神奈川新聞 | 2023年12月10日(日) 11:00
相模原市が示した人権尊重のまちづくり条例案の骨子は、英知を集めた画期的な答申を台無しにしただけでなく、差別をなくす取り組みの足まで引っ張ろうとしている。国内外のヘイトスピーチ規制に精通する憲法学者、奈須祐治・西南学院大教授の指摘の数々は重大な警鐘となって響く。骨子の公表時、「私自身も勉強が足りていない」と不十分な案であることを認めた本村賢太郎市長だが、第一人者である奈須教授の知見に耳を傾け、一からつくり直すことができるだろうか。(構成・石橋 学)
─先進的と評価された答申だが、合憲性をどう見ていたか。
「合憲と考えてきた。規制する対象は川崎市の条例と同じ類型で、場所や手段も同じ。属性は広くなっているが、勧告、命令、公表と3段階のステップを踏み、刑事罰の判断は検察庁、裁判所が最終的に行う。川崎型の限定の仕方をすれば違憲にはならない」
─対象の属性は川崎市にはないアイヌや琉球人、障害者、性的マイノリティー、被差別部落出身者も含んでいる。
「属性をどこまで広げられるのかはさまざまな議論がある。英国は慎重で、カナダは広めに認めている。表現の自由への配慮からはできるだけ限定した方がいい。ただ、川崎型は極めて範囲が限定されている。そうである以上、対象が広がっただけで違憲と言うのは難しい。自治体の裁量はかなり広くなってきている。独自の判断である程度の規制は認められる」
─相模原市には大阪や川崎ほどの実態がない。だから表現の自由に配慮して罰則を設けるに至らなかった。これが市の説明だ。
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