今日時間があったので、書店で『週刊現代』を買ったら興味深い記事がのっていた。すなわち、乙武洋匡さんが自身のブログに「紀子さま出産」と題する文章を載せ、その中で「世間は昨日から『めでたい、めでたい』と騒いでいるけど……ひとつの命が誕生したことがめでたいの?それとも誕生した命が『男児だったから』めでたいの?」と語ったところ、掲示板『2ちゃんねる』に取り上げられ、それを契機にブログに誹謗・中傷コメントがなだれを打つように書き込まれたというのだ。こうしたブログ執筆者の発言に批判的コメントが集中する状態を「炎上」というのだそうだが、多くが同じ稚拙な文章を何度もアップするいやがらせ的なものである。
まったく、わが日本はどうなっているのだろう。私は乙武洋匡さんの本を読んだことも無くことさら弁護する気もないが、ブログの文章を読む限り、まったくまっとうな意見だった。乙武さんの文章には悪意はまったく感じられず、文章どうりの意味ととって差し支えない。私なら皇室に命が誕生したからといって何か特別えらいのか……と付け加えたいところだが……。
多くは日本の「右傾化」にともなって俄かに出現している「気分的右翼」の連中だろう。匿名の発言であることをいいことに、節度の無いことをやる。節操が無い。昔の日本人はこうではなかったはずだ。まったく、この日本にはもはや冷静な議論の土壌は失われてしまったのだろうか。皇室の尊厳を云々する前に、人間としての節度のあり方を何とかして欲しい。日本の美風を損なっているのは、こうした節度なき「気分的右翼(保守)」の烏合の衆だと思うのだが……。
乙武さんは同日のうちに、「深くお詫びします」と謝罪文を掲載したが、それに対しても嫌がらせコメントが5000件以上寄せられたとのことである。乙武さんは悔しかったであろう。そもそも謝罪する必要などないものに対して、礼をつくして謝罪したのだ。その「礼」に対してすらあざけりや嫌がらせが寄せられるわが日本……。
柄にもなく私は「憂国」の念を抱いてしまう。日本を本当に滅ぼすのは、彼らが悪口をいう朝日新聞や「左翼」ではなく、おそらくは彼ら自身なのではなかろうか。