WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

乙武洋匡ブログ「炎上」事件

2006年09月16日 | つまらない雑談

 今日時間があったので、書店で『週刊現代』を買ったら興味深い記事がのっていた。すなわち、乙武洋匡さんが自身のブログに「紀子さま出産」と題する文章を載せ、その中で「世間は昨日から『めでたい、めでたい』と騒いでいるけど……ひとつの命が誕生したことがめでたいの?それとも誕生した命が『男児だったから』めでたいの?」と語ったところ、掲示板『2ちゃんねる』に取り上げられ、それを契機にブログに誹謗・中傷コメントがなだれを打つように書き込まれたというのだ。こうしたブログ執筆者の発言に批判的コメントが集中する状態を「炎上」というのだそうだが、多くが同じ稚拙な文章を何度もアップするいやがらせ的なものである。

 まったく、わが日本はどうなっているのだろう。私は乙武洋匡さんの本を読んだことも無くことさら弁護する気もないが、ブログの文章を読む限り、まったくまっとうな意見だった。乙武さんの文章には悪意はまったく感じられず、文章どうりの意味ととって差し支えない。私なら皇室に命が誕生したからといって何か特別えらいのか……と付け加えたいところだが……。

 多くは日本の「右傾化」にともなって俄かに出現している「気分的右翼」の連中だろう。匿名の発言であることをいいことに、節度の無いことをやる。節操が無い。昔の日本人はこうではなかったはずだ。まったく、この日本にはもはや冷静な議論の土壌は失われてしまったのだろうか。皇室の尊厳を云々する前に、人間としての節度のあり方を何とかして欲しい。日本の美風を損なっているのは、こうした節度なき「気分的右翼(保守)」の烏合の衆だと思うのだが……。

 乙武さんは同日のうちに、「深くお詫びします」と謝罪文を掲載したが、それに対しても嫌がらせコメントが5000件以上寄せられたとのことである。乙武さんは悔しかったであろう。そもそも謝罪する必要などないものに対して、礼をつくして謝罪したのだ。その「礼」に対してすらあざけりや嫌がらせが寄せられるわが日本……。

 柄にもなく私は「憂国」の念を抱いてしまう。日本を本当に滅ぼすのは、彼らが悪口をいう朝日新聞や「左翼」ではなく、おそらくは彼ら自身なのではなかろうか。

 


トム・ウェイツのスモール・チェンジ

2006年09月16日 | 今日の一枚(S-T)

●今日の一枚 48●

Tom Waits     Small Change

Scan10007_12  3連休だ。そのうち2日間は久々の完全オフだ。そんなこともあって、今日はちょっと調子に乗って飲みすぎた。そうだ、トム・ウェイツを聴こうと思ったのは、たまたま流していたFM放送でトム・ウェイツがかけられたからだ。このCDを再生装置のトレイにのせるのは、何年振りのことだろう。

 1976年録音の「スモール・チェンジ」。初期トム・ウェイツの代表作の一つだ。傑作の誉れ高いデビュー作はフォーク色が強かったが、この頃になると、明らかにジャズっぽいサウンドになる。よくみてみると、なかなか味のあるSAXはルー・タバキン、ドラムスもシェリー・マンではないか。意外なことだが、今ではビック・ネームのトム・ウェイツも初期の頃はセールス的にはまったくだめだったらしい。このアルバムがはじめてトップ100にはいったアルバムだ。

 トム・ウェイツはよく「酔いどれ詩人」などといわれるが、本当は酒が飲めないらしい(噂)。にもかかわらず、そうした言い方をされるのは、ビートやスピードの自由な感覚が、酔っ払いの生理的なリズムに合うのだろう。しかも、どんなに嗄れ声で歌おうと吼えようと、曲の背後にいつも美しい歌心があるのを感じることができる。かくいう私も、今聴いていて実に気持ちがいい。身体がビートに反応してスウィングし、歌を口づさんでしまう。

 トム・ウェイツの書く曲は、多くのミュージシャンにカバーされることも多く、ほとんどスタンダード化している作品もあるが、このアルバムでも素敵な曲が随所にちりばめられている。① Tom Traubert's Blues や ③Jitterbug Boy、 ④ I Wish I Was In New Orleans、あるいは⑤ The Piano Has Been Drinking (Not Me)、 ⑥ Invitation To The Blues などは涙なくしては聴けないほど素敵なメロディーだ。

 今夜はもう少し酒を飲むことになりそうだ。


パパとあなたのかげぼうし……青春の太田裕美⑥

2006年09月16日 | 青春の太田裕美

Srcl05084_3   「パパとあなたの影ぼうし」……。この歌を今日知った。2001年の4月~5月にNHK「みんなの歌」で流されて、大きな反響のあった曲らしい。

 後から後から涙が出てきてとまらなかった。自分のことを歌われているようだと思った(私はなんでもできる優秀な人間ではないが……)。思わず、自分の息子を抱きしめたくなったが、宿泊学習にいっていて不在だ。

 やはり、太田裕美はすごい。人生のいろいろな局面で何かを教えてくれる。

2006.9/12

 ここで聴けます(歌詞

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[歌詞]  

作詞・作曲:こんの ひとみ

   運動会のかけっこあなたは みんなの一番後ろ走ってる
   パパは本気で歯ぎしりしてる 真っ赤な顔をして走るあなた見て
   パパはいつも何でも一等で 思い通り生きてきたから
   不器用な息子を思うばかりに あなたにつらくあたるのね

   逆上がりがすぐにできない子はできる子よりも
   痛みがわかる分だけ強くなれることを
   パパに伝えたいね いつかわかる日が来るよね
   放課後 校庭 鉄棒に映る ママとあなたの影

   パパは今度初めて仕事で 一等をとれなかったの
   弱気な顔を見せてぐちって その方がずっと好きになれる
   「ねえ、パパ逆上がりを教えて」息子なりの励ましかしら
   日曜の午後パパはしぶしぶ あなたと外に出た

   何度も何度も足が宙を切って落ちる
   それでも空に向かって大きく足を振り上げる
   パパはもうわかってる あきらめないのが大切だって
   夕日の校庭 鉄棒に映る パパとあなたの影

再アップ(初アップ2006/9/12)