祗園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらはす
『平家物語』の冒頭は、古文の授業で覚えさせられた人も多いでしょう。
リズミカルな文章なため、なんとなく覚えられてしまう名文です。
ですが、意味は今ひとつ、という人も多いでしょう。
まず、祗園精舎の鐘の声、なるものが分からない。
沙羅双樹の花の色、なるものも分からない。
祗園精舎がインドにあって、沙羅双樹もインドの花、ということくらいは習うわけですが。
実際どんなものなのかを知っている人は少ないわけです。
さて、祗園精舎の鐘の声はともかく、沙羅双樹の有名なお寺が、京都にはあります。
妙心寺の塔頭、東林院です。
普段非公開(ただし宿坊として入ることはできます)のこの塔頭が、この時期は、「沙羅の花を愛でる会」と銘打って特別公開しています。
ところが、実はこの花、本当の沙羅の花ではありません。
といって、別にお寺が偽っているわけではないのですが。
ここでいう沙羅の花というのは、ナツツバキです。
日本ではナツツバキを沙羅の花とも言うんですね。
どうしてそうなったのでしょうか。
昔の人の勘違いなのか、わざとなのか。
その辺りのことは知りません。
ただ、ツバキの名の通り、花が丸々ポトリと落ちるので、その様は無常観に通ずるところはあります。
緑の苔の上に無数のそれが落ちている光景は、何かはかなさを感じさせます。
この光景を見れば、『平家物語』の冒頭の意味も、実感を伴って理解できるかもしれません。
ちなみに、当館のお庭にもナツツバキの木が何本か植えられています。
今年は例年より早く咲いたように思います。
この花に限らず、全体的に今年はどの花も開花が早いような気もします。
花を目当てに京都にこられる方はご注意を。
”あいらんど”