「戦後文学放浪記」
安岡章太郎著 岩波新書
「第三の新人」安岡章太郎氏、自らの文学の遍歴をつづった小品である。もともとは、岩波書店から刊行された「安岡章太郎集」の各巻に設けられたあとがきをまとめたものである。そのため時々、話が重複していたり、順序がおかしくなっていたりしている個所があったりする。
この本を読んでみようとしたきっかけというのは、昔、北杜夫から文学に入っていった僕としては、北 . . . 本文を読む
「長屋王横死事件」
豊田有恒著 講談社文庫
結構、立て続けに豊田有恒の小説を読んでますねえ。本書は、奈良時代の「長屋王の変」を扱った歴史SF小説である。ちょっとミステリー小説風になっています。ちょうど「大友皇子 東下り」を読み終えた時に、見つけたのでつい買ってしまった。そういえば、奈良時代を扱った小説って著名なのでは、井上靖氏の「天平の甍」ぐらいで、その他黒岩重吾氏がいくつか小説を書かれて . . . 本文を読む
利休にたずねよ
山本 兼一著 PHP文芸文庫
「利休にたずねよ」、500頁に及ぶ長編小説。最近、どうも分厚い本を読むのが苦手になっている私ですが、コツコツと通勤時間などを利用して読了。久しぶりに読み応えのある小説でした。テーマは、豊臣秀吉による利休の切腹ではあるのですが、そのもの直接がテーマというわけではなく、それをきっかけに、いろいろな人物や場面を描いた短い話を積み重ねながら時間軸をさか . . . 本文を読む
「幽霊 ~ある幼年と青春の物語~」
北杜夫著 角川文庫
以前もたぶんこのブログのどこかでも書いたと思うが、「幽霊」の冒頭の文章に惹かれて、ずっと北杜夫の著作を読み続けている。
引用してみよう。
「人はなぜ追憶を語るのだろうか。
どの民族にも神話があるように、どの個人にも心の神話があるものだ。」
そして、幼年期の記憶を辿ることから始まるのだが、家の中の家具や絨毯が不思議な文様を . . . 本文を読む
「大友の皇子 東下り」
豊田有恒著 講談社文庫
古本屋で見つけて、懐かしいなあと思って購入。僕が中高生の時は、結構、SF小説が人気があって、角川文庫や徳間文庫などがこぞって新刊を出してたよねえ。今は、現実が追いついたのかあんまりSF小説っていうジャンル分けを特段していないようになった気がする。豊田有恒という作家は、日本のSF小説の黎明期から活躍している作家で、僕も当時、星新一、筒井康隆の次ぐ . . . 本文を読む
「コミック版 どくとるマンボウ昆虫記」
北杜夫原作 手塚プロダクション画
北杜夫の名著、どくとるマンボウシリーズの「どくとるマンボウ昆虫記」がマンガになって帰ってきた。今になってという気もするが、平成23年に亡くなられてからも、ぽつぽつと新刊が出版され続けていることを考えるとこれはこれでありなんだろうなと思う。
読んでみて、僕自身がもともと手塚治虫のファンということもあり、そんな違和感を . . . 本文を読む
「人類哲学序説」
梅原猛 著 岩波新書
梅原猛、ついに岩波新書登場である。80余歳にして新書御三家制覇である。梅原氏については、かなり昔、立命館大学に在籍されていた。退職される時、中国文学の白川静教授と地理学の谷岡武雄教授の両名が立命に踏みとどまるように説得したが、かなわず退職され、その後京都市立芸術大学や国際日本文化センターなどの学長、所長を歴任された。
ちなみに、僕の在学中の立命館では . . . 本文を読む
「遥拝隊長・本日休診」
井伏鱒二著 新潮文庫
井伏鱒二氏の中編を2編をまとめたもの。昭和25年頃に書かれた作品である。
井伏鱒二氏の本というと、教科書にも出てくる原爆投下直後の広島を描いた「黒い雨」を高校時代に読んだっきり、全くご無沙汰であった。この本自体、本の奥付を見ると平成4年となっており、ずいぶん昔に購入したまんまになっていた。
最近の僕は、国語便覧に出てくるような名著とよばれる . . . 本文を読む
古都
川端康成著 新潮文庫
何百冊と本を読んできて、今更、何を「古都」なんぞを取り上げると言うところなのだが、この歳になるまで、川端康成氏の本を読むことすらなかった。最近、奈良や京都を舞台とした小説や随筆を好んで読んでいて、やっぱり「古都」を読まなあかんやろうということで今回である。
読んでみて、「美しい京都の私」である。京都を舞台にしないと成り立たないというか主人公は京都ということで . . . 本文を読む
「龍馬史」
磯田道史著 文春文庫
坂本龍馬である。最近、ケーブルテレビで福山雅治の「龍馬伝」が再放送されていて、すっかり龍馬ファンになってしまった。気持ちがちょっと落ち込んでたりする時に、坂本龍馬関係の本やテレビを見たりすると、元気が出て、気持ちが前向きになっちゃうんだよなあ。結構、単純なんやね。僕って。
今月の新刊で、文春文庫から、「龍馬史」という本が出版されて、折から龍馬がマイブーム . . . 本文を読む
手塚治虫 ~アーティストになるな~
竹内 オサム 著 ミネルヴァ書房
今年は、ブラックジャック誕生40周年ということで、手塚治虫関連の本を見つけるとついつい手に取ってを読んでしまう。今回も、日本史の研究者が中心になって出版しているミネルヴァ日本評伝選に「手塚治虫」が収録されているということで、購入し読了。著者は、早くからマンガ評論を手掛けていた同志社大学の竹内オサム氏である。
本書は、 . . . 本文を読む
「死者の書」
折口信夫著 ちくま日本文学全集所収
折口信夫の「死者の書」であるが、昔から何度かチャレンジをするのだが、いつも途中で挫折してしまい、最後まで読み通すことができなかった。それはそれで積読になってしまうことが多いのだが、何となく気になる本だったので、何年かに一回のタイミングで本棚から出してきて読もうとする。しかしながら、そのたびに失敗していた。その当時、持っていたのは中公文 . . . 本文を読む
大和古寺風物詩
亀井勝一郎著 新潮文庫
本書は、たぶん中学校の時、教科書だったか問題集であったかそこに取り上げられていたのが最初の出会いである。といいながらずいぶんご無沙汰をして、初めて読了した。今や観光地となってしまった奈良の有名寺院を対象に、そこにある仏像等を美術品という視点ではなく、あくまでも信仰の対象であるという観点で記述した随想集である。
取り上げられた寺院は、斑鳩宮、法隆寺、中 . . . 本文を読む
陰陽師(天鼓の巻)
夢枕 獏著 文春文庫
陰陽師である。ずっと前から、新刊が出るたびに買って読んでいる。今、現在、新刊が出れば必ず読んでいるのは、夢枕獏の「陰陽師」シリーズと宮城谷昌光の中国歴史小説ぐらいのものである。夢枕獏の「伝奇SF」というジャンルが正しいのかな。構図としては、ヒーロー的な安倍晴明と助手的な役割の源博雅の掛け合いで話が進んでいく。まあ、シャーロックホームズとワトソンの関 . . . 本文を読む
あすなろ物語
井上 靖著 新潮文庫
これも、中学生だったか、高校一年生ごろに読んだ小説の再読である。たぶんその頃は、教科書にも取り上げられていて、井上靖の本に入る入門書みたいな位置づけだったように思う。
確かに、この小説の一節である「あすは檜になろう、あすは檜のなろうと一生懸命考えている木よ。でも永久に檜になれないんだって、だからあすなろうというのよ。」そして檜になるために努力する精神の . . . 本文を読む