語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>経産省の原発推進&東電護持と天下りとの関係 ~経産官僚が守るのは自分の生活~

2011年07月07日 | 震災・原発事故
 経済産業省は、原発推進と東電護持を掲げたまま、政策転換ができないでいる。
 理由1、今までの政策を誤りと認められない無謬性へ固執する。
 理由2、天下りや予算を通じて経産省が電力各社とともに「電力閥」や「原子力村」を形成する。

 電力会社やエネルギー関係の天下り団体56法人に、現時点で経産省のOBは少なくとも103人天下り、老後の面倒を見てもらっている。三菱原子燃料など、個人情報をたてに開示しない企業や団体もあるため、実数はもっと多いだろう。次官や長官を経験したキャリアはもとより、地方経産局採用のノンキャリアも含めて、多くが過去に電力やエネルギー関連の部署で働いていた。
 これらの企業、団体には、経産省から補助金、運営費交付金などが支出されている。<例1>原子力安全基盤機構は、収入のうち93%を占める206億円がそうだ。<例2>日本原子炉Yく研究開発機構に至っては、1,768億円も注ぎこまれている。
 補助金の比率が低いところは、加盟する電力会社などの会費収入が収入源になる。<例3>新エネルギー財団の補助金依存率は44.4%で、それ以外は会員企業からの会費収入と基本財産の運用益で賄っている。
 つまり、税金か業界に「たかる」構造にあるのだ。
 天下り構造が政策を歪めている。経産省は、何十年も続くこの構造に呪縛され、身動きがとれない。

 以上、大鹿靖明(編集部)「天下り100人リスト」(「AERA」2011年7月11日号)に拠る。

   *

古賀茂明>それでも【入省してから】少しずつ仕事を覚えていくんですけれど、最初の冬だったかな、私がいた部署は企業の研究開発を所管するところだったんですが、法律をつくるにあたって、科学技術庁と権限争いを始めたんですよ。それはウチがやる、いやウチだ、と。私は「どっちでもいいじゃないか」と思いながら、なぜ通産相がやるべきかという理屈を一生懸命考えてペーパーをつくってたんですが、結局、閣議決定の前日に通産省側の幹部が譲歩するんです。科学技術庁側が制度をつくるのを認めようと。
阿川佐和子>へぇ~、どうして?
古賀>制度に伴って、新しい組織を科学技術庁がつくるんですね。そこに、通産省のOBを一人迎えますよ、と。
阿川>譲歩するかわりに、通産省の天下り先を確保するってこと?
古賀>そういう裏取引をするわけです。

 (中略)

阿川>天下りという慣習については、どう思ってらしたんですか。
古賀>最初はそういうもんかと思ってたんだけど、そのうち、自分が何かやろうとしたとき、天下りが邪魔になることが多いと気づいたんです。
阿川>というと?
古賀>たとえばこんな規制は要らない、と思ったとき、じゃあ規制を撤廃すればいいかというと、実はその規制のために業界と連絡調整する団体があるんですね。で、そこの専務理事が天下りのポストになってたりする。
阿川>経産省OBが送りこまれてる?
古賀>そう。もし規制を撤廃すればその団体の存在価値がなくなるわけで、それは天下りポストが一つ減ることを意味する。そうすると、その人の行き場をどうするんだと言われるわけ。そんなことを言われてもね・・・・。
阿川>自分で探してくださいって話にはならないの?
古賀>そういう話にはならない。だったら他に天下りポストをつくれという話になってしまう。それだと正しい政策ができないんです。
阿川>そっかあ。
古賀>実際、私は明らかに不要と思われる天下り先の団体を一つ、潰したことがあるんですが--。
阿川>へぇ、どうなりました?
古賀>もちろん事前に上司に相談するわけですけど、局長は、「しかし寂しいなあ・・・・」と言うんですよ。「ほんとに寂しいよ」って。
阿川>何が寂しいの?
古賀>「君はこの団体の担当課長だろう。担当課長なら、もし周りからもうこんなのやめろと言われても、OBのこととかを考えて、いや、そんなことありません、これは必要ですと言って、最後まで頑張るもんだ」と。
阿川>ひぇ~、笑っちゃう。
古賀>「それを、君が団体をなくしましょうなんて、ほんとに俺は寂しいなあ~。最後まで体を張って抵抗するのが経産官僚だろう」なんて、大真面目に言うわけです。
阿川>ハァ~。OBに忠誠を尽くすのが、立派な官僚ってことなんだ。
古賀>そうです。国民のほうには眼が向いていない。

 (中略)

古賀>それに、官僚ってリスクが取れないんですよ。
阿川>リスクって失敗のリスクですか。
古賀>そう。仮に国民のために何かしたいと思っても、それで何か問題が起きたときに批判されるのを非常に嫌がる。震災の義援金など、その最たるものでしょう。
阿川>というと?
古賀>義援金は早く配ったほうがいいに決まっているんだから、誰かがリスクを取って、「間違えたっていい。とりあえず一律で配れ!」って言えばどんどん配れるのに、それを言う人がいないからなかなか配れない。
阿川>そうそう。男気のある人はいないのかって思っちゃうね。
古賀>嘘ついて二重取りする人が出てきたら批判される、とか心配してるわけです。でも国民のためにやりたいという信念が本当にあれば、誰から批判されたって自分の正しいと思うことをやればいい。逆にみんな褒めてくれますよ。結局、国民のために犠牲になってもいい、という信念がないんですね。
阿川>彼らは何を守りたいんですかね。
古賀>自分の生活でしょう。
阿川>老後の天下り先とか?
古賀>老後を含めた自分の人生設計でしょうね。役所って、全体が互助会になってるんですよ。22歳で役所に入ったら、70歳くらいまでの生活をみんなで協力して守りましょうねっていう。だから自ずからリスクを取らない組織になる。
阿川>志のあるヤツはいないのか?
古賀>志のある人は辞めちゃうんでしょう。おかしい、こんなことのために俺は官僚になったのかと思って。

 以上、古賀茂明&阿川佐和子「仙谷さんは、民主党には『政治主導』なんてできないって分かってしまったんだと思う。」(「週刊文春」2011年7月7日号)に拠る。
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【言葉】官僚

2011年07月07日 | 社会


 企業、金融と並ぶ現代日本経済のいま一つの重要な構成要素は、官僚機構である。とくに、民間経済活動に対して広く官僚統制が行われていること、税財政制度が中央集権的なシステムとなっていることが特徴である。
 いうまでもなく官僚制度自体は、明治以来の歴史をもつ(見方によれば、江戸時代から近代的官僚制度があったともいえる)。現在の日本の官僚制度は、こうした流れの中に位置づけられることが多い。
 しかし、実は、官僚の発想法、官対民の関係、そして税財政制度などは、明治以来一貫して続いてきたわけではない。戦時経済期に、大きな断絶がある。現在に引き継がれているのは、その断絶後の部分である。現在の官僚達は、明治の「天皇の官僚」ではなく、戦時期の革新官僚の子孫なのである。

【出典】野口悠紀雄『増補版 1940年体制 ~さらば戦時経済~』(東洋経済新聞社、2010)
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