤にした男衆の掛け声が辺りを席巻する
「お父さん、凄い、凄いね」助手席の茉莉は興奮して身を前に乗り出した。目を真ん丸に見開き小鼻をいっぱいに膨らませる。娘の素朴な反応が羨ましい。フッと肩の力が抜けた。バックミラーに目を移すと、いかにも疲れた風に生気を失った顔つきの妻と、その膝に抱かれてぐったりしている梨恵の姿があった。出かかった溜息をグッと呑み込んだ。
少し離れた駐車場に車を止めると、会場に向かった。雨天なら屋内の体育館になるところだった。やはり祭りごとはスカーッと晴れ渡った秋空のもとがいい。妻だって、屋内に閉じ込められて息を詰めているより、自由な雰囲気を満喫できる園庭の方がいいに決まっている。
『ふれあい祭り』の会場は、梨恵が通う施設の園庭と隣接の駐車場を解放しての特設だった。
『市民ふれあいセンター』は身障児を専門的に保育する園と、成人身障者の通所施設。他に小児科クリニックが併設されている。県下でも有数の施設である。オープンした年に市の職員に採用されて、開設記念イベントの応援に駆り出された。「なんで、俺たちなんや……?」と同期の職員と愚痴り合ったのを思い出す。
後日、自分の娘が世話になるとは予想だにしなかった。他人事だったあの当時は総合福祉施設の必要性をツユほども考えなかった。思い出すと、いつも罪悪感に囚われる。市役所は三年勤めて退職した。一番の理由は、梨恵らの将来を考えて少しでも蓄えをしたかったからだ。民間の食品会社を選んだのは、給料の額がかなり魅力的に思えたからである。
会場は予想以上の賑わいだった。たこ焼き、焼きそば、風船釣り……ズラーッと並んだ屋台に家族が群がっている。既に施設がある地区の神輿が広場の隅に待機している。実は『ふれあい祭り』は施設が建てられた地域の秋祭りと連動している。もうすぐ四基の祭り屋台がやって来て広場で練り合わせを繰り広げる予定だ。何と言っても今日の目玉イベントなのは間違いない。
身障者の通所施設という風聞をを問題視した地域住民の一部に反対があった。官民の協力でなんとか解決して設立された『総合福祉施設ふれあい市民センター』だった。開所してからも続く地区とのぎくしゃくした関係を少しでも改善しようと始まったのが、この『ふれあい祭り』なのだ。身障者と健常者とのふれ合いを通じた地域社会への溶け込みを目指している。秋祭りとの連動が一番の早道と考えられたのだろう。その成果はかなり上がっている。
「おはようございます!やあ、来たわね、梨恵ちゃん。お・は・よ・う!今日は楽しいことがいっぱいあるよ」
目敏く駆け付けた園長先生だった。しゃがみ込んで素早く梨恵の手を取ると、笑顔と大きな身振りと表情で、ジーッと目を見つめて優しく語り掛けた。
「園長先生、いつもお世話になっています」
妻は反射的に口を開き、ペコリと頭を下げた。慌てて妻に倣った。
園長先生は車いすを手放せぬ弟と二人暮らしだと聞いている。年齢にはそぐわない頭の白さと深く刻まれた眉間のしわが、重ねてきたであろう苦労をしのばせる。彼女が園児の親のしんどさと懊悩を誰よりも理解しているのは確かだった。
「ホットケーキもあるよ。梨恵ちゃんの大好きなジュースもあるんだ。お母さんとお父さんに、これっくらいいっぱい買ってもらわなきゃあね。いい子してるんだから、梨恵ちゃんも、茉莉お姉ちゃんもね」
園長先生が胸にいっぱいの好物を抱え込む手振り身振りの表現を面白がって茉莉は笑った。梨恵はただザワザワする周囲をキョロキョロと見回し落ち着かない。
「さあ梨恵ちゃん、これくらいでいいよね。でもおなか痛くなっても知らないぞ。おいしかったら、しょうがないか」
園長先生は梨恵の両脇に手を添えるとくすぐった。妻が吹き出した。園長先生の剽軽な顔に堪らなくなったのだ。暫らく見ていない妻の笑い顔である。園長先生の底抜けの明るさは、遅まきながら梨恵にも伝わったようだ。よくよく注意していないと見逃してしまう、小さな小さな笑いが梨恵の口の端にあった。茉莉の方は可愛くはにかんで父親の尻にしがみついた。
「さあ何を食べようか?」
「茉莉はアイスクリームがいいの。早く」
茉莉は手を引っ張った。
さりげなく妻の様子を窺うと、相好を崩している。そして何度も頷いた。
梨恵の障害がはっきりした頃には、夫婦の心労はピークだった。心にゆとりは皆無といっていい。いらいらする日々に、夫婦の間に溝が生まれた。梨恵の障害を、酷いことに無理やりお互いのせいにして罵り合うようになった。それが唯一の逃げ道だった。何も考えられない梨恵を前に身勝手な感情をぶつけ合う無様な夫婦に成り下がったのだ。ノイローゼ寸前まで来た妻はついに離婚まで口にし始めた。
そんな夫婦の危機を救ったのは梨恵だった。自力で首を動かせずに横になったままの梨恵の手が宙に浮いたのは、夫婦の諍いの最中だった。まず妻が目に止めた。
「あんた、梨恵が……!」
梨恵の手はゆらゆらと揺れている。思わずその手を握り締めた。少しでも力が加わると潰れかねない。大事な大事な生命の息吹きがそこにあった。妻の手が優しく覆った。
梨恵の親は紛れもなく自分たちである。この娘を守れるのは自分たちしかいなかった。そんな単純なことを棚上げにして不毛の口喧嘩に走っている。自分たちの身勝手極まる醜い姿を梨恵は気付かせてくれたのだ。
その日から、妻も私も必要以上の会話を避けた。余分な会話は二人を傷つけるだけなのだ。梨恵と茉莉を話題にしていれば、夫婦の溝はこれ以上深くならないだろう。かなり辛い選択だったが、おかげでこれまで何とか乗り切って来れた。
テントを連ねた模擬店の屋台は盛況だった。焼きそばにおでん、フランクフルトにホットケーキ……と、施設の職員たちと利用者の協力で手描きされた画用紙の看板が吊られている。それぞれが手分けして調理と販売を担当していた。
「茉莉は何がいい?梨恵はアイスクリームか、やっぱり?」
私と妻に手を引かれた茉莉はキョロキョロしている。美味しそうな匂いと香り。ジュージューと焼かれる鉄板が奏でる音は彼女を混乱させる。