(1)がれき
被災各地の災害廃棄物(がれき)量は、6月28日現在、岩手県が446万トン、宮城県が1,509万トン、福島県が228万トンだ(環境省推計)。
特に福島県のがれきは、原発事故による放射能汚染によって、処理が容易ではない。同県浪江町、双葉町など避難区域のがれきは手つかずのままで、その他の地域のがれきは県内134ヶ所の借り置き場に集められている(まだ県内のがれきの23%のみ)。福島市、郡山市、いわき市などを含む浜通り、中通り地方のがれきは、当分の間、借り置き場に集積し、処分しないことになった。
その後、可燃物については、可能な範囲で焼却できることになったが、灰になると放射性物質は濃縮される。灰は焼却炉のフィルターで99.9%捕捉できるから外部に拡散しないが、その灰はどう処分するのか。【福島県一般廃棄物課】
環境省は、6月23日、8,000Bq以下の灰は最終処分場での埋め立てを認め、8,000Bq超の灰は国が安全性を確認するまで放射線を遮蔽できる施設でドラム缶などで保管することが望ましい、と示した。
一時保管の先については、方針が示されていない。だから、溜まる一方だ。【同前】
環境省は、4月8日付けで、全国の自治体にがれきの広域処理への協力を求めた。5月11日時点で41都道府県522市町村が受け入れの以降を示した。が、例えば愛知県の場合、現段階で具体的なことは何も決まっていない。放射能を気にする県民の声に配慮する必要があるからだ。京都市では、受け入れ反対署名運動も起き、「安全性が確認できてから受け入れる」と市民に説明している。徳島市でも、まだ何も決まっていない。国にいろいろ条件を出して、検討している段階だ。
放射能に汚染されたがれきは、県外に持ち出すべきではない。福島のがれきや汚泥を各地に移動させると、日本中に放射能をばらまくことになる。汚泥やがれきは、原発周辺に集約し、遮蔽し、汚染の拡散は避けるべきだ。【武田邦彦・中部大学教授】
(2)下水処理場の汚泥焼却灰・浄水場の浄水発生土
汚泥の汚染問題が明るみに出たのは、原発事故から1ヵ月半もたってからだ。5月1日、福島県が「県中浄化センター」(郡山市)から26,400Bqの放射性セシウムが検出された、と発表。これを皮切りに、関東地方の下水処理場でも次々に汚染が明らかになった。
下水処理場「前橋水質浄化センター」(群馬県前橋市)でも、5月20日、汚泥の焼却灰から42,800Bq/kgもの放射性セシウムが検出された。
浄水場も汚染された。
「北千葉広域水道企業団」(千葉県流山市)は、江戸川の水を浄水処理し、松戸市、柏市など7市と県営の水道施設に供給している。ここでは、河川の水を水道水にする過程で出てくる土砂や濁り(浄水発生土)が。300平米の建物いっぱいに、高さ3mほど積み上げられたままだ。原発事故直後水道水から検出された放射性ヨウ素は、3月26日以降は検出限界内に下がっている。だが、5月20日になって、浄水発生土から放射性ヨウ素と放射性セシウムが5,950Bq/kg検出されたのだ。
問題は、この浄水発生土が毎日30トンのペースで積み上がるのに、処分の見とおしがまったく立っていないことだ。浄水発生土は、これまで半分はセメントの原料、残る半分は道路の埋め戻しに使う改良土として業者に処分費用を払って引き取ってもらっていた。だが、汚染が判明して以降は、引き取り手が見つからない。いくら基準【注】以下でも、業者は「売り物にならない」と引き取りを拒否している。
東日本各地の下水処理場、浄水場で、汚泥や浄水発生土が行き場を無くしているのだ。
【注】政府の原子力対策本部は、6月16日、放射能汚泥について次の基準を打ち出した。(a)放射性セシウムが8,000Bq以下の場合は防水対策をし、居住地や農地に使わなければ埋め立て処分できる。(b)8,000~100,000Bqの場合は、住民の年間放射線量が10μSv以下になるよう対策をとれば埋め立て処分できる。(c)100,000Bqを超えた場合、遮蔽できる施設で保管する。
(3)セメント
下水汚泥の利用率は80%に近い。セメントの原料に40%、埋め立て用の土に22%、堆肥に14%・・・・。
福島の「県中浄化センター」から出た1,400トンの汚染汚泥のうち、928トンは住友大阪セメント(東京都千代田区)がセメントに加工して建材会社などに出荷済みだ。
関東地方の何処でどのように使われたか、把握していない。手元に残っていたセメントの汚染濃度は最高455Bqと国の指針(100Bq)を上回った。【住友大阪セメントの広報担当者】
太平洋セメント(東京都港区)や日立セメント(茨城県日立市)も、福島県の汚染汚泥を使ったセメントを既に出荷している。
(4)堆肥
福島の「県中浄化センター」から、300トンの汚泥が複数の堆肥会社へ出荷された。いずれも堆肥に加工され、倉庫で発酵中だ。19,000Bqを超えるものもあるが、3~4年の発酵期間が必要なので、まだ出荷されていない。ちなみに、6月下旬、国は200Bq以下の汚泥の堆肥への利用を認めた。
バーク(樹皮)を混ぜた堆肥にも注意が必要だ。
放射性物質は樹皮に多く溜まる。今後伐採される木から作られる堆肥は、汚染の恐れが出てくる。【野中昌法・新潟大学農学部教授】
バークの汚染を想定した国の指針は、まだ無い。
(5)住宅用木材・木製家具類
福島県は、杉、檜を主力に、木材の素材生産量は全国7位(2010年)だ。
チェルノブイリ原発事故後、周辺の森林が放射能に強く汚染された。樹木が吸収したセシウムは、6~7割が樹皮に、残りのほとんどは葉や枝に溜まる。住宅用の木材や家具は、樹皮が削られており、基本的に問題はないはずだ。【野中教授】
削られた樹皮は、「木材チップ」としてパルプの原料になる。
09年、リトアニアからイタリアに輸出された「木質ペレット」から高濃度のセシウムが検出され、裁判所が回収命令を出した。
木質ペレットは、木材の樹皮やカスを固めた二酸化炭素を出さない「エコ燃料」で、日本でも発電や暖房燃料として利用が拡大している。
樹皮を使った製品には、念のため伐採場所を記すことも必要だ。【野中教授】
(6)被災自動車・廃家電・鉄製品
震災で大量に発生したがれきの中には、健在としてリサイクルされ、マンションや戸建て住宅に生まれ変わるものもある。自動車、家電、道路標識などから発生する鉄スクラップだ。
岩手、宮城、福島の3県の水没分を除いた鉄スクラップの回収量は97万トン。昨年1年分(94.5万トン)に匹敵する量が、3月11日だけで生じた。
鉄スクラップは、スクラップ業者に引き取られ、裁断、圧縮される。製鉄会社がそれを溶かし、建材に再加工する。10月には工事に使われ始めるだろう。
東北の製鉄会社は、津波被害で休業中のところが多く、東北以外へ流れる可能性もある。
鉄スクラップは回りめぐって住居やマンションに使われるが、スクラップにされないで輸出される被災車両もある。6月29日、神奈川県の港で南アフリカ行きの船に積み込まれる予定だった中古自動車から、60μSvを超える数値が検出された。
(7)石けん・化粧品・シャンプー・リンス
輸出は、当初は食品だけが敬遠されていたが、今では化粧品、石けん、シャンプー、リンスなど直接肌にふれる製品も敬遠されはじめた。
以上、記事「忍び寄る放射能から家族を守れ!」(「週刊朝日」2011年7月15日号)に拠る。
↓クリック、プリーズ。↓
被災各地の災害廃棄物(がれき)量は、6月28日現在、岩手県が446万トン、宮城県が1,509万トン、福島県が228万トンだ(環境省推計)。
特に福島県のがれきは、原発事故による放射能汚染によって、処理が容易ではない。同県浪江町、双葉町など避難区域のがれきは手つかずのままで、その他の地域のがれきは県内134ヶ所の借り置き場に集められている(まだ県内のがれきの23%のみ)。福島市、郡山市、いわき市などを含む浜通り、中通り地方のがれきは、当分の間、借り置き場に集積し、処分しないことになった。
その後、可燃物については、可能な範囲で焼却できることになったが、灰になると放射性物質は濃縮される。灰は焼却炉のフィルターで99.9%捕捉できるから外部に拡散しないが、その灰はどう処分するのか。【福島県一般廃棄物課】
環境省は、6月23日、8,000Bq以下の灰は最終処分場での埋め立てを認め、8,000Bq超の灰は国が安全性を確認するまで放射線を遮蔽できる施設でドラム缶などで保管することが望ましい、と示した。
一時保管の先については、方針が示されていない。だから、溜まる一方だ。【同前】
環境省は、4月8日付けで、全国の自治体にがれきの広域処理への協力を求めた。5月11日時点で41都道府県522市町村が受け入れの以降を示した。が、例えば愛知県の場合、現段階で具体的なことは何も決まっていない。放射能を気にする県民の声に配慮する必要があるからだ。京都市では、受け入れ反対署名運動も起き、「安全性が確認できてから受け入れる」と市民に説明している。徳島市でも、まだ何も決まっていない。国にいろいろ条件を出して、検討している段階だ。
放射能に汚染されたがれきは、県外に持ち出すべきではない。福島のがれきや汚泥を各地に移動させると、日本中に放射能をばらまくことになる。汚泥やがれきは、原発周辺に集約し、遮蔽し、汚染の拡散は避けるべきだ。【武田邦彦・中部大学教授】
(2)下水処理場の汚泥焼却灰・浄水場の浄水発生土
汚泥の汚染問題が明るみに出たのは、原発事故から1ヵ月半もたってからだ。5月1日、福島県が「県中浄化センター」(郡山市)から26,400Bqの放射性セシウムが検出された、と発表。これを皮切りに、関東地方の下水処理場でも次々に汚染が明らかになった。
下水処理場「前橋水質浄化センター」(群馬県前橋市)でも、5月20日、汚泥の焼却灰から42,800Bq/kgもの放射性セシウムが検出された。
浄水場も汚染された。
「北千葉広域水道企業団」(千葉県流山市)は、江戸川の水を浄水処理し、松戸市、柏市など7市と県営の水道施設に供給している。ここでは、河川の水を水道水にする過程で出てくる土砂や濁り(浄水発生土)が。300平米の建物いっぱいに、高さ3mほど積み上げられたままだ。原発事故直後水道水から検出された放射性ヨウ素は、3月26日以降は検出限界内に下がっている。だが、5月20日になって、浄水発生土から放射性ヨウ素と放射性セシウムが5,950Bq/kg検出されたのだ。
問題は、この浄水発生土が毎日30トンのペースで積み上がるのに、処分の見とおしがまったく立っていないことだ。浄水発生土は、これまで半分はセメントの原料、残る半分は道路の埋め戻しに使う改良土として業者に処分費用を払って引き取ってもらっていた。だが、汚染が判明して以降は、引き取り手が見つからない。いくら基準【注】以下でも、業者は「売り物にならない」と引き取りを拒否している。
東日本各地の下水処理場、浄水場で、汚泥や浄水発生土が行き場を無くしているのだ。
【注】政府の原子力対策本部は、6月16日、放射能汚泥について次の基準を打ち出した。(a)放射性セシウムが8,000Bq以下の場合は防水対策をし、居住地や農地に使わなければ埋め立て処分できる。(b)8,000~100,000Bqの場合は、住民の年間放射線量が10μSv以下になるよう対策をとれば埋め立て処分できる。(c)100,000Bqを超えた場合、遮蔽できる施設で保管する。
(3)セメント
下水汚泥の利用率は80%に近い。セメントの原料に40%、埋め立て用の土に22%、堆肥に14%・・・・。
福島の「県中浄化センター」から出た1,400トンの汚染汚泥のうち、928トンは住友大阪セメント(東京都千代田区)がセメントに加工して建材会社などに出荷済みだ。
関東地方の何処でどのように使われたか、把握していない。手元に残っていたセメントの汚染濃度は最高455Bqと国の指針(100Bq)を上回った。【住友大阪セメントの広報担当者】
太平洋セメント(東京都港区)や日立セメント(茨城県日立市)も、福島県の汚染汚泥を使ったセメントを既に出荷している。
(4)堆肥
福島の「県中浄化センター」から、300トンの汚泥が複数の堆肥会社へ出荷された。いずれも堆肥に加工され、倉庫で発酵中だ。19,000Bqを超えるものもあるが、3~4年の発酵期間が必要なので、まだ出荷されていない。ちなみに、6月下旬、国は200Bq以下の汚泥の堆肥への利用を認めた。
バーク(樹皮)を混ぜた堆肥にも注意が必要だ。
放射性物質は樹皮に多く溜まる。今後伐採される木から作られる堆肥は、汚染の恐れが出てくる。【野中昌法・新潟大学農学部教授】
バークの汚染を想定した国の指針は、まだ無い。
(5)住宅用木材・木製家具類
福島県は、杉、檜を主力に、木材の素材生産量は全国7位(2010年)だ。
チェルノブイリ原発事故後、周辺の森林が放射能に強く汚染された。樹木が吸収したセシウムは、6~7割が樹皮に、残りのほとんどは葉や枝に溜まる。住宅用の木材や家具は、樹皮が削られており、基本的に問題はないはずだ。【野中教授】
削られた樹皮は、「木材チップ」としてパルプの原料になる。
09年、リトアニアからイタリアに輸出された「木質ペレット」から高濃度のセシウムが検出され、裁判所が回収命令を出した。
木質ペレットは、木材の樹皮やカスを固めた二酸化炭素を出さない「エコ燃料」で、日本でも発電や暖房燃料として利用が拡大している。
樹皮を使った製品には、念のため伐採場所を記すことも必要だ。【野中教授】
(6)被災自動車・廃家電・鉄製品
震災で大量に発生したがれきの中には、健在としてリサイクルされ、マンションや戸建て住宅に生まれ変わるものもある。自動車、家電、道路標識などから発生する鉄スクラップだ。
岩手、宮城、福島の3県の水没分を除いた鉄スクラップの回収量は97万トン。昨年1年分(94.5万トン)に匹敵する量が、3月11日だけで生じた。
鉄スクラップは、スクラップ業者に引き取られ、裁断、圧縮される。製鉄会社がそれを溶かし、建材に再加工する。10月には工事に使われ始めるだろう。
東北の製鉄会社は、津波被害で休業中のところが多く、東北以外へ流れる可能性もある。
鉄スクラップは回りめぐって住居やマンションに使われるが、スクラップにされないで輸出される被災車両もある。6月29日、神奈川県の港で南アフリカ行きの船に積み込まれる予定だった中古自動車から、60μSvを超える数値が検出された。
(7)石けん・化粧品・シャンプー・リンス
輸出は、当初は食品だけが敬遠されていたが、今では化粧品、石けん、シャンプー、リンスなど直接肌にふれる製品も敬遠されはじめた。
以上、記事「忍び寄る放射能から家族を守れ!」(「週刊朝日」2011年7月15日号)に拠る。
↓クリック、プリーズ。↓