JR直営の印刷場名は国鉄時代の印刷場名を使用します。
10年以上前に御紹介した券も再度御紹介しようかと思います。
古紙蒐集雑記帖
上砂川駅発行 普通入場券 「昨日、悲別で」
昭和61年9月に上砂川駅で発行された普通入場券です。
白色無地紋のB型大人・小児用券で、札幌印刷場で調製されたものです。
上砂川駅は北海道空知郡上砂川町にあった駅で、三井鉱山砂川炭礦専用線に接続するために函館本線の砂川駅から分岐していた支線(通称、上砂川支線)の終着駅でしたが、昭和62年に砂川鉱山が閉山すると上砂川支線の需要はほぼ無くなり、JR化後の平成6年5月に上砂川支線は廃止となり、同時に廃駅となっています。
裏面です。
購入した時に記念にゴム印を捺して戴いたもので、これは昭和59年3月から放送されて話題となった倉本聰さん脚本のテレビドラマ「昨日、悲別で」のロケ地であったことを記念して作成されたものです。
若い世代の方は御存知ないかと思いますが、「昨日、悲別で」というドラマは、東京と北海道・悲別町が舞台という設定でした。
ダンサーの夢を追いかけて東京に出た主人公の中込竜一(竜)と同級生の小沼ゆかり(おっぱい)と、故郷に残って地元で働いていた若者たちとの心の交流を描いたストーリーで、東京で挫折し、夢途絶えて故郷に戻って来た竜とおっぱいを、悲別の昔の仲間たちが温かく迎え入れ、互いに傷つきながらも共に励ましあい、仲間意識を強めていく青春ドラマでした。
南こうせつ・伊勢正三・山田パンダの3人で結成された「かぐや姫」のヒット曲「22才の別れ」はこのドラマのエンディングです。
「悲別町」という町は空知郡上砂川町を舞台とした架空の町で、ロケは上砂川町内で行われ、上砂川駅は「悲別駅」として頻繁に登場していました。
駅舎の入口には、本来の上砂川駅駅名板の下に「悲別駅 昨日、悲別でロケーション駅」という案内板が掲示されていました。
また、ホームには本来の駅名板の裏に「かなしべつ」の駅名板が付けられていました。
鉱山が栄えていた頃の上砂川町は16,000人規模の人口を抱える町でしたが、鉱山が閉山する頃には半分以下の6,000人規模にまで人口が激減し、上砂川駅営業末期の1日あたりの乗降客数はわずか10人という危機的な状態であったようです。
上砂川駅では、ドラマ「昨日、悲別で」の人気を利用して、「コラボ」をすることで増収を狙っていたのでしょう。