難聴者の生活

難聴者の日々の生活から、人工内耳など難聴者のコミュニケーション、聴覚障害者の制度改革について語る。

デジタル放送時代の字幕放送

2006年12月30日 15時44分14秒 | バリアフリー

字幕放送について現在の地上波デジタル放送の規格の制定のときに、当事者の意見、要望を聞かれていない。団体に聞くか、不特定の個人に聞くかは規定されていないが、障害者基本法でも施策形成には当事者の意見を聞くこととされているだから、積極的に聞いて欲しいものだ。

画面の外に字幕を表示させるアウトリーチは、規格に入っているがサイマル放送が実施されているので、放送局側でアウトリーチにも対応した字幕を送出していないということを聞いたことがある。
「4.デジタル放送について
・デジタル放送では、スクロール方法や文字フォントの選択、字幕を画面の枠外に表示するなどさまざまな機能が可能になる。
・「地上デジタル放送標準化協議会」で、放送事業者として字幕の表示のしかたなどについてもさまざまな要望を出している。
(注:地上デジタル放送標準化協議会:地上デジタル受信機(STB)の仕様(機能)を検討する協議会で、民放キー局5社とNHKの技術、メディア、編成担当者などで構成されている。)
・しかし、要望された機能を採用するかどうかはメーカー次第という問題がある。」(テレビ字幕についての講演会」レポート、2002年)
http://homepage1.nifty.com/clip/cap/tbs-report.htm

2009年からデジタル放送に移行するアメリカでは、すでにインターネットとの融合を考えたサービスがいろいろ出ていると新聞に報じられていた。
アメリカに莫大な数のテレビを出荷している日本メーカーは当然対応しているはずで、その技術は日本にも使えるはずだ。

2004年のNHK放送技術研究所の年報に、インターネットとの融合を考えた技術開発が進んでいることが紹介されている。電波産業界ARIBの規格制定に寄与し、国際通信連合ITUにも提起したとある。
利用者に、技術開発の動向を積極的に知らせ、ニーズの把握をしてもらいたい。
総務省やNHKが視聴覚障害者向け放送番組について、調査をしたりしているのは不十分でありが前進だ。
https://www.nhk.or.jp/strl/publica/nenpou-h16/jp/annual2004.pdf

放送事業者、メーカー、放送技術関係者との接点はシンポジウムなど位しかなく、まだまだ少ない。私たち障害者側も不断の勉強が必要だ。業界側も利用者を育てる必要がある。
障害者放送協議会放送通信バリアフリー委員会では、2005年9月1日に、テレビ朝日の方と意見交換をしたが、2007年の字幕放送普及の指針の改定を要望するために、当事者がもっと勉強する必要を感じたからだ。
http://www.normanet.ne.jp/~housou/housou/20040901.html

総務省の「デジタル放送・・研究会」では、視聴覚障害者委員から「恒常的に放送バリアフリーに関して協議できる場」の設置を強く要望している。

ラビット 記


パソコン「要約筆記」が通訳になるために(2)

2006年12月30日 12時44分47秒 | 要約筆記事業

イトーヨーカドーのツリー手書きでも二人書きは出来るだけ書かなくてはと身構えている場合は最初の言葉から書き始めてしまいがちだが、手書きの要約筆記は、話し手の意図を伝えるために、聞こえた言葉をすぐ書かない、まず話を聞いて内容を理解する。
話し言葉の要約は話された言葉をすべて書けないから、やむなく要約するのではない。読み手にわかるように伝えるためだ。読むやすい字を書くということもその中に含まれる。これが通訳行為だ。
これを、パソコン要約筆記で実現するために、各地でも種々実践が行われている。

パソコン要約筆記の連携入力で、150字/分、200字/分入力できたとしても、聞いた端から入力された場合、それをスクリーンで「話し言葉(に近いもの)を読んで」+「意味を考える」のに、耳で聞くよりも時間を要する。
また読む側のストレスを考えると、もっと字数を減らして、すっと頭に入る文章の方が、同時性も保たれ、読む疲れもなくなる。
特に、会議の場面では聞こえるメンバーと同じようにやり取りするには、同時性、理解のしやすさが重要となる。
講演やシンポジウムなど聞く側にいる場合の難聴者等にとっては、同時性が多少犠牲になっても字数が多くても「読む」ことは出来るかもしれない。しかし、なかなか頭に入らないのではないか。ログを求める難聴者等が多いのも同じ理由だと考えている。

一人入力か連携入力かが先にあるのではなく、パソコン要約筆記の目的が話し手の話の内容を読み手に理解しやすい言葉で伝える(これが通訳行為)なので、これを可能とする理論、技術の確立がまだ不十分な状態と思う。
手書きの要約筆記者は、通訳として要約筆記する場合、話の聞き方が違うと言う。これはパソコン要約筆記の場合はどうなのか。
現在、全難聴事業で検討しているパソコン要約筆記のカリキュラムも、実際のパソコン要約筆記の入力事例を収集して、実証的に検討しようとしている。

ラビット 記
写真は鯛焼き