すでに報道されているとおり、今年1月2日に起きた羽田空港でのJAL機と海上保安庁機の衝突事故に関し、運輸安全委員会は12月25日に、事故調査の中間報告に当たる「経過報告」及びその「説明資料」を公表した。
・令和6年1月2日発生 海上保安庁所属ボンバルディア式DHC-8-315型JA722A及び日本航空株式会社所属エアバス式A350-941型JA13XJの航空事故調査について(経過報告)(運輸安全委員会)
・航空事故調査経過報告説明資料(運輸安全委員会)
公共交通機関の重大事故の場合、運輸安全委員会による調査には長い期間を要する。そのような場合に、事故調査のいわば「中間報告」的な位置づけとして「経過報告」が公表されることがある。2005年4月25日に発生したJR福知山線脱線事故でも、約4か月半後の2005年9月6日付で「西日本旅客鉄道株式会社福知山線列車脱線事故に係る鉄道事故調査について(経過報告)」が公表されている。
JR福知山線脱線事故では、正式な事故調査報告書は2007年6月28日に公表された。報告書が全文275ページだったのに対し、経過報告は32ページだった。単独会社の単独事故という点も大きいかもしれない。
これに対し、今回の事故では「経過報告」だけで166ページに及んでいる。複数の会社、複数の機体が絡む事故だけに多くの要因分析が必要なことも理由だろう。最終的な事故調査報告書は、300~400ページくらいになる可能性が高い。
現在、私は経過報告説明資料のみ目を通したところだが、JAL機、海保機、管制塔の3者それぞれに重大な過失があったことが浮き彫りになっている。最終的には「複合事故」(様々な原因が少しずつ積み重なって起きた事故)として報告書が取りまとめられることになるのではないだろうか。分析、改善勧告を行うべき事項も多岐にわたるであろうことが、早くも読み取れる内容になっている。
運輸安全委員会に望むことがある。JAL機、海保機、管制塔それぞれに落ち度があり、それを指摘することに異論はないが、原因を「それだけ」に留めないでほしいということである。世界一過密といわれる羽田の混雑や、当研究会が指摘した航空管制官の不足問題など、事故の背景にある国交省の航空行政の問題点にも果敢に切り込んでほしいと思う。