京のおさんぽ

京の宿、石長松菊園・お宿いしちょうに働く個性豊かなスタッフが、四季おりおりに京の街を歩いて綴る徒然草。

散華して懺悔

2009-06-16 | インポート

     祗園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり

     沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらはす

 『平家物語』の冒頭は、古文の授業で覚えさせられた人も多いでしょう。

 リズミカルな文章なため、なんとなく覚えられてしまう名文です。

 ですが、意味は今ひとつ、という人も多いでしょう。

 まず、祗園精舎の鐘の声、なるものが分からない。

 沙羅双樹の花の色、なるものも分からない。

 祗園精舎がインドにあって、沙羅双樹もインドの花、ということくらいは習うわけですが。

 実際どんなものなのかを知っている人は少ないわけです。

 さて、祗園精舎の鐘の声はともかく、沙羅双樹の有名なお寺が、京都にはあります。

 妙心寺の塔頭、東林院です。

 普段非公開(ただし宿坊として入ることはできます)のこの塔頭が、この時期は、「沙羅の花を愛でる会」と銘打って特別公開しています。

 ところが、実はこの花、本当の沙羅の花ではありません。

 といって、別にお寺が偽っているわけではないのですが。

 ここでいう沙羅の花というのは、ナツツバキです。

 日本ではナツツバキを沙羅の花とも言うんですね。

 どうしてそうなったのでしょうか。

 昔の人の勘違いなのか、わざとなのか。

 その辺りのことは知りません。

 ただ、ツバキの名の通り、花が丸々ポトリと落ちるので、その様は無常観に通ずるところはあります。

 緑の苔の上に無数のそれが落ちている光景は、何かはかなさを感じさせます。

 この光景を見れば、『平家物語』の冒頭の意味も、実感を伴って理解できるかもしれません。

 ちなみに、当館のお庭にもナツツバキの木が何本か植えられています。

 Natsutsubaki

 今年は例年より早く咲いたように思います。

 この花に限らず、全体的に今年はどの花も開花が早いような気もします。

 花を目当てに京都にこられる方はご注意を。

”あいらんど”