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【福島原発事故刑事裁判第28回公判】再び出廷、証言変えた証人 全面的防潮堤は必要だったのか? 不要だったのか?

2018-10-06 21:45:11 | 原発問題/福島原発事故刑事訴訟
福島原発事故をめぐって強制起訴された東京電力旧3役員の刑事訴訟。10月2日(火)の第28回公判、10月3日(水)の第29回公判の模様を伝える傍聴記についても、福島原発告訴団の了解を得たので、掲載する。次回、第30回公判は10月16日(火)、第31回公判は10月17日(水)、第32回公判は10月19日(金)に行われる。

防潮壁で浸水は防げた? 証言変えた今村・東北大教授

 10月2日の第28回公判には、今村文彦・東北大教授が再び証人に立った(前回は第15回、6月12日)。検察官側が今村教授に依頼した津波シミュレーションの結果が、明らかにされた。

 原子炉建屋などが建つ海抜10mの敷地(10m盤)の上に高さ10m(海抜20m)の防潮壁を、敷地の海側を全てカバーするように建設する。そこに東北地方太平洋沖地震の津波が襲来したら、どの程度浸水するのか。シミュレーションは、これを確かめるのが目的だった。

 今村教授は、計算によると、この防潮壁があれば50センチ以下程度の浸水に抑えられるので、施設に大きな影響は無いと考えられると証言した。事故は防げたのだ。

 一方で、今村教授は、シミュレーションの前提となっているように海側に長い防潮壁をつくることは合理的でない、とも証言した。今村教授は前回の公判では、地震本部の予測に従って15.7mの津波を想定すれば、海側に切れ目なく長い防潮壁を設置することになり、それがあれば、東日本大震災の津波も「かなり止められただろう」と述べていた。4か月前の証言を、今回覆したことになる。

 15.7m津波の対策をしていたら、事故は防げたのか。あるいは防げなかったのか。出廷するたびに変わる今村教授の証言に、傍聴者には腑に落ちない点が残ったように思えた。

●「10m防潮壁で事故は防げた」検察のシミュレーション

 検察官役の久保内浩嗣弁護士が、シミュレーションの内容について、今村教授に尋ねる形で進められた。敷地上の建屋などを考慮して、もっとも細かいところでは2mメッシュの精密なシミュレーションを実施。その結果、10m盤の上に高さ10mの防潮壁が全面に設けてあれば、敷地南側の隅角部で津波が瞬間的に跳ね上がって防潮壁を越える程度で、建屋周辺への浸水は50センチ以下に抑えられ、施設への影響は小さいことが明らかになった。

 これまで、刑事裁判では東電が作成した津波モデル「L67モデル」を用い、東電子会社の東電設計が計算して、浸水の状況を検討してきた。今回は、L67より波形の精度が高い津波モデル(今村教授らが2016年に発表(注1))で計算したのが特徴だ。

●「敷地全部には防潮壁不要」今村教授、証言を覆す

 検察側のシミュレーションは、敷地の海側を、すっぽりカバーするように防潮壁を築くことが前提になっている。一方、弁護側は、15.7mの津波対策に、こんな長い防潮壁は不要で、「北側、南側など一部だけに作ることになったはずだ」と、「くし歯防潮壁」を主張していた。その場合、東北地方太平洋沖地震の津波は防ぎきれず、広範囲に浸水する(第4回公判)。

 それについて、今村教授は6月の証言では「全面に必要」と述べ、「くし歯説」を否定していた。検察官役の久保内弁護士との間で、以下のようなやりとりがされていた。

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 久保内「福島第一原発の全体の見取図に、ベストな防潮堤の設置位置を、赤ペンで記入してください」

 (今村教授、図のように書き入れる)
拡大
今村教授が6月の公判で「ベストな防潮堤の設置位置」として書き込んだ場所(赤ペン)。海渡弁護士による再現。


 久保内「ご記入いただいたベストな防潮堤を設置した場合、そこに今回の津波が来た場合、越流して浸水したかどうか、それについては証人はどんなふうにお考えになりますか」

 今村「まずは防波堤の南側と北側ですね、あそこに20mの防潮堤を設置していただき、かつ、いろんな建屋の前にも、これは高さはちょっと議論なんですけれども、それを、ある程度の高さを設置いただければ、いわゆる津波の陸上からの越流は、かなり止められたと考えています」

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 ところが今回の証言では、南側と北側など一部だけに設置すれば良いという考えを示した。 

 前回の証言で、南部と北部以外にも「ある程度の高さ」が必要な理由として、今村教授は港湾内部の共振による増幅がありうることを指摘していた。今回の証言では、それを採用しなかった。その理由について、弁護側の宮村啓太弁護士と今村教授のやりとりがあったが、いつもは明快な宮村弁護士の尋問にしてはわかりにくく、根拠も明確に示されず、すっきりしなかった。

●事故は回避できなかったか。残る疑問

 実際には、東電が考えていた津波対策は、今回シミュレーションしたような10m盤の上の10m防潮壁ではなかった。沖合防波堤の設置と4m盤を取り囲む防潮壁の組み合わせや、海水ポンプや建屋の水密化などを「有機的にむすびつけること」を検討していた(第7回公判など)。それが施されていた場合、311の津波を防げたのか、あるいはそれでも事故は起きたのか、まだ明確になっていない。

 また、「運転停止せずに工事を進めることができたのかどうか」は、大きな疑問として残されたままだ。

 津波対策をとりまとめていた東電の中越沖地震対策センターの山下和彦所長は以下のように検察に述べていた(注2)。

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 「10m盤を超える対策は沖に防潮堤を造ることだが、平成21年6月までに工事を完了することは到底不可能であった。工事期間は4年かかる。最悪、バックチェックの最終報告書の提出期限を守れなかったとして、『工事が終わるまで原発を止めろ』と言われる。火力発電では燃料に莫大な費用がかかる。土木調査Gの提案どおりの工事では、原発をとめるリスクがある」(甲B57、平成24年12月4日付検面調書)。

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 「土木学会評価で現状でも安全で、不確かさの考慮で止める必要はないという東電の考え方だったが、従来より3倍も高い水位を示しながら、安全性を確保されているとの主張が保安院ないし安全委員会に受け入れられるのか確証はなかった。保安院やBCの委員、地元から、工事完了までプラントを止めるよう求められる可能性があった」(甲B58、平成25年1月28日付検面調書)。

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 当初の予定通り、2008年から2010年にかけて対策に着工しようとすれば、それ以降の数年間かかる工事期間中、運転停止を迫られていた可能性は高い。2011年当時、原発が止まって冷えた状態だったならば、津波に襲われても、ここまでの事故にはならなかっただろう。

注1)今村文彦ら「修正された東北地方太平洋沖地震津波モデルによる福島第一原発サイトへの影響再評価」土木学会論文集B2(海岸工学)、Vol.72,No.2,I_361-I_366,2016

注2)法廷で読み上げられた山下和彦氏の検察官面前調書の要旨(2018年9月5日 第24回公判期日)

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【金曜恒例】反原発北海道庁前行動(通算309回目)でのスピーチ/3.11前に戻りつつある思考放棄、政府追随の裁判所

2018-10-05 21:29:21 | 原発問題/一般
 みなさんお疲れ様です。

 四国の伊方原発を巡り、9月末に相次いで運転容認の不当決定が裁判所で続きました。先週に続き、2週連続で裁判の話になりますが、今日はこのことについてお話ししたいと思います。

 福島第1原発事故後、裁判所が思い切った原発運転差し止めの判断をしていた時期も一時はありました。しかし今年に入ってからはすべて運転容認の判断でした。日本で原子力施設が運転を初めてから40年間でたったの2回しか住民側が勝訴できなかった3.11前に裁判所ははっきりと戻りつつあります。こうした不当な判断の背景にあるのは安倍政権への追随と思考放棄だと私は思います。

 9月25日、広島高裁で行われた伊方原発3号機の運転差し止め仮処分に対する異議審では、四国電力が行った異議申し立てを認め、昨年12月、同じ広島高裁の別の裁判長が行った運転差し止めの仮処分命令を取り消しました。昨年12月の仮処分命令が差し止めの根拠とした熊本県・阿蘇山の破局的噴火について、一転して想定を必要とせず、伊方原発の立地に不適切な点はないとの不当な判断です。決定は、阿蘇山噴火の可能性について「現在の知見では、その前駆現象を的確にとらえること」「具体的予防措置を事前にとること」はできないとした上で、毎日火山活動が続き、爆発的噴火もたびたび起こしている阿蘇山の噴火の発生頻度は著しく小さいと根拠もなく決めつけました。

 とりわけ許しがたいのはこの部分です。「国は、破局的噴火のような自然災害を想定した具体的対策は策定しておらず、これを策定しようとする動きがあるとも認められないが、国民の大多数はそのことを格別に問題にしていない」「破局的噴火によって生じるリスクはその発生の可能性が相応の根拠をもって示されない限り、原子力発電所の安全確保の上で自然災害として想定しなくても安全性に欠けるところはないとするのが、少なくとも現時点における我が国の社会通念であると認めるほかない」。

 これは、火山学者などの専門家でない原告住民側に火山発生の危険性の立証という不可能な難題を強いるものといえます。国が対策を講じていないから破局的噴火の発生可能性が低いといわんばかりの論理も完全に破たんしています。

 広島高裁に続き、大分地裁も9月28日、地元住民が行った運転差し止めの申し立てに対し「社会通念」を持ち出しました。福島原発事故後に改定された原子力規制委員会の「新規制基準」に基づいて、伊方3号機の危険性は「社会通念上無視しうる程度まで管理されている」としたのです。住民側の河合弘之弁護団長が「極めて無反省。『社会通念』で逃げるなら法律など要らない」と厳しく批判したのは当然です。

 火山リスクについて国民の大多数が問題にしていないとの指摘もきわめて不当です。日本世論調査会の今年3月の世論調査では、原発を「すぐゼロ」「将来ゼロ」にすべきとの回答はあわせて75%に達しています。国民の圧倒的多数は危険な原発の廃止を望んでいます。火山リスクを考慮せず、従来通り原発を運転してもよいとの「社会通念」などどこにも存在しないのです。

 今年7月、福井県・大飯原発3号機を巡って、名古屋高裁金沢支部は、原発そのものを法的に禁止・廃止することを「大いに可能」と認めながら「その当否を巡る判断は司法の役割を超えるものであり、……政治的な判断に委ねられるべき事柄」であるとして福井地裁が行った運転差し止めの仮処分を取り消しました。安倍政権に追随するあまり、司法が原発について判断を避け、実態のない社会通念などを理由に逃げる傾向が強まっています。かつて、自衛隊を違憲と認めるよう市民が求めた訴訟で、司法が憲法9条と自衛隊との関係について「政府による統治行為であり司法判断になじまない」として判断回避の不当判決を続けた時期がありました。最近の原発訴訟では、原発版「統治行為論」ともいうべき判断回避の論理が裁判所の主流を占めつつあるように見えます。

 しかし、裁判所が政府の「統治行為」を理由に自衛隊の違憲判断を避け続けても、市民の自衛隊に対する異議申し立てが減ることはありませんでした。2015年に強行された安保法制の国会論議でも、政府はまともな説明ができず、自民党が推薦する参考人でさえ現状の自衛隊を違憲と発言して政府与党を慌てさせました。法律の成立後も批判は続き、戦争法違憲訴訟は全国22地方裁判所の原告総数7516人まで広がっています。

 原発も同じです。裁判所は(1)実態のない社会通念(2)安全と証明されたわけではない規制基準への形式的な「適合」(3)地震や火山噴火がいつどこで起きると確実に証明できるものはない――の3点を主な根拠として住民の要求を退けたに過ぎず、原発の安全性を証明できたわけではありません。彼らのいう専門家、つまり御用学者の安全論を根拠に、形式的にでも原発の「安全性」の証明を「可能」としてきた福島原発事故前とは根本的に異なっています。原発を巡る矛盾はますます深まり、原発廃止を求める世論もこの7年半まったく揺らいでいません。その意味では、形の上で原告住民側の敗訴であっても、やはり3.11前に戻ることはできないのです。

 今後はこうした司法の弱点を突くと同時に国の原発推進政策を変えさせる闘いが必要です。この闘いは苦しく、時に希望を見失いそうになることがありますが、しかし沖縄県知事選では基地に反対する玉城デニーさんが勝ちました。心をひとつにしたウチナンチュのように、私たちも心をひとつにしましょう。県民の方を向かずに安倍政権の方ばかり向く候補者を退けた沖縄県民のように、私たち道民も心をひとつにして、道民よりも中央の顔色ばかり気にしている、植民地の総督のような知事は追放しましょう。高橋知事、私はいつもはあまり言いませんが、今日は言わせてもらいます。道民の方を向かない知事、道民の立場で判断しない、できない知事は要りません!

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