安全問題研究会(旧・人生チャレンジ20000km)~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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<安全問題研究会コメント>日本社会に衝撃与えた信楽高原鉄道事故から30年 崩壊の最終章に入った民営JRに別れを告げ、直ちに再国有化で再建を

2021-05-20 20:49:59 | 鉄道・公共交通/安全問題
遺族の決意が国を動かし、事故調組織を実現させる 信楽高原鉄道事故30年(産経)

信楽事故から30年 次世代へ教訓つなぎ風化させるな(産経)

1991年5月14日、乗客42名が死亡した信楽高原鉄道事故から30年となった(当時のニュース報道)。30年間の歩み、遺族・被害者の闘いがもたらした成果については、上記の産経の2つの記事が良く取材しまとめている。他紙の報道も見たが、特にこの産経の2記事が優れていると判断したのでご紹介する。

なお、これを受け、安全問題研究会が以下のとおりコメントを発表した。

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<安全問題研究会コメント>日本社会に衝撃与えた信楽高原鉄道事故から30年 崩壊の最終章に入った民営JRに別れを告げ、直ちに再国有化で再建を

1.42名もの大量の犠牲者を出し、日本社会に大きな衝撃を与えた信楽高原鉄道列車正面衝突事故から30年を迎えた。安全問題研究会は、42名の犠牲者及びその関係者に対し、謹んで哀悼の意を表する。

2.事故の起きた1991年は、国鉄分割民営化によりJR7社が発足してから5年目であった。国鉄からJR各社に不採用となり、国鉄清算事業団に送られた職員1047名が最終的に解雇されたのはこの前年、1990年のことである。民営化からまだ5年経過しておらず、日本の市民に旧国鉄と特定地方交通線廃止・整理の苦い記憶が強く残っている時期のことであった。

3.事故現場となった信楽高原鉄道は、国鉄再建法に基づく第1次特定地方交通線・信楽線を継承した第三セクター鉄道であり、信楽町で開催中の「世界陶芸祭」に合わせて信楽線に臨時に乗り入れてきたJR西日本の急行列車と、信楽高原鉄道の列車が単線上で正面衝突したものである。JR西日本は厳しい批判にさらされたが、赤字線として信楽線を一度は見捨てておきながら、儲かるイベント時だけ見捨てたはずの路線を徹底的に利用し尽くし、42名の命を奪い去ったJR西日本の利益優先、安全軽視の姿勢を見れば、それらの批判は受けて当然のものである。

4.発足直後のJR西日本が、JR東日本・東海と比べて中国山地などの条件不利地域を多く抱える一方、運賃・料金は本州3社同条件でスタートするなど無理を重ねながらの厳しい経営を強いられていることが明らかになっていった。当時、当研究会は発足しておらず、インターネットもない時代だったが、「民営JR7社体制は西日本の安全問題と、やがて訪れる北海道のローカル線問題を“両輪”として破滅へのレールをひた走るであろう」と警告した。バブル経済を背景としてJR7社がいずれも好決算を続け、民営化は大成功と宣伝されていた時期だけに、ほとんどの人から一笑に付されたが、この恐るべき惨事こそ「新自由主義JR」に忍び寄る破滅への最初の予兆だった。

5.30年後の今日、当研究会の警告は最も厳しい形で現実となった。JR西日本は福知山線脱線事故、新幹線のぞみ台車亀裂事故を相次いで起こした。信楽高原鉄道事故に関しても、信楽高原鉄道と折半していた被害者への賠償について「主な責任は信楽高原鉄道側にある」と主張し、訴訟まで起こして賠償負担割合を少なくしようと策動を続けた。この事故でJR西日本がきちんと襟を正していれば、福知山線事故など後続の事故を防ぐきっかけにもなり得ただけに、ここでJR西日本を監視する運動の社会化を図れず、次の事故につながってしまったことは当研究会としても非力を詫びなければならない。

6.しかし、この事故は、貴い犠牲と引き替えにその後の鉄道事故の調査や遺族・被害者のケアといった面で多くの前進が勝ち取られるきっかけとなった。それまで日本に常設されている公共交通機関の事故調査組織は海難審判庁、航空事故調査委員会のみであり、陸上交通機関の事故調査組織は常設されていなかった。信楽高原鉄道事故をきっかけとして、遺族・吉崎俊三さん(2018年死去)の呼びかけでTASK(鉄道安全推進会議)が結成され、鉄道事故に関しても事故調査機関の常設を求める活発な活動が展開された結果、航空・鉄道事故調査委員会(現・運輸安全委員会)の設置が実現した。

7.国土交通省に対する粘り強い働きかけの結果「公共交通事故被害者支援室」の設置が実現したのもTASKを中心とした運動によるものである。日航機墜落事故遺族会「8・12連絡会」との協力の下に、被害者が横につながり合い、社会を動かす力を具体化した画期的事例であった。後に発生した福知山線脱線事故(死者107人)でも、具体的な成果が速度照査型ATS(自動列車停止装置)の義務化、JR西日本歴代3社長への強制起訴程度にとどまっていることを考えると、信楽高原鉄道事故において得た成果は福知山線事故をもしのぐ大規模なものであるといえよう。

8.公共交通機関の安全を求める当研究会の活動に終わりはなく、30年は単なる通過点である。幸い、日航機事故を最後に営業中の旅客機事故で乗客が死亡した例はないが、高速ツアーバス・スキーバスなどの事故は断続的に起きている。これらはいずれも、公共財である交通機関を最安値に向かって際限なく競争させ、乗務員の労働条件も乗客の生命も無慈悲に叩き売りする新自由主義の最も残酷な帰結であった。

9.北海道のローカル線問題も「全路線消滅」すら視野に入れざるを得ない重大局面を迎えた。この事態もまた、公共財を市場原理に委ねる新自由主義がもたらした残酷な結末である。信楽高原事故42名、福知山線事故107名の生命、国労組合員ら1047名の雇用、北海道の半分にも及ぶローカル線――これらのすべてを奪い尽くす新自由主義に対して、当研究会は怯むことなく宣戦を布告し、全国各地を新自由主義の墓標で埋め尽くすまで徹底的な闘争を続ける。

10.今日の新型コロナ感染拡大も、病院や保健所の統廃合などを通じて新自由主義がもたらした危機である。感染の恐怖や必要のない死の危険に直面した多くの市民が新自由主義への敵意を抱き始めている。新自由主義を葬り去る過去半世紀で最大のチャンスが到来している。

11.当研究会は今年1月、利益優先、安全軽視のJR民営7社体制を最終的に清算し、再国有化をめざすため「日本鉄道公団法案」を決定した。JR再国有化の実現に向け全力を尽くし、信楽高原鉄道事故犠牲者42名の無念に応えたいと考える。

 2021年5月14日
 安全問題研究会

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