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【金曜恒例】反原発北海道庁前行動(通算311回目)でのスピーチ/最終盤を迎えた東電刑事訴訟-武藤元副社長の被告人質問を見て

2018-10-19 21:58:09 | 原発問題/一般
 皆さんお疲れさまです。

 すでにメディアでも報道されていますが、東京電力旧経営陣の刑事訴訟で、武藤栄元副社長に対する被告人質問が行われました。これは、検察側、弁護側、裁判官が被告人に質問する手続きで、論告求刑に先立って行われるものです。最大の見せ場であると同時に、いよいよこの裁判も終盤であることを示しています。

 被告人質問までに有力な証拠はほぼ提出されているため、ここで新たな事実が明らかになることは通常、ほとんどありません。しかし、事件に対する被告人の姿勢、態度、考えなどが明らかになるため、実際に法廷に出されている証拠並みかまたはそれ以上に被告人質問での被告人の印象は量刑に影響を与えることがあります。

 強制起訴されている3人――勝俣恒久元会長、武藤栄元副社長、武黒一郎元副社長の中で、武藤氏の質問が最初だったのは、彼が3人の被告の中で最も津波対策、そして2008年の対策「先送り」の決定に深く関わっており、津波対策のキーマンとされるからです。

 武藤被告の被告人質問での主張はメディア報道の通りで、津波予測の根拠である地震本部の長期評価や、東電設計の津波予測を「信頼できない」と否定しました。「津波予測をもう少し低くすることはできないか」という部下の法廷での発言に対し、自分はそんなことは言っていない。土木学会に改めて評価をやり直させようとしていた自分自身の当時の判断について、津波対策「先送り」とされたことに「大変心外」というものでした。

 武藤被告の主張は、ここ十年くらいの裁判の傾向を捉え、業務上過失致死傷罪の裁判では「予見不可能に逃げ込んで無罪を勝ち取る」という弁護側の基本戦略に沿ったものといえるでしょう。しかし、今回の原発事故裁判に限って言えば筋が悪すぎるように思います。そもそも地震本部は日本の一流の地震学者が集う国の機関であり、また東電設計は東電の子会社です。一方、土木学会は電力会社、JR、ゼネコンなどが集まって作る親睦団体であり、学会というアカデミックな名称とは裏腹に、「日本土木業協会」に名前を変えた方が実態にかなっています。要するに、何かと批判の多い大型公共事業で利益を得ている企業の利権団体なのです。国の機関も子会社の津波予測も、自分たちに都合が悪いからと言って耳を貸さず、「オトモダチ」なら自分たちに都合のいいデータを出してくれるだろう、という東電と武藤社長の態度を見ていると、自分たちに都合の悪いものは公文書でも改ざんし、オトモダチにばかり便宜を図るどこかの国の総理大臣と同じです。もし土木学会も「津波対策が必要」という結論だった場合、武藤副社長はまたどこか別のところに評価を依頼し直すつもりだったのでしょうか。じゃんけんで負けてから「やっぱり3回勝負にしよう」と言い出す小学生のようで、往生際が悪いと言わざるを得ません。

 自分たちにとって都合の良い結論が出るまで何回も津波評価をやり直させる東電と武藤副社長の態度をどのように表現するか。被害者の立場からはやはり「先送り」としか言いようのないものです。武藤被告がそれに「心外」を表明したことに対しては、こっちこそ心外と言いたい気分です。皆さんの会社にもいませんか? 仕事がなかなか進まず、上司や周りの人になぜ進まないのかと聞かれたら「慎重に丁寧に進めようとしていただけです」という人。よりよい仕事にするために慎重、丁寧に進める、様々な人の意見を聞くということと、自分たちにとって都合のいい結論が出るまで堂々巡りを繰り返し、その間は何も進めないというのは根本的に違います。武藤被告の態度は、丁寧や慎重という単語をやるべきことをやらない言い訳に使っていただけであり、許されないことです。

 このことを主張すると、「電力会社は公益性が高いとはいえ民間企業。民間企業は利益を出すビジネスだから公的機関のように費用対効果を考えずにコストを投入するのは無理」だとして電力会社を擁護する人が必ずと言っていいほど現れますが、それは間違っています。必要なコストを必要なだけ投入することができるように、電力会社は競争を制限された環境の中で、総括原価方式が認められ、必ず2%の利益が上がるように電気料金を設定できる体制が保証されてきました。今でこそ電力自由化で多少揺らぎ始めていますが、福島第1原発事故が起きた2011年当時はまだ一般家庭の電力は自由化される前で、こうした言い訳は成り立ちません。福島第1原発の津波対策にコストがかかるなら電気料金にそれを転嫁すればよいだけであり、なぜそのコストの投入を先送りしなければならなかったのかは疑問のままです。東電は今年になって、福島第1原発の敷地内から汚染水が海に流れ出さないようにするための「津波対策」として、防潮堤の増設工事をすると発表しました。福島第1、第2原発の廃炉が決まり、原発が利益を出さなくなった今頃になってそのコストを投入できるなら、なぜ10年前に同じことができなかったのか不思議で仕方ありません。私が検察官役の指定弁護士なら、そのことを武藤被告に問いただすと思います。

 裁判は年内にも論告求刑となり、春までに地裁で判決が出ると見られています。私は有罪を確信していますが、政権への忖度がはびこる司法、それも権力に最も近いヒラメ裁判官の集合体といわれる東京地裁だけに予断を許しません。市民の力で法廷を包囲し、よりよい判決を出させるために、声を上げていきましょう。

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