先住民族関連ニュース

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「二十歳を祝う会」ウポポイで初開催へ 1月7日 白老町長「貴重な機会に」

2023-12-09 | アイヌ民族関連

会員限定記事

北海道新聞2023年12月8日 21:48(12月8日 21:50更新)

 【白老】町は8日の記者会見で、来年1月7日に行う「二十歳を祝う会」を町内の民族共生象徴空間(ウポポイ)で初めて開催すると明らかにした。

 町が昨年から、ウポポイを管理するアイヌ民族文化財団(札幌)や国土交通省などに働きかけて実現した。2003年4月2日から04年4月1日までに生まれた人が対象で、現時点で町内外在住の137人が参加する見込み。

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(斎藤雅史)

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/951007/


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平取の森づくり、パネルで紹介 札幌で14日まで展示

2023-12-09 | アイヌ民族関連

会員限定記事

北海道新聞2023年12月8日 18:38

平取町内での森づくりについて紹介するパネル展(町アイヌ文化振興公社提供)

 アイヌ語でコタンコロカムイ(集落の守り神)と呼ばれるシマフクロウが持続的に生息できる森づくりを進める平取町内の事業「21世紀・アイヌ文化伝承の森プロジェクト」のパネル展が14日まで、札幌市中央区宮の森3の7の北海道森林管理局庁舎1階ウッディホールで開かれている。

 事業は町と平取アイヌ協会、道森林管理局の3者が協力して実施。シマフクロウの餌となる魚の調査や魚道の設置に取り組む。パネル展は町から事業を受託している町の第三セクター町アイヌ文化振興公社が主催し、事業の内容をパネル7枚で紹介している。

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 パネル展は土日を除く午前10時~午後3時。問い合わせは同公社、電話01457・2・2152へ。(杉崎萌)

※「コタンコロカムイ」のロは小さい字

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/950832/


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追跡 台湾民族頭骨、なぜ英国に 19世紀の日本、研究収集拠点 エディンバラ大学返還式

2023-12-09 | 先住民族関連

毎日新聞 2023/12/9 東京朝刊 有料記事 2510文字

 台湾原住民族(先住民族)、パイワン族の19世紀のものとみられる4人の頭骨が、遠く離れた英国の大学で見つかり、台湾側に返還された。台湾の山深い地域に暮らす彼らの頭骨が、なぜ海を渡ったのか。その謎を解くカギは、日本、そしてアイヌ民族にあった。

 英スコットランドにあるエディンバラ大学。歴史ある大学で11月3日、遺骨の返還式が行われた。豚の骨、ガジュマルの葉、豚肉、米酒が用意され、台湾から参列した霊媒師が4人の霊と「交信」。その様子を出席者が固唾(かたず)をのんで見守った。4人全員が「家に帰りたい」と伝えたといい、それを聞いた台湾からの出席者はみな涙したという。遺骨は同5日、木箱に守られて台湾桃園空港に到着。海外から台湾に原住民族の遺骨が返還された初めての例だった。

 遺骨は、エディンバラ大解剖学博物館で保管されていた。吹き抜けの2階まで部屋の周囲を戸棚が囲んでいる。びっしりと1700人の頭骨が並ぶこの場所で、4人は迎えを待っていた。

 時は日本の明治初期にさかのぼる。

 1874年5月6日、日本軍の一団が台湾南端の海岸、現在の屏東県に到着した。その3年前、琉球船が遭難・座礁し、この屏東県の山中に住むパイワン族によって乗船者が殺害された事件があった。これを口実に行われたのが、近代日本初の海外派兵、台湾出兵だった。

 5月22日、偶発的に戦闘が起こり双方に犠牲が出た。いわゆる「石門の戦い」だ。この時代の日本側の報告書はこう書く。「敵の首12を陣営に持ち帰ったところ、漢人がそのなかに牡丹社集落の頭目アルクの首があると言う。敵の兵器や装束もはぎとって持って帰った」

 エディンバラ大で見つかった頭骨は、この時のものとみられている。それを示す2本の論文を、台湾・中央大学の胡川安・助理教授らが2019年に見つけたのだ。遺骨返還に関わった医師で作家の陳耀昌さんは、論文を基に次のように考察する。

 頭骨は、お雇い外国人として台湾出兵に従軍した米国人ジェームズ・ワッソン(1847~1923年)から、横浜で医師として活動した米国人スチュアート・エルドリッジ(1843~1901年)へ、さらにエディンバラ大出身の動物学者で解剖学者のジョン・アンダーソン(1833~1900年)へ、そしてエディンバラ大の学長であり解剖学者だったウィリアム・ターナー(1832~1916年)の手に渡った――。

 なにがこの4人を結んだのか。

 「アイヌ民族の遺骨問題と関係者が重なっていることに驚きました」。台湾の遺骨返還について、先住民の遺骨収集と返還に詳しい北海道大学アイヌ・先住民研究センター長の加藤博文教授(先住民考古学)は話す。

 加藤教授によると、当時のエディンバラ大は世界でも指折りの外科・解剖学分野の研究機関で、世界中の先住民の遺骨を収集していた。なかでもターナーは収集の中心人物だったという。世界各地の教え子を通じて遺骨を集め、同様に先住民族であるアイヌの人骨を贈られたという記録もある。

 19世紀後半、欧米列強は「科学的」視点から、植民地支配を正当化するために、国内や植民地で先住民をはじめとするさまざまな人骨を集めた。「先住民族がなぜ近代的な生活を送っていないのか、あるいは近代的生活に抵抗するのか。集団の優劣を説明するために、進化論的な視点から頭骨などを計測する研究が盛んでした」と加藤教授。アイヌの遺骨もその対象だった。さらに、遅れて加わった日本も追随した。

 ワッソンは明治新政府が創設した北海道開拓使から雇用され、エルドリッジも北海道開拓使の下、函館医学校で教授を務め、アイヌの矢毒に関する論文がある。アンダーソンはアイヌの民具を大規模に収集し、大英博物館などに寄贈した人物だった。

 頭骨は、台湾から東京に戻ったワッソンが米国に帰国する直前の1876年までに、横浜にいたエルドリッジに渡し、アンダーソンは民具収集のために来日した84年にエルドリッジから遺骨を受け取ったと、陳さんは考察する。

 当時、研究者たちは、研究者間で遺骨を交換するなど、さまざまな方法を駆使して収集していた。アジアのなかでいち早く近代化した日本は、こうした交換や収集の拠点の一つになっていたようだ。エルドリッジのいた横浜も、カギになる場所だった。海外船が横浜港に寄港した際、死亡し外国人墓地に埋葬されたペルー人がいた。ところが墓は掘り起こされ、遺骨は最終的に東京大学に寄贈されたという。

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【高橋咲子】

台湾原住民族パイワン族の遺骨が英大学に渡った経緯(作家・陳耀昌さんの考察)

1874年   日本軍が「石門の戦い」で殺害したパイワン族12人の頭骨を持ち帰る。従軍したワッソンに骨が渡る

 74~76年 ワッソンから横浜にいた医師エルドリッジに渡る

  84年   エルドリッジからエディンバラ大出身の学者アンダーソンに渡る

1900年ごろ アンダーソンからエディンバラ大(解剖学者ターナー)へ

https://mainichi.jp/articles/20231209/ddm/012/030/124000c


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<ゴールデンカムイ>イベントビジュアル「アシ(リ)パ組~川口撮影所~」公開 杉元がブルース・リーに 牛山は巨大ザメ!?

2023-12-09 | アイヌ民族関連

まんたんウェブ12/8(金) 18:27配信

「ゴールデンカムイ」のイベント「TVアニメ『ゴールデンカムイ』スペシャルイベント’23」のビジュアル(C)野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会

 「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で連載された野田サトルさんのマンガが原作のテレビアニメ「ゴールデンカムイ」のイベント「TVアニメ『#ゴールデンカムイ』SPイベント’23」の描き下ろしビジュアルが公開された。「アシ(リ)パ組~川口撮影所~」と題して、杉元佐一がブルース・リー、牛山辰馬が巨大ザメと、キャラクターが映画スターに扮(ふん)している。

【写真特集】「ゴールデンカムイ」ついに最終章! どうなる? 最新ビジュアル

 イベントは、12月24日に川口総合文化センター・リリア(埼玉県川口市)で開催される。声優の小林親弘さん、白石晴香さん、伊藤健太郎さん、中田譲治さん、津田健次郎さん、乃村健次さん、松岡禎丞さん、竹本英史さん、小西克幸さん、堀内賢雄さんが出演する。

 「ゴールデンカムイ」は、2014年に「週刊ヤングジャンプ」で連載をスタートし、2022年4月に約8年にわたる連載に幕を下ろした。かつて日露戦争で活躍した“不死身の杉元”が、北海道で死刑囚が隠した埋蔵金の手掛かりをつかみ、アイヌの少女らと共に冒険を繰り広げる姿を描く。

 テレビアニメ第1期が2018年4~6月、第2期が同年10~12月、第3期が2020年10~12月、第4期が今年4~6月に放送された。テレビアニメの最終章の制作が発表されている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/03858636a99e3d29ed795c914a284c83fcfbf8c7


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ジャニーズ性加害問題で自殺者 誹謗中傷はなぜ続く?

2023-12-09 | アイヌ民族関連

週刊金曜日2023年12月8日3:51PM

望月衣塑子・『東京新聞』記者|

恐れていたことが起きてしまった。旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)の創業者ジャニー喜多川氏による性加害問題で、被害を告白した元ジャニーズJr.の40代男性が10月、大阪府内の山中で亡くなっているのが見つかった。遺書があり、警察は自殺とみている。

 男性は「性加害問題当事者の会」のメンバー。遺族の弁護士によると、男性は5月に事務所に被害を訴えた。男性がJr.に在籍していたことを確認した事務所は「担当者が折り返す」と伝えてきたが、その後、連絡はなかった。

「嘘をつくな」「金目当てだろう」。代わりに届いたのは誹謗中傷だった。勇気を出して声をあげても補償の方針は示されない。半面、ネット上でバッシングを受け続けたことで、焦燥感や悩みは深まっていった。男性は誹謗中傷への対策も求めたが、事務所は会見で「誹謗中傷をやめて」と呼びかけた↖だけで、具体的な措置はとらなかった。

 そればかりか、亡くなる4日前のプレスリリースでは「被害者でない可能性が高い方々が、虚偽の話をしているケースが複数あるとの情報に接している」と表明していた。これでは「〝被害者〟をかたる嘘つきがいる」と言っているに等しく、男性への攻撃を加速させたのは間違いない。男性は亡くなる直前、ネットの中傷対策を手がけるNPO「ビリオンビー」にも相談していたという。事務所は責任をどうとるのか。

 他の被害者も中傷を受けている。元Jr.の中村一也さんは「お金目当て」「売名」という中傷について埼玉県警に被害を相談。「Kis-My-Ft2」元メンバーの飯田恭平さんも被害届を出して受理された。

 なぜ、被害者への攻撃は続くのか。「ビリオンビー」の森山史海理事長によると「書き込む方は『正義感』でやっている人も多い」という。被害者を「嘘つきの悪者」と思い込み、攻撃する自分こそ正しい――。そんな認知の歪みが、誹謗中傷を生み続けているのだ。

 ネット上の人間に限らない。報道によると、新会社の社長に就任する福田淳氏は、事務所社員を前に「加害者でもない皆さんを毎日痛めつけている空気から守りたい」と挨拶したという。自分たちを「被害者」と思っているとは。しかも、挨拶は男性が亡くなった後だという。即刻、退場願いたい。

 2020年の女子プロレスラーの自死が社会問題となり、総務省の有識者会議は11月、ネットでの誹謗中傷対策に関する報告書の骨子案を了承した。今後は中傷の削除手続きが早まるとの期待もある。一方で、削除は運営事業者の自主対応に委ねられているため、海外の事業者がどこまで被害者の保護に取り組むのかは不透明だ。

 そもそも認知がズレた人の発信が続けば、いくら削除しても中傷は次々と発生する。かつて「女性はいくらでも嘘をつく」と発言した杉田水脈衆院議員は、アイヌ民族や在日コリアンへの差別的な投稿でも人権侵犯を認定されたが、団体への謝罪は拒否、自身の言動を正当化した。いまや新たな誹謗中傷を引き起こしている。即刻、議員辞職するべきだ。

 そういえば。岸田文雄首相は過去最低となった内閣支持率について「何も悪いことをしていないのに」と首をかしげたとか。閣議決定乱発という「加害」を忘れたのか。こちらも即刻、退陣願いたい。

(『週刊金曜日』2023年12月8日号)

https://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/2023/12/08/seiji-120/


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古代・難波宮から「大大阪」まで 大阪の歩み リアル展示で追体験 大阪歴史博物館

2023-12-09 | アイヌ民族関連

産経新聞2023/12/8 10:30 北村 博子

「大阪歴史博物館」(大阪市中央区)は、かつて大阪に存在した難波宮を体感できるスポットだ。「天下の台所」と呼ばれた江戸時代や、東京の人口を超え「大大阪」と呼ばれた大正~昭和初期など、各時代の大阪を知る復元展示も見どころで、国内外からの来館者でにぎわう。学びたい人も観光気分を味わいたい人も満足させる工夫があふれている。

扉の先に古代

1階入り口からエレベーターへ乗り込み一気に10階へ。扉が開くとそこは奈良時代、難波宮の宮殿内部へと導かれた。まるでタイムマシンだ。

フロアには、宮殿内部を原寸大に復元した空間が広がる。朱塗りの円柱が等間隔に並び、人形の官人たちが整列。しばしたたずんでいると、同館の俵和馬学芸員が窓の外を指さした。

「あそこに見える史跡が天皇のおられる難波宮の大極殿で、ここはその復元場所。儀式の模様を再現しています」。ドラマチックな演出が心をつかむ。

窓から見えるのは、大阪城や難波宮跡など名所・旧跡を中心とする大阪東部の眺望。あべのハルカスなどとはまた一味違ういい眺めで、訪日外国人観光客(インバウンド)の来館が多いのもうなずける。

細部にも注目

「各階とも半分は復元、もう半分は実物展示で構成しています」。俵さんのガイドでまずは、10階の古代フロアから見学。7世紀の孝徳天皇による前期難波宮と、8世紀に聖武天皇が造った後期難波宮の違いや特徴を詳しく紹介している。

実は前期難波宮の建物は完成から34年後に火事で焼失。その事実を示すのが建物の柱穴に残る火災の痕跡だ。当時は柱を直に土に突き刺す「掘っ立て柱建物」のため、燃えた柱の炭跡などが土に残った。その実物を展示している。

同じ場所に後期難波宮が再建されたが、柱を石の上に立てる「礎石建」で屋根は瓦ぶきなどの違いがある。難波宮発掘の経緯を伝えるコーナーも興味深い。

9階は、天下の台所と呼ばれた江戸時代の庶民の活気ある暮らしぶりを伝えるフロア。どこからか大阪弁が聞こえてきた。文楽人形の「アナウンス」だ。

江戸時代のフロアは、船に乗って橋をくぐり、大阪見物するようなユニークな展示構成になっている

「文楽人形が水先案内です。安治川口から船に乗って大阪見物-といったイメージで見てもらえたら」

約3分の1で復元したという当時の橋をくぐり、壁面の立体展示では、青物市場や八軒家浜の場面解説が楽しめる。

20分の1で再現した船場の町並み模型も見どころ。当時の資料を基にしており「通路には御寮人さん(商家当主の妻)や北前船でやって来たアイヌ服の船頭もいますね。大阪特有の『べか車』(人力荷車)もある。細部まで見てもらえると楽しさ倍増ですよ」と俵さんはオススメする。

没入感味わう

いよいよ同館で1番人気の7階、大正末期~昭和初期の「大大阪」の時代へ。地下鉄の車両や地蔵さん、年末大売り出しの公設市場など、リアルな街角の風景が現れ、その奥にかつての道頓堀の姿もあった。

ネオン輝く広告塔や戎橋、角座、心斎橋筋商店街には買い物客も再現。撮影もOKだ。「われわれも〝心ブラ〟中ですね」とおどける俵さん。フォトジェニックな街角の復元展示は説明もいらないくらい、まちの魅力を伝える力があった。

俵さんは「博物館は学習施設というイメージが強いが、ここは模型が多くアミューズメントパークのような展示手法なので、身構えずにふらっと立ち寄ってほしい」。大阪の自慢したいスポットがまた一つ増えた。

敷地内は遺構の宝庫

大阪歴史博物館の敷地内も遺構の宝庫。前期難波宮があった飛鳥時代やそれ以前の倉庫跡、塀跡などが数多く見つかっており、学芸員らによる難波宮遺跡ガイドを実施している。記者も参加してみた。

1階の床は一部が強化ガラスになっていて、のぞくといくつも穴が開いている。「これは建物の柱穴跡です」。果たしてどんな建物が建っていたのだろうか。内藤直子学芸員が説明する。周辺には倉庫群もあるが、ここにあった建物は「柱の位置や太さから倉庫ではない。事務所のような機能をもった建物だったと推測されます」。

一方、同館1階と地下駐車場の間でほぼ出土した状態のまま保存されている地下の倉庫群の遺構も公開。柱の大きさや建物の並び方などが実感でき、想像をかきたてる。一見の価値あり。(北村博子)

https://www.sankei.com/article/20231208-CIW2BAPZNFKQNEFJEZ4F25ACTE/


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日本人とクマ:増え続ける被害、「隣の野生」アーバンベアとの共存は可能か

2023-12-09 | アイヌ民族関連

NIPPON.COM2023.12.08

板倉 君枝(ニッポンドットコム) 【Profile】

2023年後半、連日のようにクマによる人的被害が報じられた。餌となるドングリの凶作が主な原因だが、人の生活圏への侵入の背景には、地域の高齢化・過疎化など、さまざまな要因が絡み合っている。駆除には抗議の声も上がるが、「隣の野生」との共存は可能なのか。30年以上ヒグマの研究に携わり、NGO「日本クマネットワーク」代表を務める佐藤喜和氏に聞いた。

佐藤 喜和 SATŌ Yoshikazu

酪農学園大学(北海道江別市)教授。1971年東京生まれ。北海道大学の学生時代からヒグマの生態・軋轢(あつれき)管理に関する研究に取り組む。人とクマの共存を目指す「日本クマネットワーク」代表として、啓発活動や四国のクマの保全活動などにも携わる。著書に『アーバン・ベア:となりのヒグマと向き合う』(東京大学出版会、2021年)など。

木の実の凶作がシンクロ

世界には8種類のクマが存在し、日本では、北海道にヒグマ、本州と四国にはツキノワグマが生息する。ヒグマは雄の体長が約2メートルの大型、ツキノワグマは体長約1.2メートルで比較的小型だ。ツキノワグマは九州では絶滅、四国では絶滅寸前だが、全国的なクマの生息数は明らかに増加しているという。

「長期的に、野生のクマはじわじわと人の生活圏に接近してきました」と佐藤氏は言う。「2000年以降は、市街地への出没が繰り返し起きています。ドングリなど秋の木の実は豊凶のサイクルがあり、数年に一度、一斉に凶作になることがあります。その際、代替の餌を求めて、クマは生活圏に侵入します。その数が、今年はかつてないほど多かった」

環境省によると、2023年4月から11月末時点の速報値で全国のクマによる人的被害は212人、うち死者が6人。06年に記録を取り始めて以来、過去最悪となった。

「これまで、北海道と本州では、クマの大量出没のタイミングがずれていたのに、今年は重なったことも異例です。いずれにせよ、抜本的な対策を講じなければ、数年後にまた、同様の広範なクマ被害が繰り返されます」

ヒグマとの闘いの歴史

都市に隣接する森林で暮らし、一時的に人の生活圏に入り込む「アーバンベア」は、日本に限ったことではない。

「例えば、北米の場合、ツキノワグマに近い小型のアメリカクロクマが、街中でごみを食べたり、民家のプールで泳いだりするケースが発生しています。ただ、ヒグマの仲間のグリズリーは、かつて駆除されて数がかなり減り、カナダ以南の生息地はイエローストーン国立公園などの保護区が中心で、都市周辺にはいません。ヨーロッパではもっと減少しています。札幌市のように、人口200万の都市周辺にヒグマがいる国は日本だけでしょう」

北海道では、明治に始まる開拓期以降、人とヒグマの闘いの歴史があった。1915年12月北海道北部で起きた「三毛別(さんけべつ)ヒグマ事件」では、3日の間にヒグマが農家2軒に侵入、妊婦や子どもを含む10人の死傷者を出して、大きな衝撃を与えた。吉村昭の『羆嵐』をはじめ、小説やドラマの題材にもなっている。ヒグマは恐怖の対象であり、駆除すべき敵だった。

戦後の人口増加や木材需要の高まりから開発、森林伐採が進み、1966年には、冬眠から目覚めたヒグマをわなや銃で駆除する「春グマ駆除制度」が始まった。

駆除から保護へ

1970~80年代には、ヒグマをはじめ、多くの野生動物が生息数を減らしていた。

90年代前後から、世界で自然環境との共存を目指す動きが広がり、日本も生物多様性に関する条約を批准し、野生動物を保護する方針に転換する。

「ヒグマは害獣として無制限に駆除されて数を減らし、分布も縮小していましたが、1990年、春グマ駆除制度を廃止、根絶から保護へ政策転換しました。その成果として、数がじわじわと増えていき、90年代後半以降、農地への出没と作物への食害が増加しました」

エゾシカの増加も、ヒグマに大きな影響を与えている。

「ヒグマは川で捕ったサケを食べるというイメージがありますが、こうした暮らしをするクマは、知床半島など、ごく一部にしかいません。遡上(そじょう)するサケマス類自体が減っています。代わりに、多くのクマがエゾシカを食べるようになりました」

シカはヒグマの好物でもある草本類を食べ尽くす。一方、クマは農地周辺で駆除されたシカの死体や生まれたばかりの子ジカを食べるようになったのだ。

「ツキノワグマもシカは食べていると思います。凶作のときに、今まで以上にイノシシがドングリを先に食べてしまっている可能性もあるでしょう」

2000年代以降の市街地周辺への出没は、国の生物多様性戦略も影響している。都市の主要道路や河川沿いに緑地帯を整備し、森と市街地がつながる緑のネットワーク化が進み、野生動物が街に出没するようになった。札幌市では、2010年代に、住宅街内部までヒグマが侵入した事例が発生した。

「山奥のクマは人を見ると逃げますが、人里の近くに生まれ育ったクマは、生まれたときから車の音を聞き、人の気配に慣れています。ハンターに追われた経験もないので、人を恐れないのです」

高齢化・過疎化が背景に

「北海道では、農村地域の人口減少や高齢化により、この半世紀で農家数は6分の1になりました。全体の耕地面積はほぼ変わらないので、農家一戸あたりの耕地面積が6倍になっています。その結果、農業の大規模機械化が進みました」(佐藤氏)

無人化が進み、クマにとって作物にアクセスしやすい状況だ。酪農地帯では飼料の自給率を高めるために、国が補助金を出し、牧草地に飼料用デントコーンの作付面積が急増している。畑作地帯にあるビートやスイートコーンとともに、ヒグマにとって「このうえないごちそう」になっている。

「冬眠を控えた8月下旬から冬眠に入る12月までの間は、クマが最も食欲旺盛な時期です。春から主食としてきた草本類が、秋の主食となるドングリなどの果実類に代わる前の端境期(8~9月)には、山でクマが食べられる餌が減ります。一方で、この時期に旬を迎えるトウモロコシが増えているわけです」

「クマ問題は、少子高齢化問題と密接に結び付いている」と佐藤氏は指摘する。「農山村の人が減り、野生動物と人との境界の最前線で、人の影響力は弱まっています」

「人間の勢いが強く、野生動物を打ち負かした時代の国の仕組みが変わっていない。『スマートシティ』『コンパクトシティ』『スマート農業』など、人口減でも今の豊かさを維持するための仕組みは考えても、力を取り戻した野生動物には目を向けず、対応が後手に回ったのです」

猟友会任せではなく、専門家の育成を

今、佐藤氏が一番懸念していることは何か。

「クマとの共存ができないという声が大きくなり、行き当たりばったりのかじ取りがされることです」

「10年ほど前から分布も広がってきたので、このまま個体数が増え続ける状況を放置していいのか、という議論はありました。研究者たちは、クマ、シカ、イノシシなど野生動物を管理する専門人材を地方の現場に配置するべきだと主張してきましたが、ほぼ実現していません」

佐藤氏によれば、鳥獣害に強い地域づくりを進めている先駆的な自治体もある。例えば、島根県では、被害対策と保護管理に関わる鳥獣行政を一体化して林業部門が担い、関連機関がモニタリングなど調査研究も行う。市町でも鳥獣専門指導員の配置が進み、地域住民と行政、市町と県の間をつなぐ役割を果たしている。

「しかし、多くの場合、県は市町村任せ、市町村は猟友会任せです。猟友会はもともと趣味で狩猟をする人たちの団体で、保護管理に関する教育、経験があるわけではありません。地域に対する責任感で、体を張ってクマ問題に対処していますが、高齢化も進み、なり手不足も生じています」

「行政がハンターを育成・雇用する仕組みも必要です。広範なクマ被害は、今後も必ず起きる。専門家人材の育成・配置を織り込んだ対策を予算にしっかり組み込んでいかなければ、同じことを繰り返すだけです」

危機管理の可視化

北海道東部の標茶(しべちゃ)町や厚岸(あっけし)町などで、2019年からの4年間、66頭の家畜の牛を襲ったヒグマは「OSO(オソ)18」というコードネームで呼ばれ、恐れられた。しかし、今年7月末にハンターが駆除したクマが「OSO18」と判明すると、なぜ殺したのかと批判も相次いだという。秋田県などでも、クマの駆除に保護派からの批判が寄せられていると報じられた。

北海道で家畜の牛を襲い、駆除されたヒグマ「OSO18」[標茶町提供](時事)

「クマ対策用電気柵を設置し、ごみの管理をきちんとしたうえで、それでも人の生活圏に出没するクマはやむを得ず駆除したと、どんな立場の人でも理解できるような危機管理システムが望ましい」と佐藤氏は言う。

「地域に配置された専門家が、日常的にモニタリングをして、データを取る。そして、具体的な対策については、直接被害を受ける人、受けない人を含めて地域の人たちの意見調整ができれば理想です。悪いことをするクマは、特定の個体に限られることが多い。どのクマがどんな “悪さ”をして駆除され、その結果、問題はどのように解決したのかを可視化していく必要があります」

アイヌのヒグマ観に学ぶ

先住民族のアイヌは、ヒグマを単なる敵でも獲物でもない、相反する2つの「神」の姿で捉えていた。肉や毛皮をもたらしてくれるヒグマを「キムンカムイ(山の神)」として、狩猟の際には感謝の儀式でその魂を神の国に送り、再来を願った。

だが、人や家畜に危害を与えるヒグマは「ウエンカムイ(悪い神)」として、毅然として立ち向かい、確実に仕留め、その肉は決して口にしなかった。

「『アーバンベア』問題は、このウエンカムイを駆除することで、離れた場所でもその後の出没が収まることがよくあります。増えすぎた個体数を無作為に減らすのではなく、特定のウエンカムイを速やかに駆除することで、地域の安全が守られ、クマの保全にもつながる。そのことを忘れるべきではありません」

佐藤氏が初めて野生のヒグマを見たのは、1991年、まだ目撃情報が少なかった頃、北海道大学のヒグマ研究グループの一員として観察調査に参加した時だった。川沿いの草原で草を食む親子のヒグマ。夕日を浴び、金色に輝く背中の毛が風になびく姿が美しかった。その時の感動をまだ覚えている。

「私たちの子ども、孫の世代まで、森の中でクマが元気に暮らしているという状況を維持したい。地域個体群を守ることが大事です。これだけの数の野生のクマが生息している先進国は、日本だけです。豊かな自然環境を享受しながら、みんながもっとクマのことを知り、野生との新しい付き合い方を身に付けてほしいと願っています」

https://www.nippon.com/ja/in-depth/d00961/


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国際経営学部の専門演習I(担当教員:ドゥマヤス アリャン)において、国連大学のコンサルタントを務めるGiselle "G" Miole氏にご講演いただきました

2023-12-09 | 先住民族関連

中央大学2023年12月08日

2023年11月14日、国際経営学部の専門演習I(担当教員:ドゥマヤス アリャン)において、早稲田大学博士課程に在籍しながら国連大学のコンサルタントを務めるGiselle "G" Miole氏にご講演いただきました。Miole氏は教育人類学者であり、フィリピンの先住民族を含む教育の包摂性と人権に焦点を当てた研究を行われています。

Miole氏の研究では、フィリピンの先住民族であるルマド族の事例を取り上げており、彼らがイスラム教化やキリスト教化が行われておらず、土地の不法占拠や武装勢力による攻撃など直面している教育の問題についてご説明いただきました。

ご講演の際に、Miole氏は、自らの研究における立場や関与についても言及し、人々を対象とする研究において自身の位置を理解することと、教育の現場からフィールドへ足を運ぶことの重要性を強調しておられました。

講義の要点として、人類学は過去と現在の人間や文化を理解する学問であり、近年では先住民族の環境や社会での役割に対する関心が高まっています。一方で、未だに探求されていない領域が多く存在するという点が挙げられていました。そして、「pracademic(実学者)」として、学問を進めるためには教室の枠を超えて現場に出ることが重要であり、人々を対象とする研究においては自身の立場を理解することが不可欠であると述べられていました。

講義後、交流機会を開き、質疑応答などの時間も設けていただき、とても有意義な時間を過ごすことができました。

今後も国際経営学部では、教室での学びを超えて、実務の最前線で活躍されている専門家の講義を設け、グローバルリーダーの育成に努めてまいります。

https://www.chuo-u.ac.jp/academics/faculties/globalmanagement/news/2023/12/69110/


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北極域研究船 国際ワークショップ開催報告

2023-12-09 | 先住民族関連

北極域研究船推進部2023年12月8日

2023年11月17日~18日に、東京のイイノカンファレンスセンターにて、北極域に関する政策、科学などのニーズやシーズを共有し、議論する機会を提供するとともに、日本の新しい北極域研究船を国際的な研究プラットフォームとしてどのように活用できるかを議論するための国際学術ワークショップ「1st International Workshop on Arctic Ocean Observation -Future Collaboration by Research Vessels and Icebreakers-」が開催されました。
 (ご参考)北極域研究船 国際ワークショップウェブサイト(英語のみ)
 開催期間の2日間で、12カ国(アメリカ、イギリス、インド、カナダ、韓国、中国、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、フランス、ポルトガル、日本)から合計118名の方にご参加頂きました。そのうち、海外の機関からは42名の方にご参加頂きました。 
1日目はブレイクアウトセッションとして、以下の分野ごとに分かれ、チェアパーソンを中心に活発な議論が行われました。

 (ブレイクアウトセッションテーマ)
・Science: Addressing Knowledge Gaps and Future Research Collaboration
(科学: 知識ギャップへの対処と今後の共同研究)
・Aspirations for Arctic Ocean Observation from Early Career Scientists
(若手研究者の北極海観測への抱負)
・International Collaboration, Policy, Indigenous Peoples
(国際協力、政策、先住民族)
・Technology & Engineering: Data-driven approach for sustainability
(テクノロジーとエンジニアリング 持続可能性のためのデータ主導アプローチ)
・Sharing Experiences and Developing Future Collaboration in Polar Ship Operations
(極域船運用における経験の共有と今後の協力関係の発展)
※1日目の写真は本文の下に掲載

2日目には、以下の写真の通り各セッションのチェアパーソンが1日目に行われた議論の総括を発表しました。
・Science: Addressing Knowledge Gaps and Future Research Collaboration

地球環境部門北極環境変動総合研究センター 菊地 隆センター長(日本, JAMSTEC)
Dr. Jackie Grebmeier (米国, University of Maryland)

・Aspirations for Arctic Ocean Observation from Early Career Scientists

Dr. Lisa Winberg Von Friesen (デンマーク, University of Copenhagen)

・International Collaboration, Policy, Indigenous Peoples

Dr. Hajo Eicken (米国, IARC/University of Alaska Fairbanks)

・Technology & Engineering: Data-driven approach for sustainability

北極域研究船推進部 松沢 孝俊調査役(日本, JAMSTEC/NMRI) 

・Sharing Experiences and Developing Future Collaboration in Polar Ship Operations

Capt. David Duke Snider (カナダ, Martech Polar Consulting Ltd)

各セッションからの報告を受けて、上記発表者にDr. Michael Karcher (ドイツ, AWI)とMs. Hannah-Marie Garcia (米国, Indigenous Sentinels Network)を加えて、地球環境部門北極環境変動総合研究センター 末吉 哲雄特任主任研究員(日本, JAMSTEC)の司会の下でパネルディスカッションが行われました。パネルディスカッションでは、まずサイエンスの重要性とそれを踏まえた上での観測船としての北極海域での船舶の運航や工学・技術開発との関わりについて議論され、次世代研究者の育成についても活発に意見が交換されました。また北極海観測における国際連携の推進、特に先住民族との関わりについて、航海計画の策定を含めてどのように考えるべきかまで話題は広がり、多くのコメント・議論がなされました。

その後、菊地 隆センター長によりワークショップで撮影された写真の紹介を交えた本ワークショップのサマリーの発表があり、JAMSTECの大和 裕幸 理事長の閉会挨拶により、ワークショップは無事閉会となりました。

本ワークショップは、2026年に完成予定の北極域研究船の活用について話し合うというテーマの下、サイエンスの分野だけではなく、政策、先住民族、船舶運用やテクノロジーの分野の関係者も一堂に会し多様な意見が交わされる機会となり、国際的に見てもユニークな、実り多いワークショップとなりました。
これを第一歩とし、北極域研究船を活用した研究分野等での国際協力や人材育成などについて、本ワークショップで示された提案を踏まえて国内外での連携を一層促進するべく、今後もJAMSTECとしても取り組んでまいります。
本ワークショップは2年後の2025年に、第2回の開催が予定されております。また、今回の詳細なレポートは後日、本ウェブサイトにて公開予定です。

また第2回会合で本ワークショップの参加者の皆さまにお会いできることを、また多くの新しい参加者をお迎えできることを楽しみにしています。 

https://www.jamstec.go.jp/parv/j/blog/20231208_jp.html


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若者ら「化石燃料、ノー」 COP開催地で、新宿駅前で

2023-12-09 | 先住民族関連

毎日新聞 2023/12/9 東京朝刊 有料記事 577文字

脱化石燃料を訴える若者たち=アラブ首長国連邦・ドバイで2023年12月8日、岡田英撮影

 週末の8日、アラブ首長国連邦(UAE)・ドバイで開かれている国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)に合わせ、各地の若者らが化石燃料の廃止などを訴えるデモをした。

 ドバイでは、気候変動の危機に直面する途上国を中心に約100人が集まった。昨年、大規模な洪水に遭ったパキスタン出身のジャマール・バルーチさんは「私の住む地域では先住民族が化石燃料採掘に抵抗してきたが、産業界や当局によって抑圧されてきた。化石燃料からの脱却に向けて一丸となって立ち上がろう」と呼びかけた。

 東京・JR新宿駅前では、若者グループ「フライデーズ・フォー・フューチャー(未来のための金曜日)ジャパン」がスタンディングデモをした。化石燃料の廃止時期を表明していない日本政府の対応について、「やっているふりはもうやめて」と訴えた。

 グループは、アンモニアを石炭に混ぜて燃料にする「混焼」を日本が進めていることに「温室効果ガスの早急な削減に資さない」と批判。・・・・・

 ・・・・・

【山口智、ドバイ岡田英】

https://mainichi.jp/articles/20231209/ddm/012/040/084000c


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第29回党大会決議案の用語・事項解説(上)

2023-12-09 | 先住民族関連

赤旗2023年12月8日(金)

第1章

ジェノサイド条約(1948年)

 1948年、国連総会で採択された「集団殺害(ジェノサイド)罪の防止及び処罰に関する条約」。1946年の国連総会が世界大戦中に起きた大量虐殺が再び起きることがないよう宣言したことを受け、成立しました。

 第1条で「締約国は、集団殺害が、平時に行なわれるか戦時に行なわれるかを問わず、国際法上の犯罪であることを確認し、これを防止し及び処罰することを約束する」としています。第2条は、「集団殺害とは、国民的、人種的、民族的又は宗教的な集団の全部又は一部を破壊する意図をもって行なわれる次の行為」と定義し、▽集団の構成員を殺すこと▽集団の構成員の肉体又は精神に重大な危害を加えること▽集団の全部又は一部の肉体的破壊をもたらすために意図された生活条件を集団に故意に課すこと▽集団内における出生を妨げることを意図する措置を課すること▽集団の児童を他の集団に強制的に移すこと――をあげています。

 152カ国が加入・批准し、米国やイスラエルも締約国です。日本は、国内法未整備を理由に未加入です。

「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)

 日本政府がインド太平洋地域で推進する政策。岸田首相は2023年3月のインドでの演説で、FOIPについて、この地域を「力や威圧とは無縁で、自由と、法の支配等を重んじる場」にするもので、「包摂性」や「開放性」も尊重するとのべました。一方で、日本政府は、中国の対外的な姿勢や軍事動向などについて、「これまでにない最大の戦略的な挑戦であり、我が国の総合的な国力と同盟国・同志国等との連携により対応すべきもの」(2022年12月の「国家安全保障戦略」)と、敵視・排除しています。

 FOIPは、特定の国を排除せず「対抗でなく対話と協力の地域」にするというASEAN(東南アジア諸国連合)の「インド太平洋構想」(AOIP)とは大きく異なります。

セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利)

 子どもを産むか、いつ何人産むかなどを自分自身で決定する権利。1994年にカイロで開かれた国際人口開発会議で承認され、95年の北京女性会議の行動綱領などに盛り込まれました。

 この権利を守る最後のとりでである人工妊娠中絶の権利は、世界で保守派から激しい攻撃にあっています。日本では、(1)教育(人権・ジェンダー教育としての包括的性教育が普及していない)(2)避妊(緊急避妊薬や経口避妊薬の普及が不十分)(3)中絶(掻爬=そうは=法という手術が主流で、経口中絶薬も価格が高い)(4)法律(刑法堕胎罪や母体保護法の配偶者同意要件など女性の自己決定権を認めない)――の遅れがあり、これらをただす議論と実践が急がれます。

ダーバン宣言

 2001年、南アフリカのダーバンで開催された「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連する不寛容に反対する世界会議」で採択された「宣言」。会議には、旧植民地国とその宗主国を含めて170カ国、950のNGOが参加しました。「宣言」は、奴隷制度と奴隷取引を「人道に対する罪」と断罪し、植民地支配は「どこであれ、いつであれ」、過去にさかのぼって非難されるべきとしています。

 「13 奴隷制度と奴隷取引は、その耐え難い野蛮のゆえにだけではなく、その大きさ、組織された性質、とりわけ被害者の本質の否定ゆえに、人類史のすさまじい悲劇であった。奴隷制と奴隷取引は人道に対する罪であり、とりわけ大西洋越え奴隷取引はつねに人道に対する罪であったし、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の主要な源泉である。アフリカ人とアフリカ系人民、アジア人とアジア系人民、および先住民族は、これらの行為の被害者であったし、いまなおその帰結の被害者であり続けている」

 「14 植民地主義が人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容をもたらし、アフリカ人とアフリカ系人民、アジア人とアジア系人民、および先住民族は植民地主義の被害者であったし、いまなおその帰結の被害者であり続けていることを認める。植民地主義によって苦痛がもたらされ、植民地主義が起きたところはどこであれ、いつであれ、非難され、その再発は防止されねばならないことを確認する」

グローバルサウス

 明確な定義はありませんが、新興国・途上国を総体としてとらえる言葉として近年使われています。地球上(グローバル)では北(ノース)に位置する先進国・大国に対し、新興国・途上国の多くが南(サウス)に位置することから、「グローバルサウス」と呼ばれます。これらは、政治的・経済的には多様です。同時に、主権国家として独立した後も、先進諸国による搾取、収奪に苦しんでいる共通点があります。富裕国に有利で不平等な国際秩序を批判し、債務問題や気候危機対策での先進国からの支援など、共通の利益を追求するために国際制度の改革を求め、新たな国家グループをつくる動きもあります。先進国の歴史的責任を問い、大国が押し付ける干渉や支配にあらがい、気候正義や核軍縮などを促進する主張や運動も見られます。

ウィーン宣言

 1993年6月、171カ国が参加した世界人権会議で採択された「宣言」。1948年の「世界人権宣言」以後の「前進を検討・評価し、障壁やその克服方法を確認する」ことを目的に開催されました。

 「宣言」では、「すべての人権は普遍的であり、不可分かつ相互依存的であって、相互に関連している。国際社会は、公正かつ平等な方法で、同じ基礎に基づき、同一の強調をもって、人権を全地球的に扱わなければならない。国家的及び地域的独自性の意義、並びに多様な歴史的、文化的及び宗教的背景を考慮にいれなければならないが、すべての人権及び基本的自由を助長し保護することは、政治的、経済的及び文化的な体制のいかんを問わず、国家の義務である」と述べ、国ごとの独自性を尊重すると同時に、人権と自由は普遍的で体制のいかんにかかわらず守らなければならない国際問題だとしています。

 中国もこの宣言に署名しています。

日本共産党と中国共産党との関係正常化についての合意(1998年)

一、略

二、会談において双方は、両党関係の歴史を回顧し、日中友好の大局から出発し、過去を終わらせ未来を切り開く精神にしたがい、歴史の事実にもとづく誠実な態度をもって、両党関係正常化の問題について真剣に意見を交換し、共通の認識に達した。

三、中国側は、六〇年代の国際環境と中国の「文化大革命」などの影響を受け、両党関係において、党間関係の四原則、とくに内部問題相互不干渉の原則にあいいれないやり方をとったことについて真剣な総括と是正をおこなった。日本側は中国側の誠意ある態度を肯定的に評価した。

四、双方は今回の会談により、両党間に存在した歴史問題が基本的に解決されたことを確認し、日本共産党と中国共産党との関係の正常化を実現することに合意した。双方は、日本側が主張する自主独立、対等平等、内部問題の相互不干渉および中国側が主張する独立自主、完全平等、相互尊重、内部問題相互不干渉の基礎のうえに、両党間の友好交流を展開する。双方は、両党関係の発展が、日中両国国民の相互理解と友好の増進および日中両国の善隣友好関係の長期の、安定した、健全な発展の促進に積極的に貢献すると考える。

「中国共産党との関係正常化(一九九八年)」(『日本共産党の百年』から)

 一九九八年、日本共産党と中国共産党との関係が正常化されました。この年の一月、訪日した中国共産党の中央対外連絡部の関係者と不破委員長との話し合いがおこなわれ、六月には、北京での両党代表団の会談によって、関係正常化の合意が交わされました。

 発表された合意文書には、中国側が「文化大革命」以後、内部問題相互不干渉の原則と相いれないやり方をとったことについて「真剣な総括と是正」をおこなったことで、両党間に存在した歴史問題が基本的に解決したことを明記しました。

 中国が対外的な干渉問題での反省を明らかにした例は、ほかにありません。これは覇権主義的な干渉を許さない、日本共産党の自主独立のたたかいの成果でした。

 九八年七月には、中国共産党・江沢民総書記(国家主席)と不破委員長との首脳会談が北京でおこなわれました。会談で、不破委員長は、二十一世紀に日中関係を律すべき原則として、(1)日本は過去の侵略戦争についてきびしく反省する、(2)日本は国際関係のなかで「一つの中国」の立場を堅持する、(3)日本と中国は互いに侵さず、平和共存の関係を守りぬく、(4)日本と中国はどんな問題も平和的な話し合いによって解決する、(5)日本と中国はアジアと世界の平和のために協力しあう、の五項目を提唱し、これを中国側も肯定的に評価しました。

 この会談に先立つ胡錦濤政治局常務委員との会談で、不破委員長は、中国の政治制度の将来という問題に言及し、「将来的には、どのような体制であれ、社会にほんとうに根をおろしたといえるためには、言論による体制批判にたいしては、これを禁止することなく、言論で対応するという政治制度への発展を展望することが、重要だと考えます」と提起しました。これは道理も節度もある提起であり、その後の中国での人権問題の深刻化に照らしても、重要な意義をもつものとなりました。

 (つづく)

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik23/2023-12-08/2023120806_01_0.html


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世界の先住民、連帯誓う アイヌ団体と権利回復へ

2023-12-09 | アイヌ民族関連

東京新聞2023年12月9日 06時46分 (共同通信)

 今年5月に開催したシンポジウムに集まった世界各地の先住民ら=北海道浦幌町(ラポロアイヌネイション提供)

 北海道浦幌町のアイヌ民族の団体「ラポロアイヌネイション」と、米国や台湾など5カ国・地域の先住民らが9日までに、先住民には「先住権」があり、各地で権利を取り戻せるよう連帯して闘うとする「2023ラポロ宣言」を取りまとめた。今後、各地の情報を共有しながら権利回復に取り組むという。

 北海道大アイヌ・先住民研究センター長の加藤博文教授は「先住民の団体が主体となり宣言を出すのは非常に珍しく、海外からも注目を集めている。先住権を巡る共通課題を明文化し、議論を続ける方針が示されたことは意義深い」と話した。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/295017


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バイデン氏、ロス五輪ラクロスへ先住部族チームの単独参加を支持

2023-12-09 | 先住民族関連

毎日新聞 2023/12/8 15:46(最終更新 12/8 15:46) 721文字

先住民サミットで演説するバイデン米大統領=ワシントンで2023年12月6日、ロイター

 バイデン米大統領は6日、首都ワシントンで開かれた先住民サミットで演説し、2028年のロサンゼルス・オリンピックのラクロス競技に、先住部族連合「ホーデノショーニー(イロコイ連邦)」が単独で参加するのを支持すると表明した。ラクロスは北米の先住民の競技が起源とされ、バイデン氏は「彼らの祖先がゲームを考案し、腕を磨いてきたのだ」と強調した。単独参加には国際オリンピック委員会(IOC)の承認が必要で、バイデン政権は交渉を後押しする方針だ。

 バイデン氏は「ラクロスは1000年近く前に考案された。部族が一堂に会し、平和や親善、癒やしを促進する力になってきた」と指摘。現在の米国とカナダをまたぐ地域で生活した六つの部族で構成するホーデノショーニーの五輪参加について「彼らの状況は特別であり、例外として五輪へのチーム参加が認められるべきだ」と述べた。

 国際競技団体「ワールドラクロス」によると、ラクロスは12世紀ごろから続く北米の先住民の競技が起源とされる。当時は儀式や戦闘訓練の意味合いもあったという。その後、欧州からの入植者が競技スポーツとして発展させた。ホーデノショーニーは独自にチームを編成し、国際大会にも参加。最新のランキングは、男子が米国とカナダに次ぐ3位、女子は8位という強豪だ。

 ラクロスは今年10月のIOC総会で、28年ロス大会で120年ぶりに五輪の公式競技として復活することが決まった。ただ、米メディアによると、IOCはホーデノショーニーの参加に関して、米国とカナダの代表チームに含める方策を検討すべきだとの立場を示している。五輪参加には、原則としてIOCに公認された各国・地域の五輪委員会による登録が必要だ。【ワシントン秋山信一】

https://mainichi.jp/articles/20231208/k00/00m/030/172000c


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アイヌ文化を発信 地下歩行空間で工芸品の展示【平取】

2023-12-09 | アイヌ民族関連

日高報知新聞2023.12.08

会場を訪れアイヌ伝統工芸に見入る客たち

【平取】札幌駅前通地下歩行空間「北3交差点広場(西)」で1、2日の2日間、平取町二風谷の「アイヌ工芸〜伝統の継承と新たなカタチ〜」が開かれた。アイヌ文化を新しいカタチで表現した商品開発に取り組み「二風谷アイヌクラフトプロジェクト」に今年度も新たなアイテムが加わった。同事業はアイヌ政策推進交付金事業の一環で実施。

 アイヌ伝統工芸家の貝澤守さんと貝澤美雪さん・関根真紀さん、若手工芸家の川奈野利也さん、西山涼さん、平村太幹さんら関係者の9人が参加した。1日は400人、2日は600人が来場した。

 事業は〝暮らしにとけ込むアイヌデザイン〟を発信する「二風谷アイヌクラフト」プロジェクトが、昨年度に引き続き創業107年の鋳物メーカー「能作」とのコラボレーションで生まれた錫製のテーブルウェアシリーズ第2弾を発表。

 同プロジェクトは、脈々と受け継がれてきた伝統文化や工芸技術を守りながらも、日常づかいできる商品開発として二風谷の伝統工芸を未来へつなぐことを目的に、2020年10月に始まった。世界的デザイナー・コシノジュンコさんを総合デザインディレクターに、二風谷の工芸家とデザイナー、メーカーとのマッチングで、現代の暮らしにとけ込む新たなアイヌ工芸を発信している。

 今回は、コラボ商品の披露のほか、伝統的工芸品の「二風谷イタ」を貝澤守さんが、「二風谷アットゥシ」を貝澤美雪さんが実演。また、関根真紀さんが購入した商品に「アイヌ文様」をドローイング(線画)するライブパフォーマンス、若手3人の工芸家による「木彫りのワークショップ」が行われた。

 来場者は「表面的なアイヌ工芸しかわからなかったが、現代にマッチした日常使いの作品に出会えて新鮮でうれしい」「実際に体験してみると難しく、価値が良くわかった」「ただ見るよりも説明してくれると良くわかった」などそれぞれ話した。

https://hokkaido-nl.jp/article/31961


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