JR直営の印刷場名は国鉄時代の印刷場名を使用します。
10年以上前に御紹介した券も再度御紹介しようかと思います。
古紙蒐集雑記帖
西武鉄道 遊園地前駅発行 ユネスコ村ゆき 片道乗車券
しばらくの間、西武鉄道の西武園ゆうえんち周辺の駅名改称に関連した内容でエントリーさせていただきましたが、そろそろここで一旦休止したいと思いますので、今回まで もう少しお付き合いください。
遊園地西駅を御紹介するとき、
> 同駅はこの券の発売された年の4月に、
> それまでSLやおとぎ電車の走る「軽便鉄道」スタイルであった山口線を新交通システムに転換した時に開業した駅で、
> 軽便鉄道時代の山口線の起点であった遊園地前駅の代替駅として開業された経緯がある。
と申し上げましたので、遊園地西駅の前身になります遊園地前駅の乗車券も御紹介致したいと思います。
1984(昭和59)年5月に遊園地前駅で発行された、ユネスコ村ゆきの片道乗車券です。
桃色せいぶてつどう自社地紋のB型矢印式大人専用券となっており、同社鉄道線のものとは全く様式が異なります。
題字に「おとぎ線乗車券」と表記されており、いかにも遊園地の乗り物のような印象を受けます。印刷場は新宿線系統の同社独自の印刷場で調製されたもので、池袋線系統でよく見る山口証券印刷で調製されたものは見たことがありません。
当時の山口線は「おとぎ線」と呼ばれた762ゲージの軽便鉄道で、蓄電池式のバッテリー機関車が牽引するオープンデッキの客車列車かコッペル社製のSLが井笠鉄道で使用されていた木造客車を牽引する列車が運転されており、遊園地の乗り物のような感じの路線でしたが、れっきとした地方鉄道として、首都圏大手私鉄の路線のひとつとして運転されていたのは驚きです。
蓄電池式のバッテリー機関車とオープンデッキの客車列車
コッペル社製のSLと井笠鉄道で使用されていた木造客車
同線は遊園地前~ユネスコ村間を結ぶ路線で、途中には交換をすることができる中峯信号所と山口信号所がありましたが、信号所では旅客の扱いはしておらず、途中駅はありません。また、両駅は鉄道線の駅とは同一の構内ではなく、運賃は独立したものとなっており、鉄道線との運賃の通算はありませんでした。
山口線はれっきとした地方鉄道なので小児運賃の設定もあり、小児用の乗車券も発売されていました。
西武山口線は西武園ゆうえんちの「遊戯施設」として誕生した路線で、遊園地前駅はかつて西武鉄道が経営していた多摩湖ホテルの最寄駅として多摩湖ホテル前駅として開業していますが、1961(昭和36)年に多摩湖ホテルが閉鎖されたことを受け、1963(昭和38)年に西武遊園地駅に改称されましたが、1979(昭和54)年に多摩湖駅が西武遊園地駅に改称されたため、同時にそれまでの駅名を多摩湖駅に譲り、遊園地前駅に再度改称されています。
こちらは西武遊園地駅時代の山口線の乗車券になります。
この時期の山口線の乗車券は発着駅の文字が小さく、題字部分には「おとぎ電車乗車券」と記載されています。
いつ頃おとぎ電車からおとぎ線に変更になったかは不明ですが、(旧)西武遊園地駅を遊園地前駅に改称した時期ではないかと思います。同線は1972(昭和47)年からSLの運行を行っていますが、「SLや客車列車は電車じゃない」という理論から変更されたのではないかと推測されます。
再掲になりますが、今回多摩湖駅に改称される予定の西武遊園地駅で発行された80円区間ゆきの乗車券です。
発駅の「西武遊園地」の特活が、太さが若干異なるものの同じサイズで作成されており、山口線の乗車券のために作成された特活が、そのまま転用された可能性が否めません。
活字部分のみを拡大してみますと、何となくそのような気がします。
なお、西武遊園地という駅名は今回のダイヤ改正で無くなりますが、ユネスコ村駅は山口線が新交通システムに転換された時に廃駅となり、すでに現存しておりません。