●今日の一枚 38●
Free Live !
今日の2枚目。正統なブリティッシュ・ロックをもう一枚。フリー・ライブ !。1971年2月~3月にかけて行われたツアーの記録だ。高校生の頃、繰り返し聴いた(そしてギターをコピーした)レコードだが、その演奏のエネルギーと聴衆の熱気に、今聴いても興奮する一枚だ。
かつては、フリーをバット・カンパニーの前身と紹介したものだが、今やバッド・カンパニーを知るファンも少なくなってしまった。フリーの特徴は、重く落ち込むような独特のサウンドにある。これは、天才ベーシスト、アンディー・フレイザーによるところが大きい。フレイザーは、弱冠15歳でジョン・メイオールのグループに参加して、あのミック・テイラー(のちローリング・ストーンズのギタリスト)と共にプレイしたという男だ。編成上もけっして厚いサウンドとはいえないフリーの演奏を、重くへヴィーなものにしているのは、フレイザーのベースだろう。
私のフェイバリット・ロックギタリストのうちの1人であるポール・コゾフ。泣きのギターといわれる彼のヴィブラートは今聴いても驚異的だ。エリック・クラプトンが、あれはトレモロ・アームを使っているに違いないと思っていたところ、ライブで指でやっているのを見て驚嘆したという話は有名だ。side-2の② Mr. Big における演奏は圧巻だ。これでもかという程執拗にたたみかける泣き叫ぶようなヴィブラート、どこまでも伸びやかなチョーキング、そしてソロからアルペジオへ変化していくわくわくするような流れ。私がフリーが好きなのは、ポール・コゾフのギターがあるからだといっても過言ではない。
そして、ポール・ロジャースのボーカル。ロック・ボーカリストとしては、一級品であろう。時にシャウトし、しっとりと歌うこともできる。歌詞をしっかりと踏まえることのできる表現力は、最近の無意味に叫んでしまう歌い手とは一線を画する。
渋谷陽一『ロック ベスト・アルバム・セレクション』(新潮文庫)は、フリーについて、「フリーのサウンドの最大の特徴はやはり重く落ち込み、そして決してネバつかないあの独特のリズムといえるだろう。ローリングストーンズが黒人音楽やスワンプサウンドを真似て重いネバつく音をつくりあげたとするなら、フリーはブルースから離反していく過程で重いリズムを獲得したといっていいだろう。フリーはあくまでも白人独特の疲労感と痛みを歌うグループなのである。」と評価している。基本的には、私も異存はない。