学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

五感を使って体験すること

2021-01-20 20:37:16 | その他
大寒の今日は雲ひとつない青空となりました。昼休みに戸外へ出たら、黄土色のお腹をしたジョウビタキを見かけ、そのかわいらしさにしばし見とれてしまいました。日もずいぶん長くなりましたし、少しずつ季節は進んでいるようですね。

先日、お客様から、美術の知識を身に付けるためにどう勉強したらいいかと尋ねられました。私はいい加減に勉強してきましたから、改めて聞かれると返事に窮してしまいます。私の場合、いわゆる日本美術史のようなテキストを読んでも退屈過ぎて、全く頭に知識が入ってきませんでした。知識を手っ取り早く得るために必要なのは、五感を使って体験すること。そこで、その本を持って、東京国立博物館に何日か通い詰めて、本を読んでは本物の作品を観る、ということをひたすら繰り返しました。すると、目の前にある作品が美術史のなかでどう位置づけられるのか、が、始めはぼんやりと、そして次第にくっきりとわかってきました。さらに作品、それ自体が持つインパクト、精密さ、など写真版ではわからないことが、しっかりと観察できる強みがある。それをメモ帳で書き取っていくのです。私の結論としては、知識を得るうえでは最も大切なことは本物の作品に会いに行くことである、というものです。

このやり方は、学芸員となった今でも続けていますし、これからも続けていかなくてはいけないことと思っています。もし、美術の知識を身に付けたいという方がいらっしゃいましたら、方法のひとつとして実行してみてはいかがでしょうか。参考にしていただけますと幸いです。