福島第一原発の収束作業が、膨大な汚染水のため混迷をきわめている。原子炉冷却のために毎日注がれてきた水は、敷地内に溜まって、すでに10万トン。工程表の実現が疑問視される理由の一つだ。異様なことに、この汚染水の詳細について、ろくに情報が明かされていない。
情報開示を求めても、政府は応じない。サンプル提供も断られている。【太田富久・金沢大学大学院教授】
しかも、この汚染水が一部漏出している。
消えた水は、例えば3号機では少なくとも4,270トン。これは海だけではなく、地下水に出た可能性が十分にある。しかも、津波でどさっと入った水が汚染されて漏れでた分もある。漏出した汚染水は、全体で数千トン単位、最悪で1万トンを超えている可能性もある。国会で質問したが、政府からは具体的な答はなかった。隠蔽以前に、政府は消えた汚染水の量すらきちんと把握していないらしい。これが一番の問題だ。【浅尾慶一郎・衆議院議員】
損壊した原子炉の中の放射線量は、想像を絶するほと高くなっている。注水の汚染度も尋常ではない。核燃料再処理工場で扱う高レベル放射性廃液並みでもおかしくない。【青山繁晴・独立総合研究所社長】
すでに1~3号機でメルトスルーが起こったことが判明している。実際には、さらに格納容器や建屋の床に溶けた部分があって、そこから高濃度汚染水が地中に吸い込まれていることが考えられる。他の号機では、原子炉建屋とタービン建屋の地下1階を結ぶ配管の周辺や、屋外のトレンチの亀裂から漏れているのではないか。【桜井淳・技術評論家】
東電をはじめとする原発関係者は、「水」の重要性について認識が不足していた。原発で水を受けもつ業者を格下扱いをして、水の扱い方を勉強してこなかった。
だから、今回のような大事故が起こると、汚染も排水も考えずに「とにかくぶっかけろ」となる。汚染水が大量に溜まって、初めて大慌てしている。【早川哲夫・麻布大学生命・環境科学部教授】
汚染水に含まれる放射性物質のうち、セシウム、ストロンチウムが危険だ。プルトニウムが最も危険だ。原発の敷地の内外でプルトニウムが検出されている。汚染水にもプルトニウムが含まれているのは間違いない。プルトニウムは重い元素なので、大気中では遠くへ飛散する量は少ない。しかし、地下水の中では関係ない。
地下水は、やがて海と川へ流れこむ。川から上水道が引かれているので、水道水が高濃度放射性物質に汚染される可能性がある。すでに継続的に水道水をモニタリングしている所もあるが、もっと細かく厳密に警戒する体制づくりが必要だ。【太田教授】
地下水から直接汲み上げる井戸水も要注意だ。飲料水にしている家庭もあるし、生活用水や農業用水として使っているケースも少なくない。だから、特に浅い水を使っている井戸水は、検査が急がれる。汚染していない、という結果が出ても、長期にわたり定期的に検査しなくてはならない。相当の手間とコストがかかる。
地下深く流れている水の場合、非常に長く汚染の影響が続く可能性がある。地下1,000mの水を調べたら、江戸時代に降った雨水だったことがある。数百年後、深いところから汲み上げた井戸水に福島第一原発から今漏れている放射性物質が混じっている、というような事態も生じ得る。【伊藤伸彦・北里大学教授】
福島第一原発は、氷河期に形成された5mほどの堆積層の上に建設されている。その下には、水を通しにくい粘土層がある。漏出した水の大半は、スポンジのような堆積層にしみこんで地下水となり、ごく少量が下部の粘土層にしみこむ。そして、地勢の傾きに沿って、海に少しずつ流れていく。堆積層で地下水に混じった汚染水がすべて海に流れるのに5~10年かかる。粘土層にしみこんだ水は数百年だ。【丸井敦尚・産業技術総合研究所地下水研究グループ】
汚染水が地下水になるには、まったく別のルートもある。大気中に拡散した放射性物質が地表に落ち、雨水と共に地中にしみこんで地下水に混じるのだ。そして、地下水の流れに乗って、内陸部で濃縮ないし拡散していく。
福島県の地下水環境は、原発から30km前後より遠くの場所では地下水が原発の反対方向へ流れていく。特に、盆地にあるいわき市や郡山市などに地下水が集まっていく。この両市の周辺では、汚染されにくい深い井戸を整備し、水供給システムを強化する中長期的な対策をとる必要がある。【丸井氏】
原発からの水漏れは一刻も早く止めなければならない。が、今はまだその手段がない。
それどころか、梅雨になると汚染水はさらに増え、地下に漏れる分が増加するだけでなく、6月下旬には敷地内に溢れてしまう危険もある。
以上、記事「飲料水は大丈夫なのか 高濃度汚染水は地下水になった」(「週刊現代」2011年6月25日号)に拠る。
↓クリック、プリーズ。↓
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情報開示を求めても、政府は応じない。サンプル提供も断られている。【太田富久・金沢大学大学院教授】
しかも、この汚染水が一部漏出している。
消えた水は、例えば3号機では少なくとも4,270トン。これは海だけではなく、地下水に出た可能性が十分にある。しかも、津波でどさっと入った水が汚染されて漏れでた分もある。漏出した汚染水は、全体で数千トン単位、最悪で1万トンを超えている可能性もある。国会で質問したが、政府からは具体的な答はなかった。隠蔽以前に、政府は消えた汚染水の量すらきちんと把握していないらしい。これが一番の問題だ。【浅尾慶一郎・衆議院議員】
損壊した原子炉の中の放射線量は、想像を絶するほと高くなっている。注水の汚染度も尋常ではない。核燃料再処理工場で扱う高レベル放射性廃液並みでもおかしくない。【青山繁晴・独立総合研究所社長】
すでに1~3号機でメルトスルーが起こったことが判明している。実際には、さらに格納容器や建屋の床に溶けた部分があって、そこから高濃度汚染水が地中に吸い込まれていることが考えられる。他の号機では、原子炉建屋とタービン建屋の地下1階を結ぶ配管の周辺や、屋外のトレンチの亀裂から漏れているのではないか。【桜井淳・技術評論家】
東電をはじめとする原発関係者は、「水」の重要性について認識が不足していた。原発で水を受けもつ業者を格下扱いをして、水の扱い方を勉強してこなかった。
だから、今回のような大事故が起こると、汚染も排水も考えずに「とにかくぶっかけろ」となる。汚染水が大量に溜まって、初めて大慌てしている。【早川哲夫・麻布大学生命・環境科学部教授】
汚染水に含まれる放射性物質のうち、セシウム、ストロンチウムが危険だ。プルトニウムが最も危険だ。原発の敷地の内外でプルトニウムが検出されている。汚染水にもプルトニウムが含まれているのは間違いない。プルトニウムは重い元素なので、大気中では遠くへ飛散する量は少ない。しかし、地下水の中では関係ない。
地下水は、やがて海と川へ流れこむ。川から上水道が引かれているので、水道水が高濃度放射性物質に汚染される可能性がある。すでに継続的に水道水をモニタリングしている所もあるが、もっと細かく厳密に警戒する体制づくりが必要だ。【太田教授】
地下水から直接汲み上げる井戸水も要注意だ。飲料水にしている家庭もあるし、生活用水や農業用水として使っているケースも少なくない。だから、特に浅い水を使っている井戸水は、検査が急がれる。汚染していない、という結果が出ても、長期にわたり定期的に検査しなくてはならない。相当の手間とコストがかかる。
地下深く流れている水の場合、非常に長く汚染の影響が続く可能性がある。地下1,000mの水を調べたら、江戸時代に降った雨水だったことがある。数百年後、深いところから汲み上げた井戸水に福島第一原発から今漏れている放射性物質が混じっている、というような事態も生じ得る。【伊藤伸彦・北里大学教授】
福島第一原発は、氷河期に形成された5mほどの堆積層の上に建設されている。その下には、水を通しにくい粘土層がある。漏出した水の大半は、スポンジのような堆積層にしみこんで地下水となり、ごく少量が下部の粘土層にしみこむ。そして、地勢の傾きに沿って、海に少しずつ流れていく。堆積層で地下水に混じった汚染水がすべて海に流れるのに5~10年かかる。粘土層にしみこんだ水は数百年だ。【丸井敦尚・産業技術総合研究所地下水研究グループ】
汚染水が地下水になるには、まったく別のルートもある。大気中に拡散した放射性物質が地表に落ち、雨水と共に地中にしみこんで地下水に混じるのだ。そして、地下水の流れに乗って、内陸部で濃縮ないし拡散していく。
福島県の地下水環境は、原発から30km前後より遠くの場所では地下水が原発の反対方向へ流れていく。特に、盆地にあるいわき市や郡山市などに地下水が集まっていく。この両市の周辺では、汚染されにくい深い井戸を整備し、水供給システムを強化する中長期的な対策をとる必要がある。【丸井氏】
原発からの水漏れは一刻も早く止めなければならない。が、今はまだその手段がない。
それどころか、梅雨になると汚染水はさらに増え、地下に漏れる分が増加するだけでなく、6月下旬には敷地内に溢れてしまう危険もある。
以上、記事「飲料水は大丈夫なのか 高濃度汚染水は地下水になった」(「週刊現代」2011年6月25日号)に拠る。
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