語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>電気料金は値下げできる ~高コストの原発~

2011年06月26日 | 震災・原発事故
(1)高コストの原発
 「総括原価方式」のため、巨額の建設費と出費を要する原発をつくればつくるほど電力業界は高い電気料金を徴収できる。一般企業はコスト削減に必死なのに、電力業界はむしろ無駄な出費を増加させることで莫大な利益をあげている(諸悪の根源)。
 政府試算(04年公表)によれば、1kW/時あたりの発電価格は次のとおり。
  ・液化天然ガス・・・・6.2円
  ・石炭火力・・・・5.7円
  ・石油火力・・・・10.7円
  ・一般水力・・・・11.9円
  ・原発・・・・5.3円
 しかし、上記の数値には、巨額の研究開発費や立地対策費が含まれていない。特に、夜間の原発余剰電力を利用するために建設されてきた巨大な揚水発電ダムの莫大な費用を算入すると、原発が最も高くなる。ちなみに、上記の数値は原発と火力では稼働率を80%と仮定しているが、原発の稼働率はせいぜい60%(火力は30%)だ。
 政府の一般会計のエネルギー対策費と特別会計(電源開発促進対策特別会計=電源三法交付金)の財政支出を加えた全体の発電コスト(70~07年度平均)は、次のとおり。
  ・一般水力・・・・3.98円
  ・火力・・・・9.9円
  ・原子力・・・・10.68円(原子力+揚水発電・・・・12.23円)
 今の高い電気料金には、これらのコストが反映しているのだ。

(2)放射性廃棄物の処理
 (1)に加えて、放射性廃棄物の処理に巨大なコストがかかる。六ケ所村再処理工場を40年間動かすと、建設・操業・廃止を含めた再処理費用に11兆円、放射性廃棄物の処理・貯蔵・処分、MOX燃料の加工など関連する他の費用を合わせて18兆8,800億円に達する。【04年の政府総合資源エネルギー調査会の報告】
 実際には、その4倍の74兆円に膨らむ可能性がある。
 原発に使ってきた無駄で巨大な出費をなくせば、電気料金は下がる。事実、自家発電の特定規模電気事業者(PPS)の電気料金は、電力会社のそれよりも2割前後安い。

(3)自家発電
 原発はほぼ5,000万kWだが、今夏のピーク時には福島第一廃炉が決まり、福島第二、女川、東海第二が全滅し、浜岡が停止、柏崎刈羽が3基再起不能で停止、さらに全土で定期検査中の原発が運転再開不能のため、事実上1,300万kWしか稼働しない。
 原発より産業界の保有する自家発電6,037万kW弱(10年9月末現在)のほうが、はるかにバックアップとしての発電能力を持っている。
 自家発電をフルに活用すれば、現在のライフスタイルを変えず、節電せず、工場ラインを止めなくても電気を賄える。
 「週刊朝日」誌の取材に対し、全国の電力会社は他社受電の発電能力を秘匿した。なぜ電力会社は隠そうとするのか。それは、電力を民間企業から安く買って高く売り、暴利をむさぼっているからだ。この暴利の構造を知られると、産業界からも一般消費者からも、送電線を自家発電の民間企業に開放せよ、という世論が生まれる。誰もが送電線を自由に使えるようになると、地域を独占してきた電力会社の収益源の牙城が崩れる。9つの電力会社にとって、東電が福島原発事故を起こした今となっては、原発の確保より送電線の確保のほうが独占企業としての存立を脅かすもっと重大な生命線だ。そのため、自家発電を買い取らずに、15%の節電という行動に出たのだ。

 以上、広瀬隆「原発は低コストのウソ」(「週刊朝日」2011年7月1日号)に拠る。

 古賀茂明・経済産業省大臣官房付の議論は、東電リストラ策の徹底だ(「【震災】東電の電気料金は半額にできる ~左団扇の東電~」)。
 他方、広瀬の議論は、原発を廃止すれば電気料金は値下げできる、という議論だ。ただし、その議論(殊に(1)と(2))は、専ら「東洋経済」11年6月11日号の記事「強弁と楽観で作りあげた『原発安価神話』のウソ」の焼直しだ【注】。ただし、この記事を元にしていることは明記しているし、データは調べ直している。

 【注】例えば「東洋経済」誌のくだんの記事はいう。・・・・原子力の発電コストは、3つの要素で成り立つ。(a)燃料費や人件費など電気を作る上でかかる「発電費用」。(b)発電に伴って出る使用済み燃料を再加工したり廃棄物を処理する費用(「バックエンド費用」)。(c)「立地費用」。・・・・驚くべきことに、原発の発電価格5円には、(a)と(b)の費用しか含めていない。しかも、不備がある。(a)から揚水発電のコストが外されている。そして、(b)が極めて過小評価されている。18.8兆円でも十分巨額だが、実際にはその4倍、70兆円規模に膨らむ可能性がある、云々。
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【震災】東電解体案(古賀ペーパー)の古賀茂明氏にクビの宣告

2011年06月26日 | 震災・原発事故
 公務員制度改革を不十分だと批判し、大臣官房付という閑職に置かれたキャリア官僚・古賀茂明氏(55歳)【注1】に対し、松永和夫・経済産業省事務次官【注2】が6月24日ごろ古賀氏を呼び、正式に退職を求めた。退職を求める理由や再就職先は示されなかった。
 同省は10年7月、非公式に退職を求めたが、これを問題視した野党が国会で批判。うやむやになっていた。

 【注1】公務員制度改革批判は、『日本中枢の崩壊』(講談社、2011)で詳細に展開されている。なお、東電救済スキーム批判については、「【震災】東電の電気料金は半額にできる ~左団扇の東電~」、「【震災】原発>握りつぶされた「東電解体案」 ~東電の政治力~」参照。
 【注2】3月下旬、東電のメーンバンク三井住友の頭取にして全国銀行協会会長(当時)の奥正之頭取と秘かに話し合い、三井住友以下9行が東京電力に緊急融資した約2兆円の保証を与えた、あの松永次官だ(「【震災】原発>経済産業省の「電力閥」」)。

 以上、記事「政権批判のキャリア官僚に退職求める 経産事務次官」(2011年6月26日7時27分 asahi.com)による。
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