JR直営の印刷場名は国鉄時代の印刷場名を使用します。
10年以上前に御紹介した券も再度御紹介しようかと思います。
古紙蒐集雑記帖
愛国から幸福ゆき乗車券
かなり色焼けしてしまいましたが、昭和50年1月に愛国駅で発行された、愛国から幸福ゆきの乗車券です。
焼けてしまって分かりづらいですが、青色こくてつ地紋のB型券で、札幌印刷場にて調製されたものと思われます。
「愛国から幸福ゆき」きっぷは昭和48年にNHKの新日本紀行という番組で幸福駅と同時に紹介されたことからブームが起こり、それまで年間10枚程度しか需要のなかったきっぷが年間300万枚も売れるという「縁起きっぷ」ブームの火付け役となったことで知られ、この1口座で10億円近い営業収入を稼いだといわれています。
しかし、縁起きっぷブームによる営業収入の拡大はできたものの、赤字路線である広尾線の維持費用に達するほどのものではなかったのでしょう、昭和62年2月、JR民営化を目前に控えたタイミングで広尾線が廃線となり、同時に両駅とも廃駅となってしまっています。
ところで、愛国駅はこの券が発売される前年の昭和49年12月15日(約1か月前)に無人化され、以後は大正駅の助役が駅務を兼務するようになっており、発売日から察するにこの券は無人化後に発行されたものではありますが、有人駅時代の残券であった可能性があります。
上の券から7年後の昭和57年8月に訪問した際に購入した券です。数枚購入し、駅で購入した証明として1枚にパンチを入れていただきました。
同じ札幌印刷場調製のものですが、時代の変化によるものでしょうか、「から」と「ゆき」の活字に変化があります。札幌印刷場では昭和50年代半ばにこれらの活字に様式変更をおこなっており、これは変更後のものとなっています。
旧字体の活字は国鉄では使用されなくなりましたが、札幌印刷場の血を受け継いでいた北海道交通印刷という北海道の私鉄の硬券の印刷を請け負っている印刷会社に引き継がれていましたが、同社の活版印刷廃止によって過去のものとなってしまっています。
当時、愛国駅では「愛の国から幸福ゆき」という記念スタンプが設備され、希望すれば裏面に捺印してくれるサービスもありました。