語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】脱原発>自治体の試み

2011年07月09日 | 震災・原発事故
 特別区は、国のエネルギー政策を決める立場にはない。が、事故時、住民の避難について全責任を負う。ところが、今回のような原発事故に係るマニュアルがなかった。放射性物質が東京まで飛散する事態はあり得ない、という結論がまずあって、したがって避難の措置は考える必要はない、と国および都が決めていた。
 しかし、浜岡原発も柏崎刈羽原発も老朽化している。やはり、いざというときのマニュアルを作っておくべきだろう、と何が起こるかの総点検している。
 東京電力が推進している節電についても、変なからくりが存在しているような気がする。世田谷区では、節電に関して外部から幾つかの提案を受けて、スマートメーター(通信機能付き電力量計)を導入して取り組もうとしている。家庭の中に、使用中の電力を眼で見て確認できる端末を入れ、モニター家庭で電力使用状況の把握ができないか、という企画だ。
 つまり、賢く電力の供給のバランスを取ろう、という方法だ。結局、自家発電で提灯をつけている夏の盆踊りをやめたほうがいい、とか、今、節電についての議論は、まったく非論理な世界に突入している。

 一番電力が足りない時間帯だけ効率的に節約して、夜とか、余裕のあるときは安心して使ってもらうほうが、経済のためにも絶対いい。これは社会的にも反対のしようがない政策だと思う。
 そこで、世田谷区のリアルタイムの電力使用量がわかればいい、と考えた。東電が東電管内の供給限界と、昨日の使用量と、本日/現在の使用量というグラフを出している。その世田谷区版を開示してくれ、とお願いに行った。ところが、世田谷区に限定したデータは出せない、と回答があった。「23区のデータなら出せるが、前日のものだ、云々」
 3月に、何を根拠に計画停電したんだ、と言いたい。計画停電の範囲は、配電エリアごとに区切られていた。今回求めたデータは、杉並区と一緒になっていてもいいし、大体でいいので出してくれ、と言ったのに、この回答だ。結局、電力に関しては「みなさん、わからないままでいいです」ということだ。やっぱり停電は不安だから原発はしょうがない、という方向へ持っていこうという心理戦のようなことが行われている。
 東京電力は、電気のリアルは他に知られたくないわけだ。電力についての政策も、組織のありようも裸になってしまうから、なんとなく倫理と恐怖感に任せて節電させておくと。そうすれば自分たちの立場は安全だから。そこは企業秘密にしておきたい、というわけだ。 

 「電気がとまるぞ」と脅されてビクビクしながら、夜も真っ暗にして、イベントは全部自粛する、というふうにはしたくない。合理的に、効率的に節電すればいい。情報を開示してもらって、それをみんなでシェアして、能動的に市民・区民が消費電力をコントロールする。そういう方向にシフトしよう、という考えだ。
 自然エネルギーの推進に入る前に、ピーク時の需給をコントロールすることで電気は賄えることが証明できれば、これは非常に大きな成果になるんじゃないか。
 だから、東電にこれを求め続けるつもりだ。

 原発がなければ大停電になる・・・・原発が全電力の3分の1を賄っている、という言い方が原発支持の根拠になっている。しかし、それは他の発電所と調整している数字にすぎない。だから、節電のための情報開示を求めることで、その実態に迫っていきたい。これについてはしっかりデータを出してもらいたい。東電は、これを拒否する論理を展開できないだろう。

 以上、保阪展人(世田谷区長)「自民・東電・メディアが作った原発日本」(「SIGHT」2011年夏号)に拠る。
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【震災】原発>海江田辞意が示す日本中枢の崩壊

2011年07月09日 | 震災・原発事故
 海江田経産相は、経産省に乗っかっていくしかない、と考えて悪役を引き受け、玄海原発の地元に再稼働を要請した。それなのに、菅首相が突然はしごを外した。辞意を漏らしたのは、もうやっていけない、と考えたからだろう。首相と経産省の分裂で股裂きになった。

 菅首相は、気分としては脱原発、自然エネルギー派だ。でも、気分を実現する能力もスタッフもない。だから官僚に頼る。頼っている経産省は原発推進だから、支離滅裂に見える。

 経産省が原発に必死なのは、原発で官僚互助会システムを維持しているからだ。巨額の予算を使い、電力会社、関連会社、公益法人に多数の天下りを送りこんでいる。原発をやめるダメージは計り知れない。
 他方、原発から自然エネルギーへの移行プログラムも練っている。どっちにも動ける態勢を作っている。原発維持にこだわって、自然エネルギーの関連予算や団体を環境省に奪われたら大変だからだ。
 経産省も支離滅裂に見える。

 電力会社も同じだ。東京電力は、原発対応で混乱の極みだ。九州電力は、「やらせメール」の情報が、漏れるはずのない現場から漏れて右往左往だ。「電力村」の鉄の規律も揺らいでいるように見える。が、実はしたたかに立ち回っている。
 
 民主党議員は、首相と同様、気分だけは改革派という人が多い。テレビの前では威勢がよくても、この国難に対して、誰も判断も決断もできない。そもそも、誰がどう決めるか、の仕組みさえ見えない。
 民主党の政治主導は、震災前から破綻していた。政治主導の意味を取り違えて、官僚を排除しようとした。ところが、閣僚に政治主導の能力がなかった。それをサポートすべき有能で信頼できる自前のスタッフもいなかった。結局、守旧派官僚に頼るしかなかった。
 今の菅首相の状況は、それを如実に表している。

 首相も経産省も電力会社も機能不全だ。このままでは日本は再生できない。
 求められているのは、組織力だ。リーダーの決断を軸に、組織全体で問題にあたる態勢だ。気分や思いつきではなく、何が問題か、どう解決するのか、そのためには誰を使うか。早く考えて立て直さないと、取り返しのつかないことになる。 

 以上、古賀茂明「このままでは再生できぬ」(2011年7月9日付け朝日新聞 耕論欄「海江田辞意が示すもの」)に拠る。
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