語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>驚愕の数値77京ベクレル 放出放射能は「2倍」

2011年06月18日 | 震災・原発事故
 住民保護の理論上のシステム(原子力災害特別措置法に基づく防災計画・対策マニュアル)・・・・
 事故発生→東電から放射性物質の種類と量を保安院へ通知→保安院は直ちに緊急時対策支援システム(ERSS)を起動、原子炉の状態を分析→ERSS起動と同時に文部科学相へ連絡→文科省は直ちに緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)に乗せるて各自治体へ流す→各自治体は情報を見ながら住民を避難させる。

 その現実・・・・
 システムはまったく動かず、相次いだ爆発事故の時も自治体にはファックス1枚さえ届かなかった。
 ERSSを動かすための不出源情報などは、現在まで一切保安院に届いていない。

 保安院からの命令により、東電は事故記録を提出。保安院は、これを基に米国の原子力規制委員会(NRC)が管理する解析コードMELCORを使って、放出された放射性物質の種類や量を試算した。
 これを保安院は6月6日に発表した。3月11日から100~150時間中に係る試算値だ。
 大気への総放出量は、放射性ヨウ素換算で推定77京ベクレル。保安院の4月時点での推計の2倍強だ。
 放出された放射性核種は、31種類で、プルトニウム239が32億ベクレル。ストロンチウム90が140兆ベクレル、など。

 これだけの試算値が出ながら、事故以来現在に至るまでの3ヶ月間に、東電が原発敷地内の土壌からプルトニウムを採取した回数は18回。ストロンチウムにいたっては、2回しか採取していない。空気中からは、それぞれ6回、2回だけだった。
 「どこからどのくらい出て、住民たちはどのくらい浴びたのか。そういう放射性物質の『暴露』情報が、5年後、10年後、重要になってくる」【池田直樹弁護士】

 以上、佐藤章(編集部)「驚愕の数値77京ベクレル 放出放射能『2倍』だった」(「AERA」2011年6月20日号)に拠る。
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン


【震災】脱原発の経済学

2011年06月18日 | ●野口悠紀雄
(1)日本経済の構造的変化 ~貿易立国の終焉~
 貿易収支は4月に赤字となり、5月上旬には赤字額が拡大した。今後、LNGなど発電用燃料の輸入が増えるので、赤字が継続する可能性が高い。貿易赤字の定着は、日本の経済構造が大きく変化したことを示している。
 貿易収支が今赤字である原因は、生産設備の損壊だが、これは比較的短期間のうちに克服されるだろう。
 それ以降も赤字が続くのは、電力について量的制約が続き、コストが上昇するからだ。
 そして、このような制約が生じる基本的な理由は、原子力発電に依存できないことだ。原子力発電に制約がかかったことが、貿易赤字定着の本質的な原因なのだ。
 これまでの日本の「輸出立国」は、「原発は絶対に安全」という神話の上に築かれたものだった。しかし、このたび神話は崩壊した。その結果が「貿易赤字」という誰にもはっきり見えるかたちで示された。日本が貿易立国できる時代は終わった。

(2)隠されていた課題
 80年代は、世界経済の環境が日本にとってまことに好都合な時代だった。(a-1)中国工業化の影響はまだ顕在化せず、(b-1)原油価格は落ち着いていた。70年代末から99年夏頃まで、一時的な例外はあったものの、1バレル当たりの原油価格は、20ドルを超えなかった。90年代末には10ドルに近づく場合もあった。
 00年代になって、それらの問題が顕在化した。まず、(a-2)中国の工業製品が世界市場で日本製品を圧迫し始めた。そして、(b-2)中国をはじめとする新興国の工業化の結果、原油価格が上昇した。
 しかし、これらはいずれも隠蔽することができた。(a-3)中国工業化による日本製品の優位性低下は、円安で日本の輸出産業の競争力を見かけ上高めることによって、(b-3)原油価格の上昇は90年代に原子力の比重が高まっていたので、隠蔽できた。
 ところが、(a-4)円安依存の輸出戦略は、経済危機で崩壊した。そして、(b-4)原子力への依存が大震災で突き崩された。
 円安も原子力も、日本にとって本当の解決ではないことがわかった。
 今必要とされるのは、もともと潜在的には必要だった構造に日本経済を変えることだ。

(3)製造業の海外移転
 エネルギー基本計画は、現在「白紙」だ。仮に原子力への依存を今後低めるのであれば、エネルギー計画の枠内だけでは、その目的は達成できない。自然エネルギーの比重を高めることは必要だろうが、量的に見てそれだけでエネルギーの需給均衡を達成できるはずはない。
 脱原発の主張は、それを実現するための具体性を欠いている。
 この問題は、日本経済全体の問題としてとらえるべきものだ。製造業は電力多使用産業なので、製造業の比率が低下すれば、電力需要も減る。したがって、燃料輸入も減る。90年代以降、「輸出産業にとっていいことは日本にとっていいことだ」と考えられてきた。しかし、もはやそうは言えなくなる。
 日本国内だけの調整で、この問題を処理することは不可能だ。生産拠点の海外移転の動きを止めることはできない。日本の製造業は、国内ではなく国外で生産を行う時代になった。

(4)円高のメリット
 変化は、かなりのものが市場価格の変化で自動的に進む。それを妨害してはならない。企業の海外移転と円高に逆らわないことだ。
 円高は日本人を豊かにする。原油価格がこれをはっきり示す。原油価格は、09年1月初めの1バレル34ドルから11年4月末の121ドルまで、4倍近くに上昇した。しかし、日本の原油粗油の輸入単価は、この間に2.15倍にしか上昇していない。円高のおかげで、日本人は世界的な石油価格高騰の影響からかなり隔離されたのだ。このことは日本ではあまり評価されていないが、大変重要なことだ。
 今後もLNGなどの発電用燃料の輸入が増えるので、国内での価格上昇を招かないために、為替レートが円高になることが重要な意味をもつ。
 他方、円安になったところで、自動車等の輸出は増えない。生産そのものが制約されているからだ。
 貿易赤字を食い止めるためには、円高が必要なのだ。

(5)雇用政策の重要性
 海外での生産は基本的には望ましいことだが、唯一の問題は国内の雇用減少だ。すでに失業率は上昇し始めている。新卒の就職内定率には、もっとはっきりしたかたちで表れるだろう。
 だから、雇用政策は重要だ。雇用調整金のような弥縫策では解決できない。また、雇用を製造業に頼り、そのための需要喚起策を行っても、電力供給制約下の経済では機能しない。ここにおいても必要とされるのは、政府のコントロールを弱めることだ。
 量的に最大の雇用吸収力をもつのは介護分野だが、雇用を増やすには規制緩和が必要だ。
 質的な面で重要なのは、付加価値の高いサービス産業を成長させることだ。そのために、外国人高度人材の参入に対する規制緩和が必要だ。

【参考】野口悠紀雄「貿易赤字は継続する 輸出立国時代は終焉 ~「超」整理日記No.565~」(「週刊ダイヤモンド」2011年6月18日号)

   *

 メディアの数字を信じてはいけない。
 <例>米国人は日本人よりはるかに野菜を多く摂取している。
 まさか、と思うかもしれないが、統計上は正解なのだ。
 しかし、実は、この野菜にジャガイモが含まれている。あの、たっぷり油で揚げたマクドナルドのポテト(とてもおいしい!)を食べても、野菜摂取量に入るのだ。
 現代は飽食の時代、食べ過ぎると「メタボ」になるのでカロリー摂取を控えよ、と言われる。メタボこそ、生活習慣病の原因だ、と言われる。
 では、どれだけカロリー摂取量を減らすべきなのか。
 47年、終戦後のまだ食うや食わずの頃と、現在の日本人のカロリー摂取量は、ほとんど変わらないのだ。厚生労働省のデータがはっきり示している。
 大多数は、これを聞いてびっくりするだろう。
 そんなはずは・・・・あるのだ。新聞・テレビを使ったダイエット産業による完全なる刷り込みが成功した例で、冷静に数字を見る必要がある、ということだ。

 円高が日本経済を壊滅させる、というが、日本のGDPのうち輸出が占める割合は、高度成長期も、当時より倍以上円高になった今でも、10%台だ。経済を回復させるには、輸出の問題としてではなく、残り約80%の内需の問題と考えるべきなのは明らかだ。
 メディアを信じてはいけない。

 以上、ぐっちーさん「メディアの数字を信じてはいけない ~ぐっちーさんのここだけの話 No.175~」(「AERA」2011年6月20日号)に拠る。
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン