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【金曜恒例】反原発北海道庁前行動(通算314回目)でのスピーチ/福島への帰還拒否を呼びかけた国連特別報告者

2018-11-11 21:33:31 | 原発問題/一般
 皆さんお疲れさまです。

 去る10月25日、国連人権高等弁務官事務所が指名した特別報告者が、国連総会で日本政府の避難者帰還政策を批判する報告を行いました。バスクト・トゥンジャク国連報告者は日本政府が適切な住民保護政策を採っておらず、避難者、特に「女性と子どもは年間被曝量が1mSvを超える地域への帰還を見合わせるべき」であると述べ、日本政府の福島への帰還政策を批判しました。これに対し、日本政府原子力被災者生活支援チームは、「ICRPの勧告では避難などの対策が必要な緊急時の目安として、年間の被ばく量で20mSvより大きく100mSvまでとしていて、政府は、そのうちもっとも低い20mSv以下になることを避難指示解除の基準に用いている。また、除染などによって、長期的には、年間1mSvを目指すという方針も示している」「子どもたちに限らず、避難指示が解除されても帰還が強制されることはなく、特別報告者の指摘は誤解に基づいていると言わざるをえない」とでたらめな反論をしています。今回は少し難しい話も含んでいますが、大変重要なことですので、日本政府のウソと欺瞞を暴く意味からも、きちんと見ておきたいと思います。

 日本政府は、トゥンジャク国連特別報告者への反論の根拠としてICRP2007年勧告を持ち出していますが、そもそもICRPの一連の勧告は、長期にわたって20mSvを一般市民への被曝基準に採用することなど認めておらず、7年半も20mSvを帰還の基準にしている日本政府の政策は異常極まりないものです。

 ICRPが2007年に採択した勧告は、原発事故が起きていない通常の状態を「現存被ばく状況」、原発事故など不測の事態が起きて住民を放射能から防護するための特別な措置が必要な状況を「緊急時被ばく状況」に分け、別の基準を設けています。この他「計画被ばく状況」という区分もありますが、これは原発労働者など職業上被曝する人のことですので今日の話では取り上げません。

 一般市民の被曝基準について、ICRP2007年勧告は「現存被ばく状況」つまり原発事故が起きていない通常の状況で「1~20mSv」とする一方、「緊急時被ばく状況」つまり原発事故が起きて通常の基準が守れないような緊急事態の時は「20~100mSv」と定め、できる限りこの中の「下限値」を採るよう勧告しています。下限値なので「通常被ばく状況」では1mSv、「緊急時被ばく状況」でも20mSvを採用すべきなのは明らかです。

 このように指摘すると、帰還の基準として20mSvを採用している日本政府のやり方は、一見、適切なように感じられます。ICRPの勧告は難解で誤解が生じやすいのです。しかし「緊急時被ばく状況における人々の防護のための委員会勧告の適用」と題されたICRPの別の勧告第109号(113)項では明確にこのように定めています――『委員会は、緊急事態に起因する長期被ばくの管理は、現存被ばく状況として扱うべきであると勧告する』。またこの勧告(114)項は明確にこう指摘しています――『緊急事態に起因する現存被ばく状況は、ある集団が既知のまたは評価可能なレベルの被ばくを伴う地域に引き続き居住する必要性によって特徴づけられる』。

 要約すると、「原発事故を起こした国の政府が、汚染された地域の住民を避難させず、そのまま汚染地に居住させる」と決めた時点で「現存被ばく状況」へと移行すべき、というのがこの勧告の内容と考えられます。日本政府が福島の住民を避難させないと決めた時点で住民の被曝基準を「現存被ばく状況」における下限値、つまり年1mSvとしなければならないのです。しかもこの勧告(115)項は『緊急時被ばく状況から現存被ばく状況への移行の計画策定は、・・・関連するすべてのステークホルダー《利害関係者》が関与すべきであると委員会は勧告する』と明確に述べています。つまり汚染地に居住させられる住民が参加の上、その意見を聴くことを原則にしています。1mSv基準が適用されないなら避難したい、また帰還したくないと訴えてきた市民の声を残酷に踏みつぶしてきた日本政府は糾弾されるべきであり、原発推進勢力の国際組織であるICRPの勧告さえ守る気のない日本政府に原発を動かす資格などありません。

 トゥンジャク国連特別報告者は、日本政府に対し、特別なことを求めているわけではなく、ICRP勧告が定める内容に基づいて原則論を述べているに過ぎません。彼はICRP勧告の内容を良く理解しており、日本政府こそそれを理解する意思も能力もないと断定せざるを得ません。そのような無能な政府が下手にICRP勧告を持ち出して反論したつもりが勝手に破たんしているだけであり、国際社会では一切通用せず失笑を買って終わりになるでしょう。

 このような無能な政府を私たちは変えなければなりません。どのようにしたら変えられるかは難しく厳しい課題ですが、できることは何でもやる、自分の力でできることを精いっぱいやりきる以外にないと思います。私は先週ここでお約束した、再エネではなく原発を止めるよう要求する九州電力への要請書を送りました。どんな小さなことでもいい。みんなが動くことがこの社会を変える力となるでしょう。自分自身の力を信じましょう。

注)「緊急時被ばく状況における人々の防護のための委員会勧告の適用」(ICRP勧告109号) ここのPDFページ数で67ページに、(113)~(115)項の記載がある。

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