人生チャレンジ20000km~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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関越道でバス事故、7人死亡~背景に規制緩和、国土交通省の責任を追及せよ

2012-04-30 23:15:24 | 鉄道・公共交通/安全問題
TDRツアー暗転、「寝ちゃった」運転手逮捕へ(読売新聞) - goo ニュース

4月29日未明、関越道で起きた高速バス事故は、7人の乗客が死亡する惨事となった。重傷者の中には重体の人もおり、今後、犠牲者が増える事態も考えられる。

直接の事故原因として運転手の居眠りが指摘されているが、当ブログと安全問題研究会は運転手の個人的ミスにはあまり興味がない。むしろ、過去に何度か指摘してきた安全面での規制緩和、そしてその結果引き起こされた過当競争のほか、規制行政のあり方等いくつかの重要な点について、触れておく必要がある。

事故を起こした千葉県印西市のバス会社「陸援隊」の悪質さについてはすでにいろいろな形で報道が出ている。2009年、この会社が道路運送法による営業認可を受けない、いわゆる「白バス」営業を行っていたほか、乗務記録の記入不備により行政処分も受けていた。また、同社に運行を委託していた旅行社「ハーヴェストホールディングス」も、運転手の勤務時間管理を怠っていたとして2008年、国土交通省富山陸運支局の行政処分を受けている。いわば「ブラック旅行社」が「ブラックバス会社」に運行を委託して組まれたのが今回のツアーだった、というわけだ。

最近の格安ツアーバスの料金は、東京-大阪間で3,500円というケースもあるなど常軌を逸した状態になっている。全国に高速バス網が張り巡らされるようになったのは1980年代末期だが、このころの高速バスの運賃は安いとはいえ、まだJRの普通運賃程度のものだった(東京~大阪で8,000円~10,000円程度)。この頃の高速バスですら「1台当たり乗客20~25人が採算ライン」と言われていたことから考えると、現状の格安ツアーバスが利益を出すには運転手の人件費を当時の40~50%に値切るか、常に補助席まで埋め尽くす超満員運行でなければならないだろう。当ブログの見る限り、利益を出せている事業者はほとんどなかったのではないか。

当ブログと安全問題研究会は、国土交通省の責任を追及しなければならないと考える。2000年の規制緩和がこのような事態を招いたことは今さらいうまでもない。このときの規制緩和たるや酷いもので、バスを5台持ち、責任者を置き、運転手の休憩所を設けるなどの一定要件を満たしさえすれば誰でも貸し切りバス事業に参入できるようにしたのだ。この規制緩和の後、雨後の竹の子のようにバス会社が乱立、バス業界は走らせても走らせても儲からない消耗戦に突入した。その最も悲劇的な結末が、2007年2月に大阪・吹田市でスキー客ら27人が死傷した「あずみ野観光バス」事故だった。

今回の事故は、2007年の事故にもましてくっきりと、国土交通行政の犯罪性を浮き彫りにした。何よりも許し難いのは、「陸援隊」「ハーヴェストホールディングス」が両者とも過去に処分歴のあるブラック会社であったにもかかわらず、国土交通省が短期間の運行休止だけで抜本的な措置を何も講じなかったことである。この両社の処分理由は単なる事務手続きミスなどではない。「白バス」営業、乗務記録の記載不備、運転手の勤務管理の欠如という、まさに安全運転の根幹に関わる部分での処分だった。

常識的に考えれば、この時点でバス事業の許可取り消しなどの処分によって、こうした悪質業者は退出させなければならなかった。参入は誰でもでき、このような悪質な法令違反を犯してなお許可取り消しによる退出措置が下せないなら、そのような許可制度はあってもなくても同じで事実上の自由化と言っていい。

国土交通省のこうした怠慢、不作為は、そもそも行政制度として儲けられている許認可そのものを形骸化させるもので、同じように許認可制が導入されている他の行政分野にも悪影響を与えかねない。当ブログと安全問題研究会は、こうした怠慢、不作為を断じて認めることはできない。

今回の事故を踏まえ、安全問題研究会では、バス事業に関わる規制緩和の実態、安全対策について緊急の調査を行い、その結果を基に、国土交通省への申し入れを行うことを検討している。

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