2010/11/5upわかる目次 |
ダイビングを始めた日 |
一時、教員の企業研修がはやった。
僕は望んで一年間会社に通った。
だが、受け入れた会社は僕に何をさせたらいいかまったくわからなかった。
それで僕は毎日何もすることがなく、いすに座っていた。
一種の拷問だった。
あまりのことに、ダイビングのライセンスを取ることにした。
四月の一ヶ月間、僕は取り憑かれたように勉強した。
一ヶ月の間、まったく飲まず、仕事から帰ると僕はテキストに向かった。
毎晩、二時間、三時間勉強した。
別世界のように楽になった生活。ただし知らない人ばかりの中で過ごす毎日。
その緊張と弛緩のバランスが勉強する気力を生んだのかもしれない。
そして、何より僕は「一ヵ月後にライセンスを取る」とある人と約束していた。
僕はいつもその言葉を忘れていなかった。
ちょうど四週間後の連休に、僕は沖縄でライセンスを取った。
ライセンス講習が終わった日のことだ。
沖縄の晴れた空に、柔らかそうな白い雲が浮かんでいた。
目の高さには、左に長く向こう側の岸辺が横たわっていた。
そのまま左に目を移すと、きらきら光る水面が広く湾の外へ広がっていた。
湾の出口の方向に、さっき泳ぎついたブイが浮かんでいた。
「これで、全部終わりなのか」
と、僕はインストラクターに念を押した。
「そうだ。すべて終わりだ」
と彼は答えた。
五月の沖縄の日差しは肌が焼けるほど強かった。
目を細めて僕はトラックの回りを、少しうろうろと歩いた。
どうしたらいいのかわからなかった。
今、この瞬間、僕はダイビングのライセンスを手にした。
僕は自分がしたことの意味を、思い出そうとしていた。
初めて自分の器材を背負って、まだ一週間だったが、
この終わりはこの海で過ごした一週間の終わりではなかった。
終わったのだ。
一ヶ月前にこころざし、酒をやめて毎日ノートを作り、一週間前に自分の器材を背負い、
ここ沖縄の雄々島で始めて潜行の練習をした。
自宅で一ヶ月間一人ノートに向かい、一人で沖縄に飛び、何度やってもできない練習に途方にくれた。
就職して、初めてまったく別の道のライセンスを手にした瞬間だった。
十年たった今でも、僕はその空と海と岩場の色を覚えている。
僕はインストラクターに右手を差し出した。
彼は強い力で握り返した。
講習で合格すると「Cカード」というものをもらえる。
会社の生活に慣れるにつれ、僕は今年「潜るチャンスをもらうため」ここへ来たのだと思うようになった。
事実、六月以降僕は毎週潜った。
すべての金をつぎ込み、大学に通った時以来の家計簿をつけた。
そうしなければ、生活することができなかった。
週末になると、僕は五時に起きてメッシュバッグをかつぎ電車に乗った。
帰ると器材を風呂の水につけた。
(注:風呂につけるのは良くないとあとで知った。水道水の塩素で機材が早く傷む)
一週間のほとんど毎日、部屋の中にはウェットスーツが干してあった。
それが乾くと、次の日にはもう潜りにいく日がやってきた。
ダイビングショップは知らない人ばかりだった。
会社に行っても、潜りに行っても知らない人ばかりだった。
それでも楽しかった。
国内で伊豆は沖縄に次ぐダイビングのメッカだ。
伊豆までの行き帰りは、客がインストラクターの運転するバンに乗り合わせる。
インストラクターの話はどれも皆面白かった。
今まで僕の周りにいた人達とはまったく違う人生だった。
危なっかしい橋を、ひょいと越えて彼らは今の生活に入り込んでいた。
僕が今から追いつこうとしても、死ぬまで届きそうもないところに彼らはいた。
だが、一方で彼らは、僕にもまだ飛べるかもしれないと思わせてくれた。
僕にもまだ違う人生があり得るのかもしれないと。
海に何回潜っても、僕は魚の名前を覚えなかった。
魚の名前を覚えないダイバーはいつまでも初心者扱いされる。
潜る前にインストラクターは「何を、どんな魚を見たいか」聞くのが常だった。
客はいくつかのリクエストをする。
海から上がると、他のダイバーは今見てきた魚の名前を口にして喜んだ。
けれども、僕には興味が湧かなかった。
海に入ると、僕は水を見ていた。
他のダイバーが吐き出す泡が海面に向かって上って行くのを見ていた。
仰向けに浮かんで、水面から差し込む、太陽の光を見た。
そうして、伊豆とは違う、透明な青い沖縄の海をいつも想った。
作成日某年某月・もう忘れてしまった
当時 出逢うことが出来たなら
一緒に沖縄ダイビングしたかったです。
もっとも私は深場がダメなので 潜降に時間が
かかり過ぎて結局ギブアップ!!
hyokoさんや ガイドさんのエアーをスッカラカンにさせて何も見れずにダイビング終了~になるとは思いますが(--:)
耳抜きは 苦手と言うほどでもないのですが
OW取得以前に 石垣島で体験ダイビングをして
いきなりボートで深場に連れて行かれ
海水がマスクにどんどん入って溺れかけ 泳げない事もあって恐怖心を抱いてしまったのと
限定スキルの時に 5M初挑戦で目眩を経験してしまったのとで怖いんです。
タンクからエアーが供給されていても 呼吸が荒くなると息苦しくなったりするので ちょっと呼吸が乱れると もう怖くなって浮上したくなってダメです・・・
呼吸も全然ヘタなんだと思います。
潜降して深場に行くと 浮上するのに時間がかかるし 水面がどんどん遠くなるので不安になります。
すぐに水面に顔を出して呼吸ができる深さじゃないと怖いんです・・・でもダイビングしたいんです(涙)
この前の串本のボートダイビングで エアーは
10も使用せずエキジットしました(^^)
なのにまた串本でボート・・・恐怖心を克服して潜れるようになりたくて。。。でも
やっぱり出来ないかも知れませんけど(泣)