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共産趣味者の目で見た日本共産党の現在と「これから」(1)

2023-11-23 22:25:49 | その他社会・時事
以前から当ブログでは何度か言及しているが、私には「共産趣味者」という一面がある。平たく言えば社会主義国(「元社会主義国」を含む)や世界各国の共産主義諸政党の動向を観察することを趣味とする人たちのことである。その共産趣味者としての一面で見ていると、最近の日本共産党には大いなる憂慮を感じざるを得ない。

日本共産党が組織的に大きく動揺するきっかけとなったのは、いうまでもなく今年1月、古参党員の松竹伸幸氏が自著の中で公然と党首公選制を要求し、党を除名されたことだ。民主集中制を原則とし「下級は上級に従う」という鉄の規律を持つ日本共産党とはいえ、党員、それも幹部や古参党員の除名といった話は、女性問題を起こした筆坂秀世氏以来、20年近く絶えて久しく、このご時世にあり得ないことだと私も思っていた。それだけに、松竹氏らの除名処分は驚きをもって迎えられた。

21世紀も5分の1が過ぎた2020年代である。日本共産党が不倶戴天の敵としている自民党でさえ、(最近はご無沙汰のようだが)一般党員・党友が参加してのオープンな総裁選を「やるときはやる」のに、ブルジョア階級支配を乗り越えて共産主義社会を目指す党が、労働者階級で構成される一般党員を党首選に参加させないでどうする、と私などは思ってしまう。私の周辺にいる人々もおおむね同じ意見であり、日本共産党がもっと開かれた組織になってほしいと願う人々は広範に存在する。

これまでも日本共産党は京都で異常に強かったが、それは「保守層にも顔が利き、対話もできる」松竹氏のような柔軟な党員が多く存在し、地元での党活動を通じて中間層のみならず、広く保守層の一部からの支持までも取り付けてきたからだと私は思っている。その多くが日本共産党系出版社で、京都に本社を置く「かもがわ出版」を拠点としてきた。かもがわ出版は、当ブログが「打倒対象」としている開沼博らを起用し、放射能被曝による健康影響を真っ向から否定する「しあわせになるための福島差別論」を出版するなど、決して許されない政治的過ちも多数犯してきた。外国からの「急迫不正の侵害」があった場合、国民合意があれば自衛隊を活用してもよい、とする自衛隊活用論を松竹氏らが唱えたことも、私は政治的過ちだと思っている。

それはともかく、現代民主主義社会では人々の意見は多様であり、その多様性を尊重することが組織運営の原則でなくてはならない。自衛隊活用論、放射線被曝の否定、そして一部党員による「性表現の自由を保障すべき」という意見も、私自身は日本のジェンダー不平等状態を見るととても容認する気になれない。ただ、日本共産党の中にそうした意見を唱える党員がいること自体は否定できない事実だし、彼らを幹部に登用するのは困難だとしても、党内民主主義を保障する手段として、そうした党員や意見の存在そのものは黙認しておく、という大人の対応もとり得たはずである。

そうした中、今年6月30日付けで「デイリー新潮」が「共産党で22年居座る「志位委員長」後釜の本命候補は女性議員 順調に行けば来年1月にもトップへ」という記事を配信したときは率直に驚いた。2024年1月に予定されている党大会で、日本共産党が田村智子副委員長兼政策委員長を委員長に昇格させ、山添拓氏を書記局長に据えるというものだ。しかも会員制月刊誌「FACTA」も2023年8月号で「共産党初の女性委員長「田村智子」の超インパクト」と題する記事で追随している。

さすがに、いくらなんでもそれはあるまいと私自身もつい最近まで懐疑的だった。第一あまりに大胆すぎる。だが、最近の各メディアの報道を見ていると、この人事の信憑性は高まってきたように思う。特に、NHKの共産党をめぐる最近の報道ぶりには非常に興味深いものがある。

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共産党 党大会の決議案示す“衆院選 野党共闘の再構築へ努力”(2023年11月13日)

共産党の中央委員会総会が開かれ、来年1月に予定される党大会の決議案が示されました。次の衆議院選挙に向けて野党共闘の再構築のため努力を続けるなどとしています。

共産党の中央委員会総会は13日、党本部で開かれ、志位委員長があいさつし、今の政治情勢について「岸田政権への国民の批判と不信の声が日増しに高まり、政権末期に近い様相を呈している」と指摘しました。

そのうえで「日本の政治を変える道は『市民と野党の共闘』しかないという立場に変わりはない。総選挙では、共産党の躍進の実現を最優先の課題とし、最大の力を集中する」と述べました。

そして田村政策委員長が、来年1月に4年ぶりに開かれる党大会で提案する決議案を示しました。

決議案では、次の衆議院選挙について、比例代表で躍進することを軸に据えて議席の増加を目指すとともに、野党共闘の再構築のため可能な努力を行うとしています。

また、党内で女性の議員や候補者を増やし、女性幹部を抜てきすることも含めジェンダー平等などを実現し、国民の多数から信頼される党に成長していくため、あらゆる努力を重ねていくとしています。

決議案は、党の活動方針となるもので、これまで通常、志位委員長が説明していましたが、13日は決議案を作成した責任者として田村政策委員長が説明しました。
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私が特に注目したのは最後の一文である。

日本共産党のように規律を重んじ、「下級は上級に従う」が原則の組織で、通常、委員長が行うべき職務を下位の役職の者が代行するなどということはあり得ない。旧ソ連や中国の共産党を見ても、こうしたことが行われるのは、本来その職務を行うべき者が病気などの重大事態で職務を執れない場合に限られる。旧ソ連では、共産党書記長の仕事を誰か他の人物が代行しようものなら、すぐさま「書記長重病説/死亡説」が流され、西側諸国のメディアは「書記長死去」予定稿の作成を始めるのが常だった。トップが健在であるときにそうしたことを行えば、それはトップの威信を傷つけレームダック(死に体)化を加速させるだけで、事実上政治的メリットはまったくないのである。

日本共産党は「通常、志位委員長が説明していましたが、13日は決議案を作成した責任者として田村政策委員長が説明しました」などともっともらしい説明をしているが、決議案を書いた本人だからといって誰もが決議案の説明者になれるわけではない。これが仮に、決議案を書いたのが末端のヒラ党員だったとして、その党員に対し、幹部会が「お前が書いたんだからお前が読め」なんてことがあるだろうか。官僚的な体質の組織ほど、あるわけがないのだ。

このように考えると、合理的な結論は1つに絞られる。「今回は田村政策委員長が決議案を書いたから、書いた本人に提案してもらうという異例の形を取りました。しかしこれは今回限りの措置であり、次の中央委員会からは田村さんが『正式な提案者』となる予定ですから、すべての日本共産党員はそのつもりでいるように」という党中央からのメッセージと考える以外にないのである。

考えてみれば、松竹氏と、それに連なって党首公選制を求めるメディアには猛烈な抗議や訂正要求を繰り返してきたこの党が、デイリー新潮の先の記事には抗議や訂正要求もしたとは聞かない。こうしたことも、私がこの人事の信憑性を高いと判断する根拠になっている。

おそらく、年明け1月に開催予定の党大会では、志位和夫委員長が議長に退き、田村智子委員長、山添拓書記局長とするデイリー新潮見立て通りの人事案が提案され、承認されることになるであろう。この人事がもたらすインパクトは、「FACTA」誌報道の通り大変大きなものになる。山添氏はまだ30代で若すぎるのではないかという人もいるかもしれないが、志位氏も30代で書記局長になったのだから何ら問題はないはずである。

今の野党第1党である立憲民主党には、もはや政局を左右できるほどの力はない。維新は、その力を持てるのではないかとの幻想を有権者に抱かせた時期もあったが、大阪万博をめぐる経費の膨張や税金無駄遣い批判で怪しくなってきている。国民民主党は、玉木雄一郎代表の個人的人気は高いが、自民党擦り寄り路線で成功した保守政党はない。それに引き替え、日本共産党は国会では小勢力でも、野党全体を動かし政局にするだけの力を持っている。新人事で世間をあっと驚かせることができれば、党員除名による暗いイメージは払拭され、新年以降の「野党政局」は日本共産党ペースで進むことになる。野党共闘に向け大きく動く起爆剤になるかもしれない。

こうした情報は、NHKが報じるくらいだから当然、官邸にはもたらされているだろう。だからこそ岸田政権が少しでも長く命脈を維持したいなら、日本共産党の新体制が軌道に乗る前に解散総選挙を仕掛けなければならないのに、岸田首相はみずから年内解散を封じてしまった。このまま年明けの通常国会召集までに解散総選挙を打てなければ、岸田政権は日本共産党の劇的復活によりのたれ死にすることになるかもしれない。

2024年は、新年早々日本共産党から目が離せない。

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