語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>東京電力の情報操作~公開ヒアリングのやらせ~

2011年07月15日 | 震災・原発事故
 電力会社は、昔から「やらせ」をやってきた。今回の九電やらせメールも、遺憾ながら、電力会社にはありふれたことだ【注】。
 電力会社が日常的に行っている情報操作を、このたび、やっとマスメディアがとりあげた、というだけのことにすぎない。
 例えば政府の公開ヒアリングで、電力会社はどんな工作をしているのか。東京電力の場合、その手口は次のようなものだ。

 原発の安全審査の前に、原発の立地となる自治体で、(1)第一次公開ヒアリング(経済産業省主催)と(2)第二次公開ヒアリング(原子力安全委員会主催)が開かれる。
 公開ヒアリングの前に、地元住民から質問を文書で集め、その中から意見陳述人(公開ヒアリングで質問する者)を選ぶ。東電の仕込みは、この段階から始まる。
 (1)の場合、原発推進派の住民から届く質問は少ない。しかも、原発の安全性より、国の交付金など地域振興に関する質問が多い。他方、反対派は技術的な質問が多い。
 東電社員が役所に出向くと、質問を見せてくれる。応募者が反対派かどうか、名前を見ればわかる。誰が反対派か、調査済みなのだ。反対派が多いとまずいので、地元にいる東電の渉外担当社員に電話して、推進派の応募を集めるよう指示する。
 陳述人に応募するための質問も、東電社員が作っていた。それも、漁業者、主婦、村議など職業別に、それぞれの立場から出そうな質問を考える。こうして作成した質問原稿を地元の渉外担当社員に送る。それを地元住民に依頼し、応募してもらう。こうして公開ヒアリングの陳述人の比率が、反対派と推進派で3対7くらいになるようにしていた。

 (2)は、住民からの質問に経産省が回答する。東電は一切介在できない(ことになっている)。
 ところが、実際には、東電が裏方作業をすべて丸抱えしていた。
 以下、柏崎刈羽原発6、7号機増設に係る第二次公開ヒアリング(90年6月3日、於新潟県県庁講堂)を例にとる。
 (a)原子力安全委員会事務局から、人員2人と2台のワープロを寄こせ、と東電に指示があった。陳述人の応募をワープロで清書せよ、云々。東芝製ではなく富士通のワープロで、という指示もあった。役所のワープロが富士通だからだ。東電の予算にはワープロの購入が組みこまれていないので、東電は取引のある印刷所に架空発注を行い、富士通のワープロを2台調達した。清書作業を引き受けた東電は、当然、どこの誰がどんな質問をしているか、すべて把握できた。
 (b)ここから(1)と同じ作業が開始される。反対派の質問数を把握すると、東電はそれを上回る推進者の応募を渉外担当社員に集めさせた。
 (c)さらに、通産省(現・経産省)の回答まで、東電があらかじめ用意した。通産省が使った千枚以上のスライドも東電が製作した。担当社員は、準備に2ヵ月かかった。・・・・検察官が被告に尋問と調書の作成を丸投げするようなものだ。
 (d)通産省と東電の馴れ合いはまだ続く。第二次公開ヒアリングで、反対派の陳述人が予定外の質問をした。すると、通産省の控え室にいた役人は、慌てて電話をとった。架電先は、同じ講堂内に潜んでいた(居てはならないはずの)東電社員の部屋だ。慌てる役人に、東電社員は答えた。「想定問答集の○○ページを見てください。スライドはナンバー××を出して説明してください」
 (e)傍聴者も東電が仕込んだ。事前に抽選で決められた傍聴者の名前を借り、東電の社員、家族、他の電力会社の社員が券を確保しておくのだ。
 (f)費用も肩代わりした。この公開ヒアリングには、会場の設営、警備、過激派対策のバリケード、看板など総額1億円を要した、という。その費用の大半は東電が負担した。設営を担当したのは小沢一郎・衆議院議員の妻の実家として知られる「福田組」だ。実費1億円のうち福田組が主催者(原子力安全委員会)に請求したのは800万円で、残りの9,200万円は東電が建設費とか地域振興費に紛れこませて肩代わりした。

 以上のように、公開ヒアリングは、陳述人の応募、議事の運び、人員、費用に至るまで東電が全面的に関与する「八百長」だった。
 だから、すべて電力会社の思惑どおりになる。公開ヒアリングは、いかにも民主的な手続きのように見えるが、主催者のシナリオから外れた質問が出れば、司会者が「時間の関係がありますから次の問題に移りましょう」と、うまく逸らす。結局、住民を無視した猿芝居にすぎない。【東電元社員】
 経産省や安全委員会にチェック能力がないことも、根本的な原因の一つだ。【桜田淳(技術評論家)】

 【注】「7月7日 『ヤラセメールは慣習だったしありふれた出来事だった』小出裕章(MBS)

 以上、記事「東京電力元社員が明かす『ペテン説明会』全手口!」(「週刊文春」2011年7月21日号)に拠る。
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