皆さんお疲れさまです。
原子力規制委員会は、11月7日、運転開始から40年経過した老朽原発、東海第2について、20年の運転延長を認めました。東海第2は福島第1と同じ沸騰水型原発で、東日本大震災で津波被害を受けた原発である点も福島第1と同じです。こんな原発の再稼働だけでなく運転延長まで認めるとは、規制委も完全に地に墜ちました。11月7日を「原子力規制委員会が死んだ日」と評した人がいますが私もそう思います。規制委は恥を知れと言いたいですし、このまま何でもかんでも再稼働も運転期間延長も容認するなら、原子力大復活委員会と名前を変えるべきです。今日は、東海第2について私の知っていることをお話しします。
そもそも東海第2は東京電力の原発ではありません。東電の保有する原発――福島第1、第2、柏崎刈羽原発はすべて東北電力の営業区域にあります。東電は自分の会社の営業区域内には原発を1基も置かず、すべて他社の営業区域に押しつけている大変厚かましくとんでもない会社です。関西電力でさえ、原発を置いている福井県は自分の会社の営業区域です。こんな酷いことをしている東電が事故を起こすのは当然と言えますが、そんな中、首都圏で唯一の原発がこの東海第2で、運営しているのは日本原子力発電という原発専門会社です。
この日本原子力発電は、東海第2の他に敦賀原発も保有していますが、こちらは再稼働どころか廃炉がほぼ決定的になっています。2015年、敦賀原発直下を走る「D-1」断層、2~300mの深さにある「浦底断層」がいずれも活断層であるとの規制委の評価書が正式決定しているからです。福島事故後の新規制基準では活断層の上に原発の重要施設を置いてはならないことになっており、活断層の真上にある敦賀原発は動かせないのです。
原発専門会社であり、原発以外の発電所を持たない日本原電にとって、敦賀ばかりか東海第2まで動かせないとなると、この会社には動かせるものがなくなり、倒産するしかなくなります。日本原電が必死の悪あがきを続けているのにはこうした背景があるのです。
日本原電の株式の28%は東電が保有していて筆頭株主です。関西電力も日本原電の株式の18%を保有しています。日本原電が倒産すれば東電、関電を初め電力業界に大きな影響が及びます。だからこそ電力業界総がかりで再稼働を狙っているのです。しかし、関電はともかく、東電は福島事故後、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(賠償金を貸し付ける組織)が約半分の株式を保有する事実上の国営企業です。保有するすべての原発が止まっているためまったく仕事をしていない日本原電というゾンビ会社のために、事実上の国営企業である東電を通じて税金が垂れ流されているという構図になります。これに納税者はもっと怒らなければなりません。
東海第2の再稼働や運転延長は、このことだけでも十分犯罪的と言えますが、もっと重要な事実をお伝えしておきたいと思います。東日本大震災の時に、東海第2原発も福島第1原発と同じように津波に襲われ、外部電源はすべて失われました。非常用ディーゼル発電機が津波を免れたため辛うじて福島第1のような全電源喪失にはなりませんでした。このとき東海第2原発に押し寄せた津波は5.4mですが、東海第2原発の防潮堤はもともと4.9mしかありませんでした。その防潮堤を6.1mにかさ上げする工事が完了したのは2011年3月9日、東日本大震災のわずか2日前のことです。「津波があと70センチ高かったら、あるいは来るのがあと2日早かったら、東海第2も終わっていた」。当時、東海村の村長だった村上達也さんは2012年9月、日本外国特派員協会での講演でこう語っています。東海第2も紙一重であり、福島第1原発を笑える立場ではないのです。
この「あわや」の状況を見て、村上さんは「日本には原発を動かす資格がない」と確信し再稼働への同意を拒否し続けました。「原発立地地域ではあらゆる産業が原発依存型になり努力しなくなる。衣料品店は原発作業員用のものを仕入れて売る。旅館も原発作業員向けの雑魚寝で風呂も共同。個室化などを提案しても、作業員が来るからいいと言ってやらない」と村上さんは言います。原発という「毒」を一度飲んでしまうと地域経済全体が自立心を失い、腐敗し、疲弊する――立地地域を長年見てきた村上さんの言葉は当事者のものだけに重みがあります。
しかし、村上さんや茨城県民の闘いは、確実に地域を変え前進させてきました。周辺6自治体(水戸市、那珂市、常陸太田市、ひたちなか市、日立市、東海村)、5市1村が原発運転に当たって事前了解権を含む安全協定を日本原電との間で結んだことはその大きな成果といえるでしょう。
日本の原発の地元にはこれまで2種類の自治体しかありませんでした。原発の運転に当たって事前了解権が与えられる代わりに「旧電源三法交付金」の支給対象になっている自治体か、その交付金がない代わりに事前了解権もない自治体のいずれかです。平たく言えば「事前了解権があっても住民生活を人質に取られ、その権限を行使できない自治体」か「住民生活を人質にされない代わりに原発の運転に口出しもできない自治体」のいずれかしかなかったのです。原発を動かす電力会社に対し、自治体はいずれにしても拒否権を持てない。このシステムの行き着いた先が福島第1原発事故でした。その悲劇を経験して、日本が初めて変わるかもしれないチャンスが生まれています。事前了解権を含む安全協定を結んだ5市1村には、これまでの常識では原発立地自治体に該当しなかったところも含まれているからです。「住民生活を人質に取られる心配をする必要がなく、原発の危険性や住民の意向だけで拒否権を行使するか否かの判断ができる自治体」が初めて生まれたのです。
水戸市議会は今年6月、国や県に東海第2原発の再稼働を認めないよう求める意見書を可決しました。規制委が死んでしまった今、安全協定を結んだ6自治体とその住民の闘いこそが東海第2原発の行方を決めることになるでしょう。福島の事実を伝え、再稼働反対を貫くよう、全国から6自治体に支援の声を届けましょう。
原子力規制委員会は、11月7日、運転開始から40年経過した老朽原発、東海第2について、20年の運転延長を認めました。東海第2は福島第1と同じ沸騰水型原発で、東日本大震災で津波被害を受けた原発である点も福島第1と同じです。こんな原発の再稼働だけでなく運転延長まで認めるとは、規制委も完全に地に墜ちました。11月7日を「原子力規制委員会が死んだ日」と評した人がいますが私もそう思います。規制委は恥を知れと言いたいですし、このまま何でもかんでも再稼働も運転期間延長も容認するなら、原子力大復活委員会と名前を変えるべきです。今日は、東海第2について私の知っていることをお話しします。
そもそも東海第2は東京電力の原発ではありません。東電の保有する原発――福島第1、第2、柏崎刈羽原発はすべて東北電力の営業区域にあります。東電は自分の会社の営業区域内には原発を1基も置かず、すべて他社の営業区域に押しつけている大変厚かましくとんでもない会社です。関西電力でさえ、原発を置いている福井県は自分の会社の営業区域です。こんな酷いことをしている東電が事故を起こすのは当然と言えますが、そんな中、首都圏で唯一の原発がこの東海第2で、運営しているのは日本原子力発電という原発専門会社です。
この日本原子力発電は、東海第2の他に敦賀原発も保有していますが、こちらは再稼働どころか廃炉がほぼ決定的になっています。2015年、敦賀原発直下を走る「D-1」断層、2~300mの深さにある「浦底断層」がいずれも活断層であるとの規制委の評価書が正式決定しているからです。福島事故後の新規制基準では活断層の上に原発の重要施設を置いてはならないことになっており、活断層の真上にある敦賀原発は動かせないのです。
原発専門会社であり、原発以外の発電所を持たない日本原電にとって、敦賀ばかりか東海第2まで動かせないとなると、この会社には動かせるものがなくなり、倒産するしかなくなります。日本原電が必死の悪あがきを続けているのにはこうした背景があるのです。
日本原電の株式の28%は東電が保有していて筆頭株主です。関西電力も日本原電の株式の18%を保有しています。日本原電が倒産すれば東電、関電を初め電力業界に大きな影響が及びます。だからこそ電力業界総がかりで再稼働を狙っているのです。しかし、関電はともかく、東電は福島事故後、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(賠償金を貸し付ける組織)が約半分の株式を保有する事実上の国営企業です。保有するすべての原発が止まっているためまったく仕事をしていない日本原電というゾンビ会社のために、事実上の国営企業である東電を通じて税金が垂れ流されているという構図になります。これに納税者はもっと怒らなければなりません。
東海第2の再稼働や運転延長は、このことだけでも十分犯罪的と言えますが、もっと重要な事実をお伝えしておきたいと思います。東日本大震災の時に、東海第2原発も福島第1原発と同じように津波に襲われ、外部電源はすべて失われました。非常用ディーゼル発電機が津波を免れたため辛うじて福島第1のような全電源喪失にはなりませんでした。このとき東海第2原発に押し寄せた津波は5.4mですが、東海第2原発の防潮堤はもともと4.9mしかありませんでした。その防潮堤を6.1mにかさ上げする工事が完了したのは2011年3月9日、東日本大震災のわずか2日前のことです。「津波があと70センチ高かったら、あるいは来るのがあと2日早かったら、東海第2も終わっていた」。当時、東海村の村長だった村上達也さんは2012年9月、日本外国特派員協会での講演でこう語っています。東海第2も紙一重であり、福島第1原発を笑える立場ではないのです。
この「あわや」の状況を見て、村上さんは「日本には原発を動かす資格がない」と確信し再稼働への同意を拒否し続けました。「原発立地地域ではあらゆる産業が原発依存型になり努力しなくなる。衣料品店は原発作業員用のものを仕入れて売る。旅館も原発作業員向けの雑魚寝で風呂も共同。個室化などを提案しても、作業員が来るからいいと言ってやらない」と村上さんは言います。原発という「毒」を一度飲んでしまうと地域経済全体が自立心を失い、腐敗し、疲弊する――立地地域を長年見てきた村上さんの言葉は当事者のものだけに重みがあります。
しかし、村上さんや茨城県民の闘いは、確実に地域を変え前進させてきました。周辺6自治体(水戸市、那珂市、常陸太田市、ひたちなか市、日立市、東海村)、5市1村が原発運転に当たって事前了解権を含む安全協定を日本原電との間で結んだことはその大きな成果といえるでしょう。
日本の原発の地元にはこれまで2種類の自治体しかありませんでした。原発の運転に当たって事前了解権が与えられる代わりに「旧電源三法交付金」の支給対象になっている自治体か、その交付金がない代わりに事前了解権もない自治体のいずれかです。平たく言えば「事前了解権があっても住民生活を人質に取られ、その権限を行使できない自治体」か「住民生活を人質にされない代わりに原発の運転に口出しもできない自治体」のいずれかしかなかったのです。原発を動かす電力会社に対し、自治体はいずれにしても拒否権を持てない。このシステムの行き着いた先が福島第1原発事故でした。その悲劇を経験して、日本が初めて変わるかもしれないチャンスが生まれています。事前了解権を含む安全協定を結んだ5市1村には、これまでの常識では原発立地自治体に該当しなかったところも含まれているからです。「住民生活を人質に取られる心配をする必要がなく、原発の危険性や住民の意向だけで拒否権を行使するか否かの判断ができる自治体」が初めて生まれたのです。
水戸市議会は今年6月、国や県に東海第2原発の再稼働を認めないよう求める意見書を可決しました。規制委が死んでしまった今、安全協定を結んだ6自治体とその住民の闘いこそが東海第2原発の行方を決めることになるでしょう。福島の事実を伝え、再稼働反対を貫くよう、全国から6自治体に支援の声を届けましょう。