語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>放射性物質から体を守る食品 ~味噌・海苔・茶~

2011年06月12日 | 震災・原発事故
(1)味噌
 チェルノブイリ原発事故後、日本から輸出量が急増し、旧ソ連や欧州の人々が競って食べたものがある。味噌だ。
 きっかけとなったのは、秋月辰一郎『体質と食物』だ。英国で出版された。
 秋月氏は、1916年生。生来虚弱だったが、89歳まで生きた(2005年没)。しかも、長崎の爆心地から1.4キロの距離にあった浦上第一病院(現・聖フランシスコ病院)で被曝しながら。当時、秋月氏は同病院の医師だった。氏も、同じ病院の看護婦(当時)で今も健在な細君(93歳)も、従業員も、患者の救助、付近の人々の治療にあたったが、原爆症は発症していない。「その原因の一つは『わかめの味噌汁』であったと私は確信している」と、氏は著書で書いている。
 原爆投下後、氏は玄米飯に塩を加え、味噌汁を毎日従業員や患者に食べさせた。そもそも、以前から院内に備蓄された味噌とわかめを使った味噌汁が日常食だった。被曝後は、砂糖は許可せず、近くでとれた南瓜や茄子の味噌漬けを食べさせた。
 空中の放射線量も高く、当然、南瓜や茄子のとれた土壌も汚染されていた。生き延びた秘訣は味噌にあった。【渡邊敦光・広島大学原爆放射線医科学研究所名誉教授】
 渡邊名誉教授、爆放射線医科学研究所の実験によれば、味噌には外部被曝・内部被曝の両方に対する防護効果(小腸細胞の再生・セシウム137が筋肉から減少)がある。
 味噌の産地や素材を変えた実験も行われている。唯一差が出たのは、熟成期間の違いだった。
 熟成段階で生まれるメラノイジンが放射線防護効果のある成分かもしれない。【渡邊名誉教授】
 メラノイジンは、醤油にも含まれる。実験では、味噌に比べると結果は劣るが、小腸の再生に一定の効果があった。
 納豆にも、放射性物質からの防護効果がある、とされる。大豆の発酵時に生まれる成分に何らかの防護効果があるのではないか、と考えられている。
 ただし、防護効果を高めるには、日頃から味噌を食べていることが重要だ。「一日2杯の味噌汁を飲んでほしい」【渡邊名誉教授】

(2)海苔
 チェルノブイリ原発事故では、もうひとつ注目を浴びた食品がある。スピルリナだ。海苔の一種で、藍藻綱ユレモ目に属する。たんぱく質が多く含まれ、日本では健康食品として販売されている。
 ベラルーシの放射線医学研究所の実験によれば、スピルリナ服用によって、被害の大きかった地区の子どもの尿中の放射線レベルが減少した。スピルリナには、体内のセシウムやストロンチウムを吸着し、排出する働きがある、と考えられている。
 内部被曝が怖い理由の一つは、放射線が体内の水分子を攻撃し、毒性の強いフリーラジカル(OHラジカル)という分子を生むからだ。OHラジカルは、活性化すると細胞膜に穴をあけ、その穴から細胞内に入った放射性物質が遺伝しを傷つける。その結果起きた細胞の突然変異がガンへと進行する。
 しかし、OHラジカルは抗酸化作用のある物質で除去できる。
 味噌に含まれるメラノイジン(アミノ酸と糖質が結合してできる)も、スピルリナに含まれるβカロチンやビタミンEも、強い抗酸化作用を持っている。

(3)茶
 サトウキビに付着している黒酵母に含まれるβグルカンや、お茶に含まれるカテキンには抗酸化作用がある。免疫力を高める。DNAは、免疫力があれば自力で回復する。ただし、お茶のなかでも太陽光下で新芽を育てる煎茶や番茶などの苦いお茶にしかカテキンは含まれていない。【長谷川武夫・京都府立医科大学特任教授】
 赤ワインに含まれるポリフェノールも抗酸化作用がある、と言われている。

 以上、澤田晃宏・福井洋平(編集部)「放射性物質から体を守る食品 一日2杯の味噌汁が効く」(「AERA」2011年6月13日号)に拠る。
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【震災】小沢一郎は終わったか ~政治の停滞~

2011年06月12日 | 震災・原発事故
●もう表舞台に出ない方がいい(山口二郎・北海道大学大学院教授)
 今は政治的空白を作る時期ではない。内閣不信任否決(6月2日)は評価できても、採決前に鳩山前首相と菅首相が密室で協議したことは理解できない。
 政党政治の基本原則は民主主義だ。首相退陣を条件に造反を回避させるのは、政党政治の基本政治に反する。
 菅首相は、事態収拾のため退路を明確にし、復興への道筋を具体的につけなければ求心力は保てない。
 菅首相は、結局、挙党態勢を築くことができなかった。
 小沢一郎元代表の周辺で新党の話が出ているが、彼は自民党時代から政争ばかりしている。今回、不発に終わったことで、政治家としての役割は終わった。もう、表舞台に出ないほうがいい。
 話し合いで重要事項を決められない民主党は、政党の体をなしていない。民主党が国民の信頼を回復させるためには、鳩菅時代を終わらせる必要がある。しかし、若ければよい、というものでもない。ポスト菅は、鹿野道彦農水相か。安定感があり、政府を動かす実務的な能力を兼ね備えている。彼が衆議院任期満了まで党内融和を図り、次の世代につなげるのが望ましい。

●首相が零点なら国民も零点(佐藤優・作家/元外務相分析官)
 今回の不信任騒動に一番問題のあるのは自民党だ。政権は実力で取るべきなのに、復興第一の時期に、民主党内に手を回し、権力を奪取するゲームを考えた。建設的な政策的提言をして次の選挙で勝つ、というのがまっとなやり方だ。そういう努力は何一つしていない。
 次に問題なのは小沢一郎元代表だ。菅直人は、国民が決めた国会議員が選んだ首相だ。それを野党と組んでひっくり返そうとした。国民を愚弄している。小沢を追いつめたのは菅首相だが、小沢のやり方は民主主義の原則に照らして支持できない。
 菅首相は、日本の政治家のメンタリティを考えた場合、最も責任を取らざるを得ない状況に追いこまれている。菅首相が零点ということは、選んだ国民が零点ということだ。
 国際社会は、菅首相に一定の理解を示している。米国大使館やCIAは、少なくとも9月までは菅政権がもつ、と判断した。5月のサミットでオバマ大統領が9月に菅首相を招くと明言したのは、日本政治情勢が安定してほしい、というメッセージでもある。

●浅ましい自民に乗った小沢氏(浜矩子・同夜大学大学院ビジネス研究科教授)
 今回の政争では、内閣不信任案を出した自民党の浅ましさが目立った。解散総選挙に持ちこみ、09年の選挙で落選した議員を復活させたい魂胆。それに小沢一郎元代表などが乗っかってしまった。茶番にうつつを抜かしている場合ではない。
 自民党は、長期政権の上にあぐらをかき、日本中に道路を造るため建設国債を発行してバラマキを行ってきた。民主党の子ども手当もバラマキと言われるが、投資の対象が「コンクリートから人」に変わっただけで、人に投資したほうがまだいい。
 赤字国債など自民党時代の負の遺産を処理している最中に、足を引っ張ることばかりしている。そんな党が政権についても借金体質は変わらず、財政はさらに悪化するだろう。
 大連立は、結局のところ民主主義の本質違反だ。容易に、そこへ行くべきではない。

●不信任を言うなら政策を提示せよ(五十嵐敬喜・法政大学法学部教授)
 復興構想会議の検討部会のメンバーでもある自分の元には、被災地から切羽詰まった声が連日のように寄せられる。状況打開のためには、国や自治体が一刻も早く復興策をまとめねばならない。
 国は、やる気のあるところにいち早く資金、物、知恵をつぎ込むべきだが、これには法律や予算がいる。国会が動かねばならない。ところが、現実は不信任騒動だ。このまま放っておくと復興策は秋になる。それまでに多数が疲弊して亡くなる。被災した議員もいるのに、なぜ分からないのか。
 誰が総理であろうと、やるべきことは明確だ。まずは原発の冷温停止と放射能の拡散防止。そして、すべての被災者の救済と復興だ。莫大な費用をどう調達するか。
 不信任を唱える人は、自分の政策をはっきり打ち出すべきだ。しかるに、今回は前向きな話がほとんどない。 

●大連立構想に隠された罠(金子勝・慶應義塾大学経済学部教授)
 今回の混乱の直接の震源地は、小沢一郎元代表だ。震災後の復興対策に遅れる菅政権への批判を繰り返し、菅政権が退陣して次の内閣が自民党と大連立を組めば震災復興が一気に進むかのような錯覚を起こしている。しかし、原発安全神話を言い続けてきた自民党の罪は大きい。過去の原子力行政の過ちから国民の目をそらせようとする意図が“大連立構想”に隠されている。
 小沢グループは、菅首相に対する批判を繰り返しても対案は出せないでいる。選挙には強い政治家だが、政策は立てられない。そこに自公が乗っかったのだ。
 今の民主党には、政策の議論がない。同じ党内でも意見の食い違う物が対立したままだ。この状態で誰がトップに立っても、同じ過ちを繰り返すだけだ。今の最重要課題は、大震災からの復興に焦点を絞り、マニフェストに照らしてどこまで実現できるか、だ。復興を最優先させつつ何ができるかをはっきりさせ、まずは民主党内で合意を形成して政策目標を国民に提示することが先だ。内閣総辞職やポスト菅選びは、それから考えるべきだ。被災地は問題が山積みしている。政治が停滞している場合ではない。
 福島第一原発からの放射能汚染の被害を最小限に食い止めるため、放射線量の計測箇所を増やし、放射能マップを作り、汚染度の高い地域は立ち入り禁止にすべきだ。原子力からのエネルギー転換、社会保障の再建、東北の農林水産業を立ち直らせて雇用を創出することに全力をそそいでもらいたい。

 以上、記事「豪腕は終わったのか」(「サンデー毎日」2011年6月19日号)に拠る。
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