赤井は豹一をひっ張って、「此処を通ろう」とわざわざ三条
通の入口からさくら井屋のなかへはいり、狭い店の中で封筒
や便箋を買っている修学旅行の女学生の群をおしのけて、京
極の方の入口へ通り抜けてしまった。
織田作之助の『青春の逆説』は、その半分ほどが、京都が舞台となっています。
織田作之助といえば『夫婦善哉』が有名で、この『青春の逆説』はさほど有名ではありません。
にもかかわらず、なぜか去年の夏に文庫で新装発刊されました。
それはともかくとして、引用した部分は、主人公が友人と町へ繰り出す場面です。
「京極」というのは、新京極のことで、町の賑わいが描かれています。
この小説の舞台は昭和の初期と思われますが、今もその賑わいは変わりません。
修学旅行の学生さんたちがおみやげ物を買う姿も、多く見られます。
その新京極が静かになったのが、この春。
インフルエンザの影響で、多くの学校様が修学旅行を延期されたためです。
その延期した学校様の多くが、今、この時期に京都を訪れております。
この暑い中をお越しいただけるのは、非常に喜ばしいことです。
ただ、インフルエンザはなおも猛威を振るっております。
この影響で再び延期せざるを得ない学校様が出てくるかもしれません。
生徒様の一生の思い出のためにも、沈静化されることを切に願っております。
ちなみに、引用した文に出てくる「さくら井屋」は、今も三条通と新京極通の角で営業しております。
ただし、三条通からの入口しかなく、新京極には抜けられませんが。
”あいらんど”