6月9日現在、日本産の食品について輸入を停止したり、放射性物質などの検査証明を要求しているのは、32ヵ国・地域にのぼる。輸入制限までしなくても、自国による検査を強化した国を含めると、40ヵ国・地域となる。4月27日時点では36ヵ国・地域だったから、1ヵ月余のうちに4件増えたわけだ。日本産食品への不信感は強まりこそすれ、沈静化する兆しはない。
規制内容にも過剰反応ぶりが目立つ。
クウェート、レバノン、コンゴ、モロッコの4ヵ国は、日本産のあらゆる食品を無条件で輸入停止としている。
中国は、福島など12都道府県の全食品の輸入を止め、それ以外の地域についても放射性物質などの検査証明や産地証明を要求している。12都道府県には、東京、山梨、長野といった原発から遠く離れた地域も含まれる。日本政府が実施している出荷制限などの措置よりはるかに厳しく、広範囲だ。
EUも、山梨や長野を含む13都道府県を対象に、政府作成の放射性物質検査証明を求め、それ以外の地域に対しては政府による産地証明を課している。当初は12都道府県だったが、5月25日出荷分から神奈川県も追加された。おそらく神奈川県産の茶葉から国内の暫定規制値を超える放射性セシウムが検出されたことを受けた措置だ。お茶だけでなく、すべての食品と畜産飼料が対象となっている。
EU非加盟のスイス、リヒテンシュタインも、これに追随した。
米国は、福島、栃木両県のホウレンソウ、原乳、イカナゴの稚魚などを輸入停止とし、それ以外の食品類については放射性物質に関する検査証明を求めるか、米国側でサンプル調査。検査証明は米国内の検査機関でも可としている。EUなどに比べると規制が緩い。
鉱工業製品にも影響が出ている。15ヵ国・地域が日本からの鉱工業品や船舶に対する放射能検査や輸入規制を実施している。
エジプトは、日本製の中古車部品やスクラップを全面禁輸した。
米国やEUも日本からの船舶や貨物に対する検査を強化している。
大半は、地域(生産・加工地や出港地)を到底せず、日本全体が対象だ。
輸出への影響は、既に統計の上にも表れている。4月の農林水産物輸出額は前年同月比で14.7%の376億円にとどまった。うち農産物は18.5%減の214億円、水産物は11.7%減の150億円だ。
特に中国、台湾などアジア向けの落ちこみが激しい。震災前は、日本の食材は高級品ともてはやされていた。
生産者や輸出業者が採りうる自衛策は限られている。相手国の規制に応じて輸出品の放射能検査を実施するにしても、検査機関や機器がボトルネックになるからだ。6月15日現在、全国で放射性物質の一般的検査ができるのは22機関、食品専門で11機関、工業製品専門で10機関、計43機関しかない。これらも、国や自治体による農林水産物、水道水、土壌などの検査に追われている。民間の需要にどこまで応えられるか、未知数だ。
日本政府は、WTO事務レベル会合や個別の閣僚会談などを通じて、日本製品に対する過度の輸入規制をやめるよう繰り返し求めてきた。
5月22日の日中韓首脳会談では、規制緩和につながる文言が首脳宣言に盛りこまれ、中国の温家宝首相も「山県、山梨両県を輸入禁止対象からはずす」と表明した。が、6月16日時点では、両県の解除は実現していない。
カナダは、6月13日に規制解除したが、大きく流れが変わる兆候はない。
結局のところ、原発事故が収束に向かわない限り、放射能汚染をめぐる「ジャパン・パッシング」は収まらない。
以上、行友弥(毎日新聞経済部)「危機の『日本産ブランド』 32ヵ国・地域が食品輸入制限」(「週刊エコノミスト」2011年7月11日臨時増刊号)に拠る。
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クウェート、レバノン、コンゴ、モロッコの4ヵ国は、日本産のあらゆる食品を無条件で輸入停止としている。
中国は、福島など12都道府県の全食品の輸入を止め、それ以外の地域についても放射性物質などの検査証明や産地証明を要求している。12都道府県には、東京、山梨、長野といった原発から遠く離れた地域も含まれる。日本政府が実施している出荷制限などの措置よりはるかに厳しく、広範囲だ。
EUも、山梨や長野を含む13都道府県を対象に、政府作成の放射性物質検査証明を求め、それ以外の地域に対しては政府による産地証明を課している。当初は12都道府県だったが、5月25日出荷分から神奈川県も追加された。おそらく神奈川県産の茶葉から国内の暫定規制値を超える放射性セシウムが検出されたことを受けた措置だ。お茶だけでなく、すべての食品と畜産飼料が対象となっている。
EU非加盟のスイス、リヒテンシュタインも、これに追随した。
米国は、福島、栃木両県のホウレンソウ、原乳、イカナゴの稚魚などを輸入停止とし、それ以外の食品類については放射性物質に関する検査証明を求めるか、米国側でサンプル調査。検査証明は米国内の検査機関でも可としている。EUなどに比べると規制が緩い。
鉱工業製品にも影響が出ている。15ヵ国・地域が日本からの鉱工業品や船舶に対する放射能検査や輸入規制を実施している。
エジプトは、日本製の中古車部品やスクラップを全面禁輸した。
米国やEUも日本からの船舶や貨物に対する検査を強化している。
大半は、地域(生産・加工地や出港地)を到底せず、日本全体が対象だ。
輸出への影響は、既に統計の上にも表れている。4月の農林水産物輸出額は前年同月比で14.7%の376億円にとどまった。うち農産物は18.5%減の214億円、水産物は11.7%減の150億円だ。
特に中国、台湾などアジア向けの落ちこみが激しい。震災前は、日本の食材は高級品ともてはやされていた。
生産者や輸出業者が採りうる自衛策は限られている。相手国の規制に応じて輸出品の放射能検査を実施するにしても、検査機関や機器がボトルネックになるからだ。6月15日現在、全国で放射性物質の一般的検査ができるのは22機関、食品専門で11機関、工業製品専門で10機関、計43機関しかない。これらも、国や自治体による農林水産物、水道水、土壌などの検査に追われている。民間の需要にどこまで応えられるか、未知数だ。
日本政府は、WTO事務レベル会合や個別の閣僚会談などを通じて、日本製品に対する過度の輸入規制をやめるよう繰り返し求めてきた。
5月22日の日中韓首脳会談では、規制緩和につながる文言が首脳宣言に盛りこまれ、中国の温家宝首相も「山県、山梨両県を輸入禁止対象からはずす」と表明した。が、6月16日時点では、両県の解除は実現していない。
カナダは、6月13日に規制解除したが、大きく流れが変わる兆候はない。
結局のところ、原発事故が収束に向かわない限り、放射能汚染をめぐる「ジャパン・パッシング」は収まらない。
以上、行友弥(毎日新聞経済部)「危機の『日本産ブランド』 32ヵ国・地域が食品輸入制限」(「週刊エコノミスト」2011年7月11日臨時増刊号)に拠る。
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